studio Odyssey




なんというか、エッセイ?

『1500円で買える夢の産物』(99/2/10日誌より)

 本田技研が世界初のすり足でない自立型2足歩行ロボット、P2を発表したのは、96年のことだった。実際に一般の方の目に触れるようになったのは、97年の夏だったと記憶している。

 P2といわれても、「ハテ?」という人もいるかも知れない。ようは、あの世界のホンダが作った、自分の二本の足でてくてくと歩くことのできるロボットのことだ。

 だからなんだと言われるととても困ってしまうんだが…実は我々が当たり前のようにしている「二本の足で歩く」という動作は、実はとても難しい。コンピューターでそれをしようとすると、凄まじい速さの計算能力が必要になってしまうし、しかも、歩速ほどのスピードを出すためには、それこそスーパーコンピューター並の計算能力を要求された。

 が、P2は人間と同じくらいの大きさで、てくてくと歩いて見せた。いや、ぎくしゃくとだったが、それでも、他のどんなロボットよりもてくてくに近かった。

 P2を初めて見たときのインパクトは、あまりにも強烈だった。当時、「二本足でロボットは歩けない」のが当たり前だったからだ。
 ちょうどそのころ書いていた「新世機動戦記R‐0」の中でも、初めに出したロボットは歩けなかった。いや、それが科学的に考えれば、当たり前だったからだ。
 それが、歩いた。てくてくと。僕の目の前で。
 僕は、その「歩く」ロボットに、鳥肌が立つほどに感動したものだった。パラダイムチェンジだ。「ロボットは歩ける」

 そしてその翌日。僕らはこの「ロボット」の話で盛り上がった。
「すゲーよ、ロボットが、ついに歩いたよ!」
「21世紀を前にね!」
「21世紀には、巨大ロボットも現れるに違いないよ!」
「それはない」
「え?ないの?」

 とにかくも、僕らのあこがれのロボットは、一気にリアルなものになった。アニメや漫画の世界だけだったものから、現実に存在するロボット、P2にだ。
 当然、机の上のロボットも、変わった。

 1/144スケールのアニメロボットから、1/12の、実在するロボットへ。

 ホンダ、P2。
 それを作った人たちは、きっと、僕たちと同じ思いをどこかに秘めていたのに違いない。
「ロボットを作ってやる。子どもの頃憧れた、あんなロボットを」
 夢の産物。僕らが目指しているものと、もしかしたら同じ。

 だから僕は、そのロボットを目の前に、新たな想いを書きつづる。
 夢から生まれた産物。その、模型。
 1/12スケールのプラモデル。WAVEより発売されている、ホンダ承認のプラモデル。

 P2。
 それを見つめながら。

 1500円で世界中を震撼させた、夢を現実にした『ロボット』が手にはいる時代。
 でも、夢までは、当たり前だけど買えない。

 僕はその想いを書きつづる。
 次々と実現されていく夢を、追っかけながら。