studio Odyssey



no title

Written by : pochiko

 ……七夕……。

 それは、ちみっこいガキどもがその身に似合わぬ大それた願望を、小さな手に握られた短冊一杯に書き記し、それを周囲にさらし上げた挙句、大人たちに「昔はオレも若かった」などと生暖かい視線で見つめる日の総称である。
 まぁ、どういう経緯でこんな祭になったのかサッパリなんだけど、元ネタも男狂いが仕事ほったらかして天罰食らったっつー笑えもしないアホ話だから、しゃーないっちゃしゃーないかもしれん。
 経緯なんかはひじょーにどうでもいー話なんだけど、もちろん私も昔は若かっただけで、そりゃーもー大それた願望を書いちゃったわけですよ!
 書いた内容は、言いたくないけど聞きなさい!残念なことに、……ひじょーーーに残念なことに、聞いてもらわなきゃ始まらないらしいから。

 はぁ、やれやれね……。
 書いた内容はこちら。



   魔法少女になりたいっ!!!



 いやー、若かったわね。本当に若かったわ。まったく、子供なら一度は夢見そうな内容よね!
 けどね、今なら言えるわ。いいえっ!今だから言わせて貰う!

 「10年前の私の、どあほおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 たまたま、飛び移ったビルの屋上から全力で叫ぶ。
 そう、飛び移ったのだ、この二つの足で……。……なんだ、この脚力!慢性的運動不足なめんな!?
 ……っつか、これ魔法少女じゃねぇ!

 『ぶつぶつうるさいのぅ……』

 頭の中に声が響く。……うっせ、だまれ、元凶。

 『おぉぉぉ、粗野な言葉じゃ。おなごは淑やかであるべきじゃぞ?』

 ……男狂いに言われたかねぇよ。
 どうせ私の思ってることはこの声の奴に対して筒抜けだ。これみよがしにため息をついてやる。
 ちなみに先ほどから、聞こえてくるこの声はお察しの通り織姫さんだ。
 私を魔法少女風超人に仕立て上げた本人で、最大限譲歩しつつ血と汗と涙とその他いろいろなものを飲んで耐えた上で、よく言えば願いをかなえてくれたいい人。今の私の心を正直に言えば、マイペースな癖におせっかいな男狂いのくそばばぁ。
 
 『誰がじゃ、小娘!!!!!』
 ……っつーーーー。きぃぃぃんときたぞ。くそばばぁ!?
 『お主はもう少し目上の者に対する口の利き方を知るべきじゃ』
 あんたは他人との接し方を知っとけ。

 詳しい流れは省くけど、噂の牽牛彦星さんは天の川で思いっきりこけたらしく、見事に流された上に星の流れとやらに乗って、こんな小さい星組んだりまで来たそうな、因果律だか運命則だか知らないけど、大変迷惑な話だ。
 ……で、更にどういう流れか遅れに遅れた電波の都合と、体格体力その他もろもろの都合で、どうやら私は適格者だったかなんだからしくこうして織姫さんに適度に乗っ取られ、彦星さんを追うためにビルからビルに飛び移っている最中だ。

 「ホントにこの方向であってんでしょうね!?」
 『私が彦星様の波動を勘違いするわけがないわ!』

 あー、はいはい。そですか。それは良かったねぇ、出来るなら、もう少し早く捕まえてくれると私は嬉しかったよ。

 『彦星様はおそらく意識を失っておる』
 「んじゃ、捕まえんのは余裕か」
 『いや、我らのような共生ならともかく、一方が支配をした場合……』

 ……爆発音。ここから3つ先の交差点からやたらとごつい粉塵があがっている。
 あ〜、なんだ。とてつもなくいやな予感がするぞ、わたしゃ……。

 『暴走するのじゃ』
 「んなのは、見りゃわかる」

 UWOOOOOOOOOOOOOONNN!!!

 粉塵の中から獣のような雄叫びが響く。威圧感と言うか、本能的恐怖を誘う声と言うか……無駄に雰囲気出すぎ。
 よし、もう一度言わせて欲しい。

 「10年前の私の……アホおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


author:
pochiko
URI
http://www.studio-odyssey.net/thcarnival/x05/x0504.htm