studio Odyssey



Report 2

 あるエルフプレイヤーのレポート。またはそのエルフの別の人格か、それに類するものの書き留めたこと。

01:Session03-04

 Session01,02と、2回のセッションを行い、2回の反省会、1回のレポートを経てのプレイとなったSession03,04であるが、各プレイヤー、及びGMは、格段に前回に比べてオンラインセッションでのプレイに慣れてきたように思える。
 各プレイヤーは反省会の冒頭でも述べている通り、それぞれ、今回のセッションでどのようにプレイしようかと事前に考えて来ていたようだが、それが功を奏しているだろう。そして実際のリプレイを見ると、その目標がうまく達成されている事がわかる。
 GMもまた、前回の反省を生かし、今回のシナリオでは明確な敵と、その敵に対してプレイヤー達が戦いを挑む理由付けを明確に提示している。(最も、それは初期のプロットとは違ったようだが、初期のプロットの方が明確であった気もする)
 全体を通して、前回のレポートのようにオンラインセッションそのものを、細かく分析すべき所は特に見あたらない。今回のレポートでは、よりよくオンラインセッションを展開していくためにどのような事が問題として持ち上がってきたかを、1つずつ検証して行くことにする。

言葉

 TRPGのセッションにおける全ては、言葉によって伝えられる。しかし、オンラインセッションでは、ここでいう「言葉」は、決して発音されない。すべて、「文字」である。当たり前の事であるが、それを意識するのとしないのとでは、大きな差が生まれるだろう。

類義語や同義語

 今回のセッションの冒頭でも現れていたが、日本語は類義語や同義語が数多く存在する。言い回しや「はがのにを」の付け方ひとつで意味が変わってしまう。プレイヤー、及びGMはこの事に十分留意し、「自らの発言した言葉が、どのように相手に伝わるか。また、それは伝えたいことが誤りなく伝わる言葉かどうか」を、特に重要な発言に関しては、十分に考えるべきだろう。
 最も、それは慣れに寄るところも大きいだろうが、普段から曖昧な言葉を使わないように心がけるという事もあるかも知れない。(TRPGがそもそも海外で生まれたという背景を考えれば、比較的容易に納得できる理由だろう)

言葉のニュアンスと省略

 同義語や類義語で気づいた事だが、オンラインセッションでは言葉のニュアンスが伝わらないという問題も、いずれは出てくることだろう。口語では当たり前に使っている「ニュアンスによる表現」だが、文字にすればそれは伝わらない。そのことは、ある程度意識しなければならない。
 ただし、言葉のニュアンスを表現するための手法というものは、プレイヤー間にある程度の共通認識があるのであれば、積極的に使用しても良いだろう。例えばカタカナをうまく使うことで、様々なニュアンスの表現は可能だろうし、句読点の付け方でも、いろいろなニュアンスの表現ができるだろう。(スペース等でもよい)「〜の感じ」と「〜のカンジ」は言葉は同じだが、ニュアンスが違うことが文字からわかる。このような手法をうまく利用することは、オンラインセッションを楽しむ上での、(あれば嬉しい)スキルであると言えよう。
 そして特に、「オンラインセッション」である事を意識して遊ぶのであれば、今回のメルルに殴られるジェダのシーンでGMが使用した顔文字のようなものもよい方法だろう。壁にめり込むドゥアンには笑わせていただいた。
 言葉のニュアンスやプレイヤーの表情がわからない以上、それはわからないものだと切り捨て、新しい表現方法で解決して行くというのはよい方法論である。  ただし、これはプレイヤー間である程度の共通認識がある場合に限られる。今となっては比較的通じることだろうが、(笑)の意味で使用されるw等は、わからない人にはまったく意味がわからないし、顔文字等も、わからない人にはまったくわからない。
 ある程度の共通認識。それがプレイヤー間に成り立っているのであれば、積極的にこれらを使用するのは、間違いではない。どの程度まで通じるのかわからない時は、無難な方法で表現するのが適切だろう。逆に伝わらない表現は、場を沈黙させる事にもなりかねないし、プレイを阻害する可能性を秘めているためだ。

ロールプレイ

 キャラクターを演じるという、ロールプレイが、従来型のTRPGとオンラインセッションとでは明らかに違う。その利点と欠点を、前回のレポートに引き続き、今回のセッションで気づいた点を考察する。

