さて、ベンチ。
いつものように、みんなが集まって、だべっています。
ルキノはその面子を見て、「にやぁ…」
rukino:「装備の移動を頼むのです。
言いました。
他にもいますが、
彼女の目には映りません。
なぜならば…
はい、最後のアイテムに注目。
ダイヤの指輪は
結婚式を挙げるために、必要なアイテムです。
*3
appi:「たしかに、おあずかりしました。
と、アピ。
rukino:「んじゃー、いぬがくると思うので、いぬに渡してください。
appi:「わかりました。
で。
ベンチにやってきたいぬこと、すていぬに…
*4
普通に渡すアピ。
appi:「はい?
小首を傾げて、聞き返します。
appi:「それで全部ですよね?
suteinu:「ルキノっち…アピさんは予想以上に純真で、いぬ的には、どうしようです…
appi:「はい?
suteinu:「えーと、つまりアレですよ。
すていぬはアピに向かって言います。
suteinu:「これは、プレゼントなのですよ。はい。
appi:「そうなのですか?
suteinu:「そうなのです。だから、貰ってくれないと、困るのです!
いぬとアピの話を聞きながら、ベンチの周りにいた皆は、「ハテナ?」と首を傾げます。
heriosu:「なんの話してるんだろう…
*5
Abd:「大方、装備移動の手数料を渡して、突っ返されたんでしょう。
suteinu:「フ…
heriosu:「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?
Abd:「指輪!?
makie:「まさか、スピさん!?
jeers:「それはつまり、覚悟を決めたと言う事かあぁぁぁ!?
*6
お前等はわかってくれると思ってた。
appi:「はい?
当事者、わかってないけど!?
suteinu:「そんなわけで、貰ってくれないと、困るのです。
appi:「よ、よくはわかりませが、それでは、改めて頂いて…
と、アピが立ち上がろうとしたとき…
heriosu:「
ズサー!!
指輪強奪事件発生。
suteinu:「マテコラー!!
heriosu:「ふはははは!捕まえてみろー!!
suteinu:「それをアピさんに渡さなければ、いぬがルキノっちに怒られるんだぁぁぁぁぁぁ!!
appi:「?
そんなこんなで、アピの道具袋の中に、ダイヤの指輪がその数分後には、入る事になったのでした。
rukino:「むふ…
spit:「んだよ、キモイな…
ベンチに向かうスピットの前に、ぴょいと姿を現したのはルキノです。
rukino:「このこのこの〜感謝しろよ〜。
と、肘でぐりぐりとスピットの胸をつくルキノ。に、スピットはセージの服の背中から伸びている輪っかを引っ張ります。
rukino:「あああああ!?引っ張るなー!?
spit:「お前がにやにやしている時は、良くないときだ。
rukino:「私がにやにやしてる事なんて、そうそうないじゃん。
spit:「だからきっと、良くない事だ。
うむりと、スピットは大仰にうなずきました。
即座に、ルキノは返します。
rukino:「いいことだよ。
spit:「ほう?何が?
rukino:「アピさんに、婚約指輪を渡しておいた。
spit:「ほう…
spit:「
誰との?
rukino:「このこのこの〜。
spit:「…
spit:「
今日がお前の命日か。
rukino:「
死ぬの!?
奴はやる気まんまんですが。
ルキノはちょいと口をとがらせて言いました。
rukino:「だって、こんくらいのお膳立てでもしないと、アピさんと結婚なんてしなそーじゃん。
spit:「テメーが俺の人生決めんじゃねぇ。
rukino:「いーじゃんかー。決めさせろよー。つーか、決定事項じゃんかー。
spit:「俺の生き方は、俺が決める。
ちょいと帽子をかぶり直して、スピットは歩き出しながら言いました。
rukino:「ふーん…
ルキノはついと視線をはずして、言いました。
rukino:「じゃー、アピさんと結婚しないんだ。
spit:「…
肩越しに振り向いたスピットの視線の先で、ルキノがにやりと笑っていました。
てくてく。
スピットがベンチに向かうと…
ribbean:「スピさん!!
と、リビアン。
だっと駆け寄ってくると、周囲をはばかるようにして、
ribbean:「…これ、いろいろと入り用でしょうから。
spit:「…
手渡されたのは、ずっしりと重い小袋です。
中身の想像がなんとなーくついて、スピットは袋を開けてみました。
spit:「…いくら入ってんだ?
ribbean:「
2,000,000ゼニーです。*7
ベンチって、いい人達がそろってるね。
spit:「リビアン…
ribbean:「返済は、おいおいで結構ですから。
びっと親指を立てた右手を突き出すリビアンに向かって、スピットは言いました。
突き出す手には、スケルワーカーカードがありました。
spit:「いくらで買い取る?
ribbean:「じゃあ、2Mで。
*8
spit:「よし、持っていけ。
heriosu:「って、スピさん、スケワカなんて、いつの間に…
*9
spit:「んー。
窃盗品!?
ともあれ…
eve:「ほほーぅ。
にやにやと、イブが笑っています。
eve:「ほっほーう。ずいぶんと、大金を集めているね、スピ。
spit:「その顔は、『すべて知っているぞ』という顔だな。
eve:「
うん。
spit:「…
eve:「
アピ、呼んできてあげよう。
spit:「ああああああぁぁ!?別に、良いです良いです!!
ribbean:「速度増加!!
eve:「ありがと、リビくん。
で。
appi:「姉に呼ばれて来たのですが、なぜみなさんは壁の向こうにいるのでしょう?
spit:「…
spit:「
人の人生を玩具にして楽しんでるんだ。
ずいぶんやさぐれたご意見です。
ribbean:「スピさん、我々は、壁ですよ。
makie:「壁です!
heriosu:「(ジー…
Sylphienne:「な、なにか、こっちに来ないといけない雰囲気でしたので…
spit:「何をさせたいんだ、お前等は…
ribbean:「あー、もー!!
spit:「
Wisかよ!?
jeers:「根回ししてるの誰だー?
ribbean:「ダレダー?
