studio Odyssey



no title

Written by : shintis

寒い。
視界は黒。
喧騒はなく静かだった。
・・・俺は闇の中に居るんだな。
偽りの光を追いかけて裏切られるぐらいなら、ずっとこの中でもいい――――

顔面にもふっとした感触がするものにのしかかれて、俺は意識を取り戻した。
「・・・・・・」
最悪の気分になっている俺は、この温いものをおもむろに掴んで引き剥がした。
その手に掴まれていたのは猫だった。
まだ大人に成り切っていない、小さな黒猫。
見詰め合うと猫は一言「な゙ー」と、可愛いとは言いがたい声で俺に挨拶をした。

朝飯を済ませて自分の住んでいるアパートの屋上に登った。
都会と田舎の中間のようなこの町を、冬の太陽が緩い光で照らしていた。
その光景を眺める俺の膝の上には猫が居た。
「なー、お前どっから入ってきたんだ?」
脇に親指を差し込んで抱き上げると、猫はくすぐったそうに目を細めた。
冷え切った指が、猫の温い体温で温められているのを感じた。

不意に、風が吹いた。
手の内にもふっとした感触がしない。
いやに掌を冷たく感じた。

「こんな所に居たんだ・・・・」
声がする。
振り向くとそこには黒猫を抱えた少女が居た。
「・・・ねえ、知ってる?猫は寂しい人が分かるんだよ」
緩い光が、彼女を照らしていた。


author:
shintis
URI
http://www.studio-odyssey.net/thcarnival/x04/x0406.htm
author's comment:
 くは、結構激しく批評してんなー。
member's comment:
<pochiko> ん、みじかい。
<kenon> SSという範囲ではないな。個人的にはよく書けているけれど。
<Tia> まぁ長さは問題では無いと思うが、らしさが出てるなぁ、と思った。
<u-1> ラストがもう一ひねり欲しかったな。
<yuni> 状況説明が少なくて分かり難いな。
<pochiko> いや、これは壮大な物語のプロローグで、このあと猫と少女と寂しさを埋めるストーリーが異次元世界で…
<u-1> 何故、異次元w
<pochiko> いや、唐突に現れた少女は、異次元の使者っていうと煽り文句としていいかなって。
<u-1> 猫がふといなくなってしまうくらいの方がよかったかもな。
<harusame> 少女は要らなかったというのか!
<u-1> 少女は過去の話にして割り切るw
<harusame> いや、やっぱり目の前に居たほうが個人的には…
<yuni> 「暗」から「明」に、少しずつ変わってく感じか、通しで読むと。
<u-1> 猫が何を示していて、それが何故主人公の所に現れたのかを考えるともっとよくなるだろうな。