ロールプレイという点でのオンライン

 前回のレポートでもすでに触れているが、オンラインという形態は、より突っ込んだロールプレイを可能にするだろう。最も明確な違いを挙げれば、男性プレイヤーが女性キャラクターをロールプレイする際の違和感についてが挙げられる。
 今回のセッションにも女性NPCが登場しているが、プレイヤーたちはその女性キャラクターをロールプレイするGMに、さほどの違和感は覚えていないはずだ。これは姿が見えないオンラインであるからこそ出来ることであり、この利点はオンラインにおける重要な要素であろう。
 GMは今回のセッション直後の反省会において、「プレイヤーに恋愛関係の話を振っても面白い結果にならないだろう」というような話をしていた。だが、これはともすれば従来のTRPGの形態ではそうだったかも知れないが、オンラインではどうだろうか。最も、パーティを組んで冒険をするという事がメインのシステムでは、「なれ合って」いかなければならないという問題もあり、なかなかうまくはいかないだろう。だが、長期のキャンペーンを見ていくのであれば、後半にさしかかった辺りからならば、パーティ内でのこのようなストーリーも不可能ではないのではなかろうか。
 オンラインセッションは前回のレポートでも述べている通り、顔が見えない分、かなり突っ込んだロールプレイが可能である。
 さらにセッションに参加するプレイヤー間で、その「ロールプレイ」行為をお互いに高めていこうとするのであれば、さらなるロールプレイが期待できるはずだ。
 この部分は、今後もセッションを通し、確認して行きたいところである。

身振りを交えた言葉

 当セッションを今回まで続けてきた所で、プレイヤーにも多少、心のゆとりが生まれているように思える。各々のロールプレイに関してもそうであるし、セッションに対しての姿勢も同様である。
 余裕が生まれてきた所で、少し突っ込んで、ロールプレイの他に、各キャラクターの身振りや動きを付け加えて行く事を考えてもよいだろう。
 オンラインでは当然のことながら、身振りは伝わらない。実際のセッションであれば、身振り手振りを交えて会話を行い、セッションを進めていく事が出来るが、オンラインでは文字としてタイプしない限りは、決してそれは伝わらない。プレイヤーは自らのキャラクターがどう動きその言葉を発しているのか、その辺りを意識し、余裕があればそれを交えて発言していくと良いだろう。
 簡単な方法としては()でくくり、発言と一緒にしてしまうのが良いだろう。ソアラがフレドリックの説得シーンで、この方法を少し試している。

(とてとてー)「おまたせしましたー」
がくがくがくがくがくがく…(青ざめている
(ひょいと)「この前も、なんか、ラルクさんの名前呼んでたね」

 もちろん、このような方法ではなく、普通に、

ウィル:「食材調達か、一体どんな食材を持ってくるんだ」と、少女の後ろからひょいと。
ドゥアン:「それは冒険者の店の店主を通した依頼なのかの?」と食器を持ったまま席を移ろう。

 と言うようにしても良いだろう。
 ただし、これらは余裕があればであって、発言を優先するのであれば、あえて入れる必要はない。

明確な行動と、「」の責任

 今回のセッションで私が気づいた、あるひとつの大きな事がある。
 それはこのシーンである。

GM:「切り落とせばいい、お前達に見逃すつもりが無いなら、同じことだからな」
ジェダ:じゃあ一本落とせ、かまう事は無い。
ウィル:うむ、落とせ。
ジェダ:もはや情にかまけている時間は無いw
ジニー:よし落とそう、ざくっと。
ソアラ:じゃあ、本気で斬るね。すぱ。斬ったよ。

