studio Odyssey




なんというか、エッセイ?

『過去と今の交差点』(99/6/21日誌より)

 今日、たまたま出かけた所が祖父母の家の近くだったので、ちょっと寄ってみるかと、電車を降りた。

 その駅は、普段は全然使わない駅だった。普段使う駅とは正反対の方向で、降りたのも、もしかしたら十年ぶりくらいだったかも知れない。

 降りたところは、はっきり言って、見知らぬ場所と相違なかった。どっちに進んだらいいのか、全くわからない。昔、ばあちゃんと一緒にきた駅のはずなのに、全然右も左もわからない。

 とりあえず地図を頼りに、僕は大きな国道を渡った。

 不意に、景色が逆転した。見知らぬ風景が、一瞬にして変わる。見たことのある風景。見たことのある街並み、曲がり角に。

 気づいた。
 逆方向の出口に降りてしまっていたんだった。

 曲がり角を曲がる。

 知った建物。大きな門構えの、警備会社の建物。小さいときは、地球防衛のために戦っている人たちの秘密基地だと、信じて疑わずにいた建物だ。

 早足に道を辿る。知った街並み。変わっているのかもしれない。けれど、それは雰囲気の中にとけ込んでしまっていて、全然わからなかった。 そう、雰囲気は、あの頃のままだった。
 赤い郵便ポスト。
 同じ場所に、同じように立っている。当たり前だけれど、その当たり前のことが嬉しくなってきて、僕はその郵便ポストをパンチした。小さいときにしたのと同じ風に。

 歩く。
 フェンスの角を曲がる。
 真っ直ぐの道。ばぁちゃんちまでの、道。

 こんなに近かったっけ?というくらいの、その、ほんの五分程の時間、僕の時間は、十年近く前の時間と、その交差点で交錯した。

 近所の子ども達がフェンスの角を曲がって、駆け抜けていく。