studio Odyssey



おはなしのつくりかた

 管理人、しゃちょ流のお話の作り方講座。

おはなしができるまで・頭のなかみ。

 今回は「おはなしのつくりかた・頭のなかみ」と言うことで、実際は頭の中でしっかりと決まってさえいれば特に書き留める必要はないのだけれど、実際はこんな風に、これくらいの事を考えてから書き始めているよって事を書いていきます。
 言うまでもなく、前回の続きです。

 前回で触れた、設定の深さ10と言うのがどれくらいのものかという指標にでも、使ってください。
 「書くときは別に、なんにも考えないで書いてるよ」と僕もよく言っていますが、そんなもん、嘘です。本当になんにも考えてなかったら書けないですもの。
 正しくは、「最低ライン以上は考えてない」ですね。
 で、その最低ラインてどれくらいか。


頭の中身をほじり出そうか

 実際、連載ものならまだしも、読み切りでここまで細かく書き留めたりはしません。この作品、『魍魎撲滅委員会』は諸事情から、こうして企画書を細かく書く必要があったんですね。
 でも、そのお陰でずいぶんと書きやすかったんですけれど。

 まずは、何はさておき前回で作ったキャラクターに色を付けていく作業から始めましょう。
 ちなみに、企画書の原文をそのまま使っていますので、実際に使用されたものとは若干異なります。


メインキャラ

・ミカ(高1)
 主人公。委員会に兄がいる事によって、今回の事件に巻き込まれる。僕テイスト的に、フツーの女の子。使う武器はシグマ40F。理由>僕が欲しいから。H&Kもありです。
(ちなみに完成品ではミカではなく、ご存じのように『真琴』)

・カワシマ ミホ(高1)
 ミカと同じクラス。美人と誉れ高いが、本人はそんなことどうでもよい的。アクション大スキ。ハリウッドのアクション映画は見まくっている。一般の男子生徒からは「カワシマさんの美しい顔にいつ傷が…」と心配されている。が、アクション大スキ。走る、滑る、もちろん見事に転ぶ。最近ジョン・ウーにはまっている。武器はルガーP08。
(カタカナで名前が書かれているのは、この時点ではまだ漢字が決まっていないため)

・ナカヤマ メグミ(高3)
 委員長。眼鏡っ娘。絶対。何でかっつーと、委員長だから…ではなく、なくもないけど、ではなく、霊感の強い人って金属物を身につけてると見えにくくなるのだそうで…だから眼鏡のフレームは金属でよろしく。武器はPSG-1。
(眼鏡はつけているけれど、この設定は結局使用されない)

・シンドウ(高2)
 ミカの兄。やや熱血バカ。銃が撃てればシアワセ。目的のためには手段は選ばない。オイシイお約束のためなら家族も泣かす。武器はM60を中心とした、マシンガン。
(この時点で名前はまだ未定。実際はシンドウではなく、『新庄』になる)

・サイトウ タカシ(高1)
 兄がエアピストル国体選手。「だから何だ」とシンドウ兄。二人はライバル。(何が?)彼も銃が撃てればシアワセ。だけれど、シンドウ兄とは違い、作戦を考える頭もある。が、結局は撃つのだ。身体の至る所から銃が出てくる。基本はガバメントとベレッタ。
(結局サイトウのこの設定はほとんど使われない。本編ではただ撃ちまくっていた)

・キタウラ ナツミ(高2)
 委員会室のオペレーター。委員会室で、委員のバックアップをします。委員会室のメインフレームは学校中の色々な機械をリモートコントロールできます。戦線には出ませんが、強いて言うなら武器はパソコン。
(『戦線には出ませんが』という下りで「じゃあまり書かないね」とキャラデがデザインで遊び、それに乗った僕のせいでなつみの性格は最も速く決定づけられた)


