studio Odyssey




これもまた、エッセイ?

『夜空に』(99/7/28日誌より)

 月食だった。

 僕は昼よりも夜の方が遥かに好きだ。理由は自分でもわからない。けど、青い空よりも、星の瞬く空の方が好きだ。
 でも、それに気づいたのはつい最近だけれど。

 大学で、天文部の友人がいた。親しい友人で、なんか、いつの間にか、僕も天文部に出入りするようになっていた。で、いつの間にか、部員になっていた。よくあることだ。
 で、自分はやっぱり夜空が好きなんだなって、気づいた。

 そんなわけで、今日、月食を大学の校舎の屋上から見ることになった。
 もっとも、観測ではなくて、うちの大学の天文部の場合、見る。月見ってニュアンスの方が、遥かに強いんだけれど。だんご食べながら。

 ともあれ、19時30くらいから始まった月食を、僕らはぼけーと眺めていた。ほんとうに、ぼけーと。もちろん、くだらない話とかをしながら。

 そんなとき、ふいに、
「あ、あそこ!」
 と、地平線に近い空を指したのは誰が初めだったか、知らない。

 見ると、何か、光が明滅していた。雷のそれと同じみたいに、低いところにある雲を輝かせて。
 ただ、あんな白っほい黄色の光じゃなくて、原色に近い、赤や黄色や緑の光で。
「花火だ!」

 地平線の向こうで明滅していたのは、花火だった。
 月に向けられていた双眼鏡を、さっと花火にむけて、今年初の花火を、見た。

 双眼鏡の向こう。月食にかける月の下で。

 それはそれで、なかなかいい花火の見方だった。

 夜空は好きだ。
 だから。