今日も元気に、プロンテラベンチの面々は…
遊びに出かけてボスと遭遇。*1
ともあれ。
suteinu:「ただいまです、ご主人さまー。
プロンテラ。
陽も落ちて、夜の闇が深くなり始めた頃、すていぬは冒険を追えて、家へと帰ってきました。
spit:「おーう。おけーり。
部屋を片付けながら、スピットは振り返りもせずに返します。
その隣ではへっぽこが部屋を片付けるスピットの真似をしようと、カートの片付けと称してギルド資産を床に広げ始めていたりもするのですが、
suteinu:「そういえば、今日はコンロンに言ってきて、おみやげを持ってきたのです。
spit:「雲の欠片ならいらねぇ。
*2
heppoko:「即答です。
suteinu:「雲の欠片ではないですよー。
と、すていぬは道具袋の中からそれを取り出しました。
spit:「
…
それは、3つに折れた剣でした。
spit:「なぁ、いぬよ。
suteinu:「はい。
spit:「俺が今、何をしているかわかるか?
suteinu:「いいえ。
即答するすていぬに、へっぽこが答えます。
heppoko:「アピさんと結婚するにあたって、お部屋が汚いので、片付けているのだそうです。
spit:「そうだ。ここに下宿させて貰ったままというのも、どうかなーと思っているしな。
*3
heppoko:「でも、へっぽこ的には一人増えるのも二人増えるのも、もう、関係ないかなーとか、思わなくもないです。
suteinu:「アピさんのプティちゃんも、人間になりますかー?
spit:「
マジヤメテクレ
suteinu:「まー、とりあえず、それはともかく、これはご主人さまにおみやげです。
と、すていぬは折れた剣を差し出します。
spit:「いや…だからな、お前…
ふぅ、とため息を吐いて、スピットは言いました。
spit:「つーか、へっぽこもだが…
heppoko:「はい?
suteinu:「うい?
spit:「何でもかんでも、
拾ってくるんじゃねぇッ!!
heppoko:「うい?
suteinu:「むい?
小首をかしげるへっぽこの周りには、何処をどうすればそれだけはいるのか…カートの中から出された武器防具、頭装備に各種アイテムが散乱していました。
suteinu:「あ、へっぽこさんにはこれをおみやげです。
heppoko:「わーい。
spit:「だから、お前は雲の欠片を100も200も集めて、何に使うつもりなんだッ!?
spit:「まぁ、そんなわけで、だ。
翌日。
コンロンの村長宅にやってきたスピットは、その折れた剣を村長に渡しつつ言います。
spit:「うちのいぬが、コンロンのダンジョンで掘り当ててきたんでな。返しておこうと思ったわけだ。
「ふむ…
村長は、何かを思案するような頷きを返しました。
最も、仮面の下の表情は、スピットにはわからなかったのですが。
spit:「まー、そんなわけで、ミドカツ王国の奴が、コンロンで盗みを働くというもの、あとあと面倒な事になるかもなと思ったんでな。返したぞ。
と、スピットがその場を辞そうとした時でした。
「旅人の方よ。
仮面の下からの声が、呼び止めました。
「この剣は、代々我が家に伝わる、家宝の剣なのだ。
spit:「…へぇ。
家宝の剣という言葉に、スピットは思わず足を止めました。
spit:「家宝の剣…ねぇ…
そしてこの後、スピットは立ち止まって聞き返した自分を、後悔するのでした。
*4
spit:「まぁ、そんなわけで、だ。
コンロンのはずれ。
ベンチの付近に何故か集まるいつもの仲間たちを前に、
話の繋がりがさっぱりわかりません!?*5
と、近くにいた無愛想な剣士が声をかけてきました。
「お前等が、村長の剣を見つけたという奴か?
spit:「いかにも。そして、無理難題を言い渡されて、直せと言われた奴らだ。
Ridgel:「小脇に抱えた青箱が哀愁を誘います…
appi:「剣を直す変わりに、報酬の前払いとしていただいたのです。
spit:「
欲しいと言ってもやらねーぞ。*6
Abd:「さすがスピ。
spit:「おう!? 久しぶりだな、アブ!?