 ここまで決まれば、もうあとはストーリーの3本柱を決めるだけです。
 要するに、「始まり」と「クライマックス」と「終わり」です。

 前回考えたテーマを元に、ある程度はストーリーを考えていますか?というより、テーマが先かストーリーが先かという感じで、ストーリーはできているでしょう。
 そのうすらぼやーとしたストーリーの中で、軽くキャラクター達を動かしてみましょう。

 この作業は意外と軽視されがちですが、とても重要です。書き始めてから「こんなんじゃなかった」と思ったりしないように、事前に軽くキャラクターを動かしておくのです。考えた設定に無理がないか、キャラクターは生き生きと動き回れるか、なれれば直感的に出来るようになるかも知れませんが、ちょっとくらいつじつまが合わなくてもかまいません。自分が考えたキャラクターが、実際はどのように動くのか、試しに動かしてみましょう。


ミカ、ミホの描写(ここでわかるように、二人とも『ミ』始まりだったため、変更した)

「来るわよ」
 言いながら、ミホは手にしたルガーP08を構えた。防火扉に穴を開け、魍魎が二人の眼前に姿を現す。
 小さく息を吸い込むミホ。シグマ40Fのグリップを確かめるミカ。魍魎は、光のない目で二人の位置を確かめると、ゆっくりと牙の生えた口を開き──襲いかかった。
「きゃーっ!」
 というミカの声と魍魎の咆哮が重なる。
 ミホは飛び上がった魍魎をルガーP08の独特のサイトで追いながら、トリガーを引いた。撃ち出される弾丸が魍魎の身体を貫く。プラズマを発生させながら、魍魎を形作るエネルギー帯が揺らぐ。が、魍魎は身体のエッジを揺らめかせながらも、ミホの喉元に向かって牙をむいた。
「くっ…」
 牙をよけようと身体をのけぞらせる──撃ち続けながら──ミホ。尻餅をつくようにして倒れ込むミホの顔、そのすぐ脇を魍魎の牙がかすめていった。
「ミホ!?」
 わたわたと慌てながら、ミカはフォローにまわる。構えたシグマ40Fのトリガーを引く。けれど、その弾を魍魎は素早くかわし、再び体勢を立て直す。
「ミカ!封印用トラップ!!」
 跳ね起きるようにしてミホは言う。


サイトウタカシの描写:魍魎が接近してきて。

 廊下を折れた魍魎の眼前に、その男の姿が飛び込んできた。
 なぜかブレザーの学園なのにその男は詰め襟の学ラン──しかも長ランだ──を肩からかけ、学生帽をかぶり、口にはいつどこで食した物か、サクランボのヘタをくわえて直立に立っている。
 そして彼はぺっとヘタを吐き飛ばして、言った。
「止まらなければ、撃つ」
 無論、魍魎は人の言葉を解することができず──要するに止まらないわけで──彼は迫り来る魍魎の姿ににっと口の端を突き上げて笑った。これまたなぜか鍔に切れ目のある学生帽の下で、彼の目がぎらりと光る。
 迫る魍魎。彼は嬉々として、言った。
「オッケェー!!」
 叫びながら腕を振るう。──と、学ランと帽子は宙に舞い、彼のショルダーホルスターに納められた2丁の銃を顕わにした。彼は両腕をクロスさせ、右手で左、左手で右の銃を素早くドロウする。
 右手のコルトガバメント、左手のベレッタ92FSが魍魎に向かって火を噴いた。


シンジョウの描写(実はこの時点の原稿作成時に『シンドウ』を『シンジョウ』と間違えて書き、そのイメージがはまりすぎたために彼の名は『シンジョウ』となった)