 「指が60本」という、どうにも危険なシーンであるが、このシーンから読み取る事は多い。
 このシーン、「明確な行動」という観点から行くと、ソアラが明確な行動を行っている。ジニーの、「ざくっと」も、とらえ方によっては行動を表現する言葉と取れるだろう。だが、「明確であるか」という観点から言えば、明確であるとは言いにくい。「ざくっと」が過去形の意味であれば、「『ざく』っと」で、行為になる。だが、ここでは判断がつきにくい、曖昧な表現である。
 自らの行為を明確に他者(プレイヤーやGM)に伝えるには、曖昧に捕らえられがちな表現は避け、他に捕らえようのない言葉を用いるのが望ましいだろう。
 次いで、明確な行動という点に関してであるが、今回のセッションでは、キャラクターの発言は「」でくくるというルールを使用している。(必ずしもGMは「」でくくられた言葉しかNPCに伝わらないとは、進行の関係上していないが)
 このルールを適用する以上、プレイヤーは「」を明確に使い分けるべきだろう。特にセッション内で問題となったような事は、今のところないが、NPCのみならず、プレイヤーキャラクター間でも今後、「話しているか話していないか」の問題が出てくる可能性が強い。そのことをふまえ、ある程度意識をして使い分けるようにしていくべきだろう。そして「」で発言された言葉はつまり、声に出して言ったのと他ならないのであるから、NPCを前にして「」で発言した言葉は、相手の耳に入ると意識しなければならない。
 例えば、パーティ内で「」なし会話でもめている時、NPCに対して誰かが「」で発言すれば、それはNPCの耳に間違いなく届くのである。プレイヤーはその際、自分の「」発言に対して、ある程度の責任を負うべきだろう。(わざとそうする、というのも、悪くはないが)

冷静さとロールプレイ

ジニー:ちょっと思考凍り付いてたからなぁ。ロールプレイするべきだったなーと反省。
ソアラ:思考が停止するというのも、正しいロールプレイな気もしなくもない。

 アルスが死んでしまった時のプレイに対してである。
 私個人としては、「思考が停止する」というのは正しいロールプレイであると思う。目の前で誰かが凄惨な(ウーンズは切り裂きの魔法なので、凄惨だろう)死に方をしてしまったのを目の当たりにしたとしたら、普通の人間ならは思考が凍り付いてもおかしくはない。(冒険者はそうではないというのならば、話は別だが)
 その中で、思考が途切れ、冷静な判断力を欠くというのは、ロールプレイ的観点から言えば、正しい。
 ただし、これはあくまでゲームである。
 この後のシーンで、ルール的な間違いやミスが目立つ。冷静さを欠いているのである。
 ロールプレイは重要だ。だが、ゲームである以上、どこかに冷静さを持っていなければならない。このことは肝に銘じておく必要があるだろう。今回はいい教訓になったと思われる。
 だが、ひとつ。
 だからと言って、目の前で人が死んでしまう場面に出くわしても、何食わぬ冷静さのままプレイを続行するというのは、私はロールプレイという観点において、正しいとは思えない。このことも肝に銘じておく必要があるだろう。

面白さとロールプレイのトレードオフ

アルス:あのラルクが出てきたシーンでは、ウィルが悪ノリしすぎだああああああああ!

 ラルクを取り囲んで、「動くな」と言うシーンである。たしかに、アルスの言うとおり、普通の人が聞いたら、悲鳴を上げてもおかしくない所である。
 この部分は、セッションの方向性等によって線引きをするべきだろう。私個人の意見としては、この辺りはまだ、面白さとロールプレイのトレードオフで許される範囲であろう。リアルに、あたかもその世界を生きている一人の人間のようにプレイをすることも、当然可能であるし、そのようなプレイを求めるプレイヤーも確かにいる。その事は十分に留意した上で、どのレベルまで、面白さとロールプレイのトレードオフが許されるのか、セッション毎に、見極めていくべきだろう。(それは「ルール毎に」ではない)
 個人的な意見であるが、このメンバーではハードファンタジーは不可能だろうと、私は思っている。このレベルくらいは(恐らく、もう3,4歩は踏み外すだろうが…)、面白さとロールプレイのトレードオフが許される範囲だろうと思っている。(というより、すでにセッション1で大いに踏み外している気も、しないでもない)

