studio Odyssey




これもまた、エッセイ?

『聞こえない声』(99/7/16日誌より)

 聞こえない声はない。

 某衆議院議員と某テレビ局記者との会話が盗聴されたという話が、今日もニュースで流れていた。

 聞こえない声はない。

「最新のデジタル電話は盗聴できない。音声はアナログ信号。しかし、この電話はデジタル信号だ。だから、盗聴は出来ない」

 馬鹿な話があるもんか。じゃ、なんで電話は聞こえるんだ。確かにデジタル電話はそのまま受信しても声は聞こえない。音声は先にあるようにアナログ信号だからだ。だけれど、あなたの電話は声が聞こえますでしょう?
 当然、デジタル信号で送られてきた電話のデータを、アナログに変換する部分が電話の中に埋め込まれているわけだ。
 あたりまえ。でないと、電話が用を足さないもの。

 つまるところ、その機械を取りだして繋げればいいだけの話。そんなもの、秋葉原に行けば、ごろごろ転がってる。電話は、盗聴できる。

 聞こえない声はない。

 たとえその声をデジタルデータに変換しても、どんな暗号化処理を施してても、ガード信号を乗せたとしても、聞こえない声はない。

 もしも、もしも本当に誰にも聞かれない電話が作られたとしたら、それは用を足さない。
 誰にも聞かれない。つまり、それを送りたい人にも届かない。

 だから、聞こえない声があるわけない。
 だから、聞こえない声はない。

 唯一、聞こえない声があるとするのならば、それは電話の向こうで喋る相手の心の中。
 ただそれだけ。

 言葉にしない、できない、その声だけ。