studio Odyssey




これもまた、エッセイ?

『いつか』(99/10/26日誌より)

 怪我をしました。
 左手の薬指と、小指。

 どんな怪我かというと、指の上に岩を落としました。ごすんと。そうねぇ、100Kgくらいの。
 当然のように、指がつぶれました。

 それが昨日。真夜中。月光浴という、月明かりのみで写真を撮るというもんを、さぁ撮り始めようかという時です。

 ええ、ええ、そりゃ病院に行きましたわ。指がね、2倍くらいに晴れて、血ィ、だらだらですよ。激痛ですよ。

 ってわけで、左手の二本の指をつぶし、深夜、救急病院まで行きました。
 んで、診察の結果、
「別に、折れてはいないですね」
 と言うお医者さまのお言葉。僕はそれを聞いて、きっぱりとみんなに、
「じゃ、写真撮りに行こう」
 さすがにみんな止めました。そりゃそうだ。血ィだらだらで、一瞬、倒れたりしたもの。それが、「別に、折れてないなら問題なし」なんて言っても、説得力ない。

 けどね、でも結局、撮りに行った。月光浴。

 今、その写真、部屋に飾ってあります。

 でも、もし、もしこの時写真を撮りに行かなければ、この写真は今ここにない訳です。それだけの価値があるかと問われたら、僕はそれに答えられないかもしれないけれど。

 でも、写真は、動き続ける時の刹那をフィルムに焼き付けるものだと思っている。今を逃せば、二度と取り返せないものを焼き付けるものだと思っている。

 だから、今、撮らなきゃならない。後になって、それが果たしてそれだけの価値があるかと問われて、答えられなくても。今は、もう撮りかえす事ができないから。

 ツメなんか、いつか戻る。痛みなんか、いつか消えてなくなる。
 だから、大切なのは写真と同じ。刹那の、その時だけだ。

 だから、今を大事にしないといけないと思う。
「ちょっと、かなり、痛いけども」