プレイヤー

 ロールプレイではない、プレイヤー自身について、従来型セッションとオンラインとの違いについて考察する。

タイピング速度によるキャラクターの位置づけ

 前回のレポートで、私は「オンラインセッションに置いてのGM、及びキャラクターの配置は、タイピング速度にして『GM>プレイヤー内での中心となる人物>その他のプレイヤー』であろう」と書いた。
 だが、この認識は改める必要があるかも知れない。
 確かにこのバランスは重要である。
 だが、プレイヤーの内の中心となる人物が、イコール、パーティ内での決定権を持つという図式には、あえてしない方がよいのかも知れないと、今回のセッションで考えたのである。
 今回のセッションで、このパーティのリーダーはラゼットと決定した。
 ラゼットのプレイヤーは、その他のプレイヤーに比べれば、明らかに発言数が少ない。重要な場所では話しているし、ストーリーにも絡んではいるのだが、タイピング速度の問題もあって、いかんせん、ジェダやソアラの会話の速度には、ついて行けていない。
 オンラインセッションは、従来のセッションに比べて、より発言に対してシビアである。従来型のセッションであれば、姿がすぐ隣に見えるので、プレイヤーたち(含GM)は発言の少ないプレイヤーの身振りや挙動から発言を促したり、読み取る事が出来る。だが、オンラインセッションではそれは物理的に不可能である。
 今回のセッションで気づいた事であるが、そのような(タイピング速度が遅い等の理由から、発言力が弱くなりがちな)プレイヤーに、あえて大きめの役割を持たすのである。今回のセッションのように、導入部分ででもいいし、パーティのリーダーを任せるなどという方法もいいだろう。役割が明確に与えられれば、その共通認識の元、プレイヤー達は発言を促すだろうし、発言を待つようにもなるだろう。
 必ずしも、「話す」がイコール「参加する」であるとは思わないが、「参加しやすくするための方法」というものを考えるのは、従来型セッションに比べ、オンラインの方が、より重要であろう。オンラインセッションで、「発言がない」事ほど、面白くない(そして待ち時間が長く感じられる)ものはないのだから。

展開

 オンラインセッションでの最も大きな問題。「時間」について、トレードオフを含めた、「展開」という観点から考察する。

スルー推奨(¥ルールの廃止

 前回のレポートに、「読んでもらいたい発言に¥マーク」というような提案をしたが、今回のセッションでは事前に告知をしていなかったこともあって、一度も使われていない。
 が、私は今回のセッションで、この逆の方法も有るのではないかと考えた。それが「スルー推奨」である。
 スルー推奨は、簡単である。発言の最後あたりに「(スルー推奨」と書くか、「(スルーで」と書けばよい。過ぎてしまった話題で、ほじくり返して発言したい時や、せっかくタイプしたのに、流されてしまった時などに使えるだろう。文字列の最後に付け足すだけなので、これは使いやすい。ボケに対する突っ込みや、くだらない脱線などの時に「(スルーで」とつけておけば、絡まなくてもよいという明確な意思表示がメンバー全てに対して取れるので、「聞いて欲しい」事を意識して発言したり、意識して読むよりも楽だろう。
 この方法は、今後も大いに脱線の多いこのセッションでは、活躍するはずだ。

念話

 反省会でも話題に昇っていたが、このセッションで言うところの「念話」、つまり、その場に居合わせていないプレイヤーのNPC等(時にその場に居合わせたプレイヤーキャラクターの行動)への干渉についての是非であるが、私個人の意見としては、オンラインセッションでは、これを特に制限するべきではないと思われる。
 まず、最も大きな理由として、発言待ちの状態を、とにかく短くするためである。オンラインセッションにおいて、待ちの姿勢というのは、従来型のそれに比べて、感覚的にかなり長く感じるのである。そのため、出来る限りセッションに(どのような形であれ)参加していられるようにした方が、プレイヤーのモチベーションを保つことができるからだ。
 ただし、これはロールプレイという観点において考えれば、決してよい事ではない。発言力のあるプレイヤーがその場に居合わせていなかったとき、そのプレイヤーの発言によって、その場に居たプレイヤー(つまりはキャラクター)の判断が阻害される可能性がある。これはロールプレイを考えたとき、決してよい事ではない。
 念話はある程度は、あった方がよいだろう。
 だが、今回の反省会でGMが言っているように、その場の判断はその場に居合わせた者たちがするべきである。荒い言い方であるが、外野の意見は、「あいつならこう考えるだろう」程度でよいだろう。最終的な結論は、プレイヤーが、自らのキャラクターならどうするかと考えて行動すべきだ。どうしても判断のつかない場合は、判断かつかないというプレイをするようにとGMも言っているように、それもひとつのロールプレイであろう。
 その場に居合わせていないキャラクターの発言が、その場に居合わせた誰もが考えつかないような意見で、その行動が、「あきらかにその場にいる者達の取る行動ではない」と判断できる時、GMはその場に居ないことを発言者に伝え、指導をしても良いだろう。プレイヤーの方から、それとなく言ってもいい。GMから言われるよりも、プレイヤーから言われる方が、プレイヤーも納得する事だろう。「それは思いついたけど、その場にいないから言わなかった」というように言ってもよい。
 今回のセッションでは、プレイヤーの皆に、「最終的な決定は、その場に居合わせた者がする」と言うことで確約を取りたいと私は考えている。皆のロールプレイを出来る限り尊重するためだ。たとえそれが「パーティの総意」と異なっていたとしても、その場に居合わせたキャラクターは、自らの考える通りに決定してもらいたい。プレイヤーたちはそれを尊重し、そこからさらに一歩踏み込んでどうするかと考え、行動してもらいたい。
 もちろん、その決定を最終的に下したプレイヤーは、その行動に対して、ある程度の責任を負うべきである。(ここで言う責任は、キャラクターが負う責任という意味ではなく、セッションに対しての、プレイヤーの責任であるので、間違えないようにしてもらいたい)

