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本田技研が世界初のすり足でない自立型2足歩行ロボット、P2を発表したのは、96年のことだった。実際に一般の方の目に触れるようになったのは、97年の夏だったと記憶している。
P2といわれても、「ハテ?」という人もいるかも知れない。ようは、あの世界のホンダが作った、自分の二本の足でてくてくと歩くことのできるロボットのことだ。
だからなんだと言われるととても困ってしまうんだが…実は我々が当たり前のようにしている「二本の足で歩く」という動作は、実はとても難しい。コンピューターでそれをしようとすると、凄まじい速さの計算能力が必要になってしまうし、しかも、歩速ほどのスピードを出すためには、それこそスーパーコンピューター並の計算能力を要求された。
が、P2は人間と同じくらいの大きさで、てくてくと歩いて見せた。いや、ぎくしゃくとだったが、それでも、他のどんなロボットよりもてくてくに近かった。
P2を初めて見たときのインパクトは、あまりにも強烈だった。当時、「二本足でロボットは歩けない」のが当たり前だったからだ。
ちょうどそのころ書いていた「新世機動戦記R‐0」の中でも、初めに出したロボットは歩けなかった。いや、それが科学的に考えれば、当たり前だったからだ。
それが、歩いた。てくてくと。僕の目の前で。
僕は、その「歩く」ロボットに、鳥肌が立つほどに感動したものだった。パラダイムチェンジだ。「ロボットは歩ける」
そしてその翌日。僕らはこの「ロボット」の話で盛り上がった。
「すゲーよ、ロボットが、ついに歩いたよ!」
「21世紀を前にね!」
「21世紀には、巨大ロボットも現れるに違いないよ!」
「それはない」
「え?ないの?」
とにかくも、僕らのあこがれのロボットは、一気にリアルなものになった。アニメや漫画の世界だけだったものから、現実に存在するロボット、P2にだ。
当然、机の上のロボットも、変わった。
1/144スケールのアニメロボットから、1/12の、実在するロボットへ。
ホンダ、P2。
それを作った人たちは、きっと、僕たちと同じ思いをどこかに秘めていたのに違いない。
「ロボットを作ってやる。子どもの頃憧れた、あんなロボットを」
夢の産物。僕らが目指しているものと、もしかしたら同じ。
だから僕は、そのロボットを目の前に、新たな想いを書きつづる。
夢から生まれた産物。その、模型。
1/12スケールのプラモデル。WAVEより発売されている、ホンダ承認のプラモデル。
P2。
それを見つめながら。
1500円で世界中を震撼させた、夢を現実にした『ロボット』が手にはいる時代。
でも、夢までは、当たり前だけど買えない。
僕はその想いを書きつづる。
次々と実現されていく夢を、追っかけながら。