Abd:「
この先、台詞があるかはわかりませんが…
appi:「お義兄さん…何もそこまでは…
spit:Abd:「はっ!?
spit:「
義理の兄になるのか!?
Abd:「
義理の弟!?
spit:Abd:「
激しく嫌だ…*7
Ridgel:「とまぁ、義理の兄弟漫才が一段落したところで、何か我々にお話でも?
と、リジェルさんが無愛想な剣士に聞ききます。
無愛想な剣士は小さくひとつ頷くと、言いました。
spit:「あー、鍛冶ギルドか!!
brid:「鍛冶ギルドなら、直せるかもしれませんね。
spit:「よし、メロウのツテをたどるか。
merrow:「今、セージだし。
*8
はてさて。
そんなこんなでやってきたのは魔法都市ゲフェン。
実はこの町、魔術師ギルド以外にも、鍛冶ギルドが存在する町なのです。
spit:「よーし、みんな散策。剣を直せるぜーと言う人を探せ。
青箱を抱えたままのスピットの声に「らじゃー」とみんなが散りました。
Tsubasa:「発見。
spit:「
早ッ!?
Tsubasa:「宿屋の奥に、それっぽい鍛冶師はっけーん。
appi:「鍛冶ギルドの人も、その人なら直せるんじゃないかと言ってます。
spit:「よーし、では早速と直して貰うとするか。
「ん?なんだお前は?用がないなら出て行け。
spit:「
このパターンはッ!?
気がつくと外にいるパターン。
と、言うわけで、気がついた時にはすでにスピットは宿屋の外に追い出されていました。
spit:「ふっふっふ…リジェルさん…
Ridgel:「斬りますか?
spit:「あとは任せた。
merrow:「ハァァァァァァァァァ!!の再来ですか?
Ridgel:「
いやあぁぁぁぁぁぁぁあ!?*9
ともあれ、一行は話を聞いて貰おうと、波状攻撃。
さすがに波状攻撃を繰り広げていれば、相手も折れるもので…
spit:「すみません、魅惑の選択肢を提示されてしまいました。
heriosu:「
1つ目ですか?
appi:「スピさん…
Abd:「それです、スピ!魅惑の選択を選ぶのです!!
brid:「ここは、娘をおだてる作戦がベストかと…
Ridgel:「ですね。
spit:「うむ…
spit:「だが! ギルドRagnarokのマスターとしてッ!
変な意地を張るな。
Abd:「見てきたらどうです?
と、さらりとアブ。
spit:「は?
Abd:「
上にいますよ?
spit:「チェックはぇえな、お前。
Abd:「あなたに言われたくはないですが。
Ridgel:「仲のいい義兄弟だなぁ。
KENNY:「ですねぇ。
spit:「…
その子は、スピットに向かって気丈に笑いかけました。
「けほ…けほ…あ…こんにちは…
それは、咳の混じった、か細い、吐息のような声でした。
spit:「…
ミもフタもない!?
jeers:「アレだ。
Sylphienne:「なんでしょう?
jeers:「スピさんに任せていたら、直せる物も直せなくなる予感。
makie:「おだて作戦でゴー!!
appi:「スピさん、がんばってください。
spit:「つまりあれか…
spit:「あのガキを、
『可愛いですね』と、俺に言えと!?
Sylphienne:「可愛いじゃないですか。
KENNY:「ですよー。
spit:「ロリ趣味はねぇ。
jeers:「男ならッ!!
spit:「意味不明だぞ、J。
Abd:「ともかく、ここは私の言うようにしなさい。スピ。
Ridgel:「出たッ!
spit:「キタッ!