時間的制約と形態

 オンラインセッションで、とかく問題となるのが時間である。
 すでに幾度か触れているように、オンラインセッションは従来型のセッションと比べ、時間的な制約が緩い。が、やはりそれは避けて通れない問題である。
 タイピングによって全てが構成されるチャットでのオンラインセッションは、従来型のそれに比べて展開が遅い。これは、もはやどうにも回避不可能な問題であろう。プレイヤーの全てが市販のタイピング練習ソフトの全てを、楽々とクリアできるようなレベルの猛者たちの集まりであれば別だが(そして、それはそれで見てみたいが)、そのような事はまずないので、この部分はプレイヤー間の同意(または雰囲気)の元、シナリオの方で調整するしかないだろう。
 思うに、前回のレポートで触れたキャラクターを遊ぶタイプのシナリオ(拡散型プレイとか、分散型などという言葉の方が一般的だが)は、オンラインセッションには向かない。オンラインセッションでは、確実にシナリオを遊ぶタイプ(協調型のこと)の方がよい。
 拡散型は不可能であるとは言わないが、恐らくそれは、従来型のセッションでもそれが失敗しやすかった事から考えるに、オンラインでは、かなりの高い確率で失敗すると思われる。
 この事から、オンラインセッションはルールを選ぶと考えられる。
 今回使用しているソードワールドRPGでもオンラインセッションは十分に可能であるが(ルールも簡単だし、協調型のプレイが根幹にあるので)、だが、初心者にはアリアンロッドのような、「キャラクターそのもの」や「シナリオそのもの」までルールの中で明確に決められているものの方が、オンラインセッションには向いているかも知れない。そのルールを使用する段階で、すでに協調型プレイに参加する事を暗黙の内に承認しているとも言えるからだ。
 オンラインセッションでのシナリオは、基本的に協調型の形をとる方がよい。基本的にこのキャンペーンでも、この形を今後も取るだろう。(GM次第だが)

誘導とフリースタイルのトレードオフ

 協調型のプレイにおいて、最も問題となるのが、誘導とフリースタイルのトレードオフだ。
 こればかりは、GMの振れ幅の問題であるから一概には言えないが、オンラインセッションでは、あまり振れ幅を大きく取らない方がよいだろう。早めに誘導をかけておくべきだ。なぜならば、会話ではなく、発言によって成立する形態であるため、プレイヤーはGMが「発言をタイプしている間」を、待ってはくれないのである。(まったくわからないからだ)
 言うなければ、GMは一対多で戦っているようなものだ。少しズレはじめているなと思い始めたら、早めに修正をかけるようにした方がよい。発言をタイプしている間に、劇的に状況を変えられてしまう可能性もある。そして変えられた状況に対応しようとタイプしている間に、また状況が進み…という、悲劇のスパイラルに陥る可能性も、決してゼロではない。
 早めの誘導というのは、時間的な問題も含め、オンラインセッションでは重要な要素となろう。そしてプレイヤーはその事を頭に置き、協調を心がけるべきである。もちろん、ある程度は「GMの誘導に乗らない」事も大事ではある。誘導とフリースタイルのトレードオフは、セッションを重ねる中で、その参加プレイヤーとGMとの間ですりあわされて行くだろうが、ルール側からこれを制限(または補強)するものがあれば、取り入れるのもよいと思われる。

