studio Odyssey




そんなこんなで、エッセイ?

『プロジェクトの誇り』(2001/6/3)

 プロジェクトXというのは、NHKの番組で、これが結構、おもしろいのである。
 んで、これ、単行本が出ているので買ってみたのだが、うーむ、面白い。

 その中でもとってもお気に入りの回が、SONYのトランジスタラジオを巡るドラマの回。
 東京通信工場株式会社から、SONY、そして世界のSONYへとのそのドラマは、はっきり言って涙なしには読めない。少なくとも、なんとかかんとかの天使なんていう、10万部を越えた、涙なしには読めないというハードカバーの小説なんかより、100倍は感動的だ。

 わずかに40ページほどしかない話だけども。

 戦後の日本、日本再建という志を秘めたものたちが、少しでも欧米に近づくため、敗戦国日本から、世界へ。

 当時、日本製の製品といえば安かろう悪かろうの世界で、欧米諸国では全く相手にされなかった、今では、ソニーもパナソニックもアイワもサンヨーも、世界中のどこにいっても、一流の品物として認められているけども。
 そこにたどり着くまでには、僕らはまともに見たこともないような、トランジスタラジオを巡る、先人たちのドラマがあったわけである。

 詳しくは、読んでいただきたい。立ち読みでもいい。プロジェクトXシリーズの6に、この話は載っている。

 SONYの盛田さんといえば、このトランジスタラジオの販売の権利のことで、アメリカの老舗時計メーカー、「ブローバー社」からの「2年で10万台の買い付けをする」という申し出を断った話があまりにも有名だ。「SONYのブランドではなく、ブローバーのブランドでならという条件つきでだ」

 はたして、それを断ることが今のビジネスマンに出来るのであろうか。
 そして盛田さんは言う。「50年後には、かならずおたくより有名になってみせる」

 ブローバー社を知っている人が、果たしてどれだけいるだろうか。

 この本の中には、その台詞を言ったブローバー社の男が登場する。アーサー・クルードというその男性は、今、当時を振り返って言う。「何人もの男たちが私に同じことを言いましたが、その『約束』を守った男は、ミスター・モリタ、ただひとりですよ」

 誇りという言葉を、しばらく使っていなかったと思う。
 ともすれば、忘れていたと思う。

 その当時の、SONYの、いや日本のビジネスマンの皆は、誇りを持っていたと思う。それが日本再建のためとか、なんだとか、それはまた別の話としても、「メイド イン ジャパン」に、その誇りを持っていたと思う。

 誇り。
 プライドとか、それに類する言葉とは、違う。

 誇り。
 ひさしく、使っていないと思う。きっと誰もが皆。
 僕の誇りは何か。僕には誇れるものがあるか。誇りとは何か。

 その物語は、とてもすばらしい物語として、僕らにそれを、思い出させてくれる。

 先日から、ミニコンポがほしいと言っていて、まだ買ってない。
 もしもその物語をいつでも思い出せるようになるのであれば、

 SONYのミニコンポを買うのもまた、悪くないと思う。