Abd:「この、
言葉の魔術師の前には、一般市民など…
appi:「お義兄さん…何も自分でいわなくても…
Abd:「まずは、『娘さん綺麗ですね』です。スピ。
spit:「アー…『ムスメサン、キレイデスネ』
Ridgel:「片言!?
Abd:「『何か悩み事でも?』
spit:「つーか、お前が話せよ。
鍛冶師は仕方ないというように、苦笑しました。
「君らは、突然現れたかと思ったら、ずいぶん騒々しいな。
makie:「元気がとりえ。
Tsubasa:「それ以外はないとも言う。
苦笑いの鍛冶師に、アピは小さく聞きます。
appi:「何か悩み事でもあるのですか?
「う、ん…実は…なんだ…見ず知らずの他人に話す事じゃないんだが…俺の孫娘のリールーが、不治の病にかかってる。
spit:「上のガキか…
KENNY:「スピさんっ。
「あの子の親は、あの子が生まれて間もなく、事故であの世にいっちまった。それから…俺がずっと育ててきたんだ…ところが、何年か前から急に酷く痛がりはじめてよ。あちこちの有名な医者を訪ねて回ったが、どいつもこいつも、病名すらわかりゃしねぇ…
spit:「
ふーん。
jeers:「いやまって、マスター。何スゲー普通に返してんの。
spit:「え? 俺になに期待してんの?
appi:「私は聖職者ですし、よろしければ、診てみますが…?
「ありがたいが…医者でもない奴に治せる病気じゃねぇ。気持ちだけありがたく受け取らせて貰うよ。
そう言って、鍛冶師は弱く笑いました。
spit:「
ふーん。
Sylphienne:「スピさん、なんで素なんですか…
Ridgel:「いいところと言えば、いいところなのかも知れませんが…
spit:「いや、俺はできねぇ約束はしたくねぇからな。
Abd:「えーと、鍛冶師さん。お名前を伺ってませんでしたね。
「あ? ああ、俺はウンゲルだ。
Abd:「私、見ての通り、ウィザードの、アブドゥーグと申します。そして、あっちのウィザードが我らがギルド、Ragnarokのマスター、スピット。
「ああ、あんたがギルドマスターさんなのか。
ウンゲルはスピットを見て笑いました。
「すまんな、その宝剣は直してやりたいが…今の精神状態じゃ、鉄を打っても、ものにはならねぇからな。
Abd:「で、ウンゲルさん。あのマスターが言っていたのですが…
アブはウンゲルの前に立って、言いました。
Abd:「孫娘のリールーさんは、
『自分が幸せにします』と。
spit:「いって…
Neeeeeeeeeeeeeeeは、ぎゅうと仲間たちに口と身体を押さえつけられ、スピットの口からは発せられませんでした。
ウンゲルは笑います。笑って、
「ううん?お前がどうやって、リールーを幸せにしてくれるって言うんだ?
Abd:「我々が連れて行きます。
「…連れて行って、何をしようってんだ?
Abd:「…
沈黙が、その場にいた皆を支配していました。
spit:「できねぇ約束は、しねぇ。
スピットはむすりと口を尖らせました。
そしていつものように、ちょいと帽子の位置を直しました。
spit:「オメーのためじゃねぇぞ? この宝剣を、直さないといけないんだ。前金で、青箱貰っちまってるしな。
階段から手を伸ばし、スピットはリールーの頭をくしゃくしゃと掻きまわして笑います。
「けほ…
リールーは小さく咳き込んで、言いました。
「ありがとう。
spit:「いや、困っている奴がいたら、助けるまでさ。
そして笑い、
spit:「それに、リールーは今、とても大事なひとつの事を口にした。
「?
見つめ返すリールーに向かって、スピットは、まっすぐに告げたのでした。
spit:「俺の事を、『お兄さん』と、正しく呼んだ。
階下にいた仲間達が、苦笑しながら、そのやりとりを見守っていました。
一人の少女を助けるために、一行は首都、プロンテラへと戻ります。
*10