今回のキャンペーンに対して

 今回までのセッションの中で、今キャンペーンに対して(つまり、オンラインセッションという形態そのものへの考察ではない)気づいた事を考える。

TRPGのドラマ性

 今回のセッションで、ウィルの妹が登場した。
 しかも、明らかな敵としてである。
 さて、今後のキャンペーンでこれがどのように展開していくのか気になる所であるが、この部分、キャンペーンそのもの、と言うだけでなく、オンラインセッションという部分から考えても、キーとなるだろう。
 すでに何度も挙げているように、オンラインセッションでは従来のそれよりも、より突っ込んだロールプレイが可能だ。そのような状況の中でキャンペーンシナリオの中心的なこのストーリーの縦糸を、どのようにセッション参加者たちがプレイしていくのが、実に楽しみである。先に書いてきた内容も、この事が今後セッション全体に与えるであろう影響を考慮した上で書いているが、はたしてオンラインセッションは従来型のセッションでは難しかった「物語性」を何処まで高めることができるのか。
 私の個人的な意見であるが、TRPGのセッションに参加するプレイヤーの多くは、TRPGに「キャラクターへのドラマ性」を求める傾向にある。確かに小説等のストーリーの多くは、キャラクタードラマである事が多いので、それに慣れ親しんでいるプレイヤーたちは(リプレイ等が文字のみで書かれる事からも)、同じようなドラマを求めがちなのだろう。
 従来型のTRPGでは、キャラクタードラマは、私としてはあまり成功しないと思っている。従来型のセッションでは、キャラクターのドラマよりも、シナリオそのものにドラマ性を持たせた方がよい結果を生む。オンラインであっても、その部分は恐らく変わらないだろうが、オンラインであるからこそ、「キャラクタードラマ」が成功する可能性も、従来型のそれに比べて、格段に高くなるのではないだろうか。
 今後、この部分は十分に考察し、セッションの中で私もさまざまな手法を試してみようと考えている。

状況説明

 状況説明に関しての私の意見は、すでに今回の反省会で書いたので割愛する。
 今回のセッションで私が「そうか!」と唸ったすばらしい状況説明は、ガスト邸の見取り図である。
 オンラインセッションではリアルタイムに絵を描いて状況を伝えることが困難である事は言うまでもないが、困難であるこの事をどう解決するかという部分で、「初めからわかっていればよい」としたGMの方法は、私にとってコロンブスの卵であった。
 これは想像だが、今回のセッションで邸探索をさせるとことを考えたGMは、その後にどのように伝えればわかりやすいかを考えたと思われる。いくつかの方法を考え、その中には恐らく、「リアルタイムに伝えるにはどうするか」という考えもあったはずだ。が、それが困難であると判断した後、GMはストーリーの方でそれを解決しようと試みたのだろう。
 反省会でGMが触れているが、GMの筋書きでは、ラルクはガスト邸に連れて行かれ、そこでメルルが捕らえられた事を知り、冒険者たちに救出を依頼するという流れであったと言う。つまり、ラルクは依頼の際に「邸の見取り図」を描いてみせるという流れにするつもりだったのだ。「自分に出来る事はこれだけですが」と言うような台詞と共に見取り図を出すような話の流れで、「リアルタイムに絵で状況を伝える」という困難な問題を、「ストーリー」によって解決したのである。そしてその解決方法は、ストーリーとしても美しく、すばらしい方法であったと言えよう。
 もっとも、プレイヤーがその流れに乗らなかった事に関しては…まぁ、別の物語である。
 この方法はそう何度も使えるものではないが、オンラインセッションでのグラフィカルな状況説明の方法のひとつとして(特に複雑なダンジョンなどで)、有効な手段であろう。