「迫る、未知なる敵を過小評価してはならない。持てる限りの力を使い、敵を討つ!」
 彼の視界に、魍魎の姿が映った。
「つまり撃ちつくす!躊躇せず!」
 サイト越しに光る目。
 廊下の掃除用ロッカーを横に倒して簡易バリケードとし、その上に乗せたトライポッドにM60をつけ、構えているのはシンジョウ(兄)である。
 彼はにやりと口許を弛ませた。
「目標捕捉!迎撃するッ!!」
 トリガーを引くシンジョウ。銃口から、9.6V、1800mAのバッテリーによって撃ち出された銀の弾丸が魍魎を撃つ。


 さて、ここまでである程度のイントロは完成です。

 次にクライマックスですが、実はこの魍魎撲滅委員会は基本コンセプトが『制服娘がガンファイト』で、『全体的にスピード感のあるように』としていたので、クライマックスはこの始まりほどしっかりと考えていたわけではありませんでした。
 もしもここにたどり着くまでにスピード感がないようだったら、ここで一気に加速させたかったからです。そして、『ガンファイト』を文字の中で極限までスピーディにカッコよく演出したかったからです。

 結局、クライマックスが完全に決定したのは、書き始めて、その直前までたどり着いてからでした。実際、スピード感は前半で良く出ていたので、それを途切れさせないよう、群像劇的な流れを作ってこのクライマックスを盛り上げていきました。

 以下は、その時にこのクライマックスの流れを書いたものです。


クライマックス

封印失敗:理由>怨念を引き込んで実体化
・封印完了と思ってホッとしているところでなつみの声。「上!!」
・上から襲いかかってくる魍魎。真琴、委員長が体液を受ける。>その後、分散消滅

シャワーシーン・同時に戦闘:クライマックス
・テーマ『制服娘がガンファイト』より、気持ちよさを最優先に。
・2つのシーンをうまくミックス。

シャワー:真琴と委員長は魍魎がなぜいるのかの辺りを。

銃が主役なので、使用する銃と、それが最も格好良く演出されるように。
  戦闘:新庄、コルトM16A2、SIG 551 SWAT。
    :美帆、ウージー(黒皮手袋で)歩きながら乱射
     魍魎に投げられる。>なつみのバックアップ?
    :斉藤、オート9の乱射
 新庄、斉藤、美帆の3人で、ベレッタM93R、オート9、92Fsの3種ベレッタ乱射

 なつみのバックアップ。結界の使用
 振り向く魍魎>真琴と委員長


 これでクライマックスは完成です。

 そして最後は終わり。

 この作品の結末は、実際にはあり得ない状況だけれど、そのあり得ない状況を、「こんなのねぇよ」と思われる前に終わってしまおうと言うのと、このあり得ない状況も、劇中の彼女らにとっては、日常茶飯事のことで、実はただそれだけのことなんだよという風に終わらせました。

 よって、結末もキャラクターをそれぞれ軽く出して、さくっと終わらせています。


終わり

「毎度お騒がせいたしております、魍魎撲滅委員会でございます。本日11時35分頃に出現しました魍魎は、我々魍魎撲滅委員会の手によって13時14分、封印されました。生徒の皆さん、安心して、午後の授業に望んでください」
 しんとしていた廊下に、生徒たちの歓喜の声が響きわたった。
 誰かが手を叩く。
 誰かが友達と手を組んで喜びにはしゃぐ。
 昼休みの終わりを告げるチャイムの音は、誰の耳にも、届いてはいなかった。
 委員会のメンバー五人、真琴、美帆、委員長、新庄、斉藤は、意気揚揚として歩きだした。
 真琴は煙を立ち上らせる封印用トラップをちょいと持ち上げて、笑いながら言う。
「毎度お騒がせいたしております。魍魎撲滅委員会ございます!」


 実際、終わりはここまでしっかりと初期段階では決めておく必要はありません。ただ、「こんな感じに終わらせたいなぁ」とだけ考えておけばいいでしょう。

 さて、これで「おはなしができるまで」も終わりです。
 ここまで来たら、もうストーリーの1つくらいは作れるかな?

「よし、それじゃあ書くぜ!」と意気込んで、レッツライト!