studio Odyssey




明日もまた、エッセイ?

『そこにあること』(2000/11/3)

 今日、久しぶりに写真集を2冊買った。

 一冊は「TOKYO NOBADY」

 これは結構有名な奴なので、みなさんご存じかもしれない。「誰もいない東京」って奴だ。東京の街の風景が写っているのだけれど、その風景の中に人が誰もいない。あの大都市東京から、すべての人がいなくなった、そんなふうに感じる写真集だ。これはまぁ、結構面白い。

 もう一冊はおもしろいと思う人は面白いだろうけども、そうは思わない人は、激面白くない写真集「OUT OF PHOTOGRAPHERS」。通称、「アウフォト」

 このタイトルを聞いて、「ああ、あれね」という人は少なかろう。
 どんな写真集かというと(ちなみに知っている方のために。これ、写真集出てるんですよ。月刊誌だけでなくて)、要はあれです。投稿写真集なんです。
 しかも、なんてことはない、十代後半から二十代にかけての人の、日常をとらえたスナップの写真集。そりゃもちろん、写真家が撮ったわけではないのでピントは来てないわ構図はなってないわ、写真としてはだめなものばっか。

 だけども、これがものすごく面白いのです。何が面白いかって、そこに、アットー的なリアリティがあるから。

 アウフォトの編集者の方の言葉を借りて言うなら、「それは写っているものが重要で、上手い下手ではないんです。それがオリジナリティであって、記録のひとつ。そこに、良質なドキュメントがあるように思えます。そして時代をリアルに写し、何かを発見できるように思えます」

 実際に、非常にこの写真たちはリアルです。だって、なんてことないもの。日常のスナップだもの。自分が友達と遊びに行った時の写真、自分と友達が学校で遊んでいるだけの写真。そんなのばっか。ピントはあってないし、構図はダメだし、色味もよくないし、粒子もぼろぼろ。
 だけど、どんな写真集のどんな写真よりもリアル。等身大で、笑ってしまうくらいに強烈。

 それだけで、どんな写真よりもすごいんです。
 少なくとも、僕はそう思うのですね。んでも、たぶん、嫌いな人の方が多いと思う。これは作られた芸術ではなくて、もしかすれば、お金を払ってまで手に入れるものではないかもしれない。

 だけど、僕はこういうリアルなものが好きなんです。
 っていうか、僕って、リアル好きですからね。自分で笑ってしまうけど。
 気になった方は、大型(かなりの)書店で「アウフォト」という雑誌、もしくは、「アウ」という雑誌をさがしてみて下さい。それです。そして僕と同じに感じられるかしら?
 それはもちろん、個人の自由ですけどね。感じること、すらも。

 写真は、そこにある、あった、事実。
 映し出されたそれは、間違いなく、そう。
 何が写っているか。それが大切で、そしてそれを見て、何を感じるか。それが大事。

 僕は、一枚の写真からドラマを作ることだって出来る。僕は、そういうクリエイターでありたいし、今でも、そうして進化し続けていると自分では思っている。
 出来てるかは、わかんないけど、でも、そこにあること、リアリティは、大切にしたいと思う。
 写真、最近撮ってないで、お話ばかり作っているけれど、でも。
 活字の向こうに、それを。ね。

(ちなみにこの本、雑誌が現在も生き残っているかは定かではありません。かなりマニアックな本なので…)