オープンダイス

 今回のセッションから、GMがダイス目をオープンにするかどうかは、その場の判断となっているが、恐らくプレイヤーのほとんどは気にしていない(というか、気づいていない)だろう。
 オンラインセッションは、オープンダイスにする必要はほぼないと私は考えている。そもそも、従来型のセッションと違い、オンラインではGMがダイスを実際に振ったかどうかなど、判断できないからだ。(見えないから)
 従来型のセッションでオープンダイスが流行ったのは、単に「隠れてダイスを振るGMが見えるので、それに対して不信感がある」というだけのことだと私は考えている。(見えるから)
 公平性ではなく、気持ちの問題であるが、「見えているのに教えてくれない」と「振ったかどうかもわからない」の、心理的な差だ。そして「振ったかどうかわからない」状態で、「行為が失敗した」時と、「見えているのに教えてくれない」時の「行為が失敗した」時の心理的な差を考えてみて欲しい。
 私が思うに、オープンダイスには(私が、結局出目をそのまま伝えるからかも知れないが)それ以上の意味はあまりない。
 よって、オンラインセッションでは、わざわざオープンダイスにする必要はないだろう。
 極論を言えば、ダイスを振らずとも、頭の中でGMが「じゃあ、難易度4で、7を振った事にして、11にするか」と考えて「失敗した」と告げても、プレイヤーには「ダイスがいくつだったか」を確認する術はないのだから。
 「出目いくつだったの?」「7だよ」
 一応、公平性という意味で、私は乱数を表にしておくというのをオススメするが、毎回その場で振るというのも、GMがモニターのこちらでにやにやできる楽しみのひとつもでもあることも、付け加えておく。(私は非戦闘行為に関してはそうしていた)

リザレクションのロール

 今回のラスト。死んでしまったアルスをリザレクションで蘇らせる時の成功ロールをGMが裏でこっそり振るかどうかと言うシーンがあった。ここは判断の難しい所である。オンラインセッションでは、ダイス目をオープンにする必要がないと言っても、だ。
 やはりこの段階で死んでしまうというのは、さすがに辛い。しかも、アルスは初登場である。
 GMも、隠れて振ったとしても1ゾロだったら「1ゾロだ」と言って流しただろう。しかし、それでなければ、恐らく「成功した」と言ったと思われる。少なくとも私がGMなら、そうする。
 ここは非常に難しい所である。ダイスをオープンにしないという方法の他に、アルス本人に振らせるというのもひとつの方法であるが、ダイスを振らせる以上、GMは常に裏の目を考えなければならない。そしてオープンでなく、裏で振る以上「出目を操作してないか?」という嫌疑を持たれることも意識しなければならない。(このセッションに参加しているプレイヤーも、それは思いはするだろうが、恐らく口にはしないだろう。が、少なくともリプレイを読んでいる読者のごく一部から、思われる可能性はある)
 結局、最終的にダイスはオープンで振られることとなった。
 これにより、プレイヤー、及びリプレイの読み手に対しても公平性が確保され、リプレイという観点から言えば、ウィルの「何故かよく出るクリティカル」の信憑性も増したことだろう。(少なくとも、チャット内に表示された出目の操作は、間違いがあったとき以外は一切行っていない。ちなみに、間違いというのは、気づかれずに状況が進んでしまった足し算の間違いだけで、往々にしてどこかの錯乱のロールで1大きかったり少なかったりする時の事だ)
 なお、ここで「結果として問題なかった」ので、もう一つ白状しておくが、リプレイに掲載されているリザレクションの達成値は、「正しくない」。
 リプレイの中では1ゾロ以外は失敗しないと言われている達成値は、計算すると「−1」だが、正確には、「2」である。何故かと言えば、「儀式」魔法に参加して達成値を下げることが出来るのは、「その呪文を使える者」で+1で、「その呪文を使えない者」である場合は、「10人で+1」なのである。つまり、ラゼット、ドゥアン、ムルガスの+3は計算できない。
 どちらにしても結果的には1ゾロ以外は失敗しないのだが、あえてリプレイ内でも突っ込んではいない。私の中での「保険」であったことは、白状しておく。(達成値を下げることに躍起で、このレポートのために再計算するまで、最終的に2で、結局1ゾロ以外では失敗しなかったとは、思ってもみなかったのだ)
 なお、「クリティカルしたウーンズで、死体のボーナス+6って取れるのか?」と斜に見る事も出来るが、「だって、グイズノーだってクリティカルしたエネルギーボルトで復活するとき、ボーナスもらってるじゃん」と言うことで逃げさせていただく。

 今回の反省会で設定を作って出したけど、今後のセッションで、うまくロールプレイしていけるのかなぁ…