お前な。
spit:「Wisとか、すんな。
ribbean:「壁、僕らは壁…
Wisその2。
spit:「お前等と言う奴らは…
はぁとため息を吐くスピット。
アピはちょっと小首を傾げる風にして、
いや、貴方は真似なくていいと思います。
spit:「そうか!
はたと気づいて、ぽんっと膝を打って、スピットは言いました。
spit:「その手があったな、アピ。
ribbean:「
ニゲタラコロス…
heriosu:「
チノハテマデモ…
spit:「いっそ死なせてくれ…
makie:「ダメです。
Sylphienne:「アピさん、スピットさんが、お話があるそうですよー。
appi:「そうなんですか?
spit:「四面楚歌なんですか?
腹をくくれ。
spit:「あー…
ちょいと帽子を直して、スピットは小さな声で、ぼそりと言いました。
spit:「その、なんだ…
appi:「あ…
ちょっとびっくりした風に目を丸くして、アピ。
appi:「は、はい…
そして、言いました。
appi:「あの…そのー…
spit:「ん?
appi:「えーっと…
appi:「スピさんの分は、あるのですか?
おまいはシアワセモンだなぁ…
今すぐこの男を殺せ。
spit:「ナレーション、うるせぇ。
お前は今、すべての読者を敵に回そうとしている。
spit:「じゃぁ、載せんな。
それとこれとは話が別。
jeers:「ナレーションの中の人も、壁でお願いします。
makie:「いい感じなのを、壊してはいけません!!
スピットは言いました。
spit:「俺の台詞!?
と。
見守る壁の連中が、ぽそり。
heriosu:「準備はしてたんだ…
ribbean:「なにげに、スケワカとか持ってたりもしたしなぁ…
makie:「タイミングを待っていたんですね!!
spit:「…まぁ、あれだ。
軽く息を吐いて、スピットは気を取り直すようにして、言いました。
言葉を選んでます。
それはさっき聞いただろがぁぁぁぁぁぁ!?
appi:「そうですねー。
アピは笑いながら言います。
spit:「うむー。
と、そのじれったい会話にしびれを切らしたのか、壁の向こうにいた林檎がたたたっとベンチ前に走ってくると…
ringo:「ぐりふぉん!!あなたに逢いたいっ!!
と、結婚指輪を手に叫びました。
ふわり、風と共に淡い光が立ち上ります。すると、その場所にふっと姿を現したのは、林檎と同じ結婚指輪を持った、グリフォンさんです。
ringo:「結婚スキル、たのしーよー。
griffon:「いつでもデキルヨー。
*10
何がだ。
spit:「…まぁ。
ribbean:「あほっぽいとか、言うなー!!
heriosu:「あほっぽいかも…
ribbean:「馬鹿!シルさんが買い物に出かけた時なんて、帰りが無料になって、とっても楽なんだぞ!!
Sylphienne:「そ、そうですよぅ!
*11
ribbean:「ただね、正直、
ちょっと恥ずかしいけどね。
Sylphienne:「えっ!?
ribbean:「思いっきり、名前叫ばないといけないし…
Sylphienne:「えっ!? リ、リビアンさん、もしかして、いやいややっていたのですか!?
ribbean:「あ、いや、そうではなく…
Sylphienne:「そ、そうだったんですね…それは…あの…その…
Sylphienne:「
ごめんなさいでした!
だっと駆け出すシルさん。
ribbean:「ああぁぁあ!? シルさんッ!?
追うリビアン。
傍観。
スピットはふぅとため息をついて、言いました。
spit:「まぁ、手におえねぇ奴らも一杯いるし…
壁の向こうでは、メロドラマ風展開の行方を気にしているベンチメンバー。
spit:「俺一人だと、ベンチも流石にそろそろ人数増えて大変だし…
壁のこちらでは林檎とグリフォンさんが結婚スキルを連発して遊んでいる所に、ヘリオスが駆けてきて、「死ね!バカップル!!」
スピットはちょいと帽子の位置を直して口許を曲げると、言いました。
spit:「俺一人でも、大変だし…
出来るだけ軽い感じで。
いつもの、ベンチの無駄話のいっこみたいな感じで。
言えればいいなぁと、思いながら。
heriosu:ringo:「
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
appi:「あの…えと…
makie:「OKでたぁああああああああ!?
griffon:「膳は急げだ!!
heriosu:「膳!?
griffon:「食べ(ry
ribbean:「おめでとー!
壁向こうにいた連中が、一斉に駆け出してきます。
appi:「あの、私も一人では何もできませんが…
makie:「あははは、照れてる照れてる。
spit:「照れてない。
Sylphienne:「照れ隠しですね。
spit:「照れてない。
appi:「てれてれです。
ribbean:「このこの〜。
ぐりぐりと、肘を押しつけるリビアンに、スピットは口を曲げました。
spit:「さて、じゃあ…
マテコラ。
こういうときの結束力はとてもいい感じです。
アンクルスネアにかかったスピットを見ながら、リビアンが続けました。
ribbean:「でもよかったですよ。スピさんが腹をくくってくれて。
spit:「ん?
ribbean:「いつぞやのように、また逃げるかと…
*12
spit:「ああ…
ぽりぽりと鼻の頭を掻いて、スピット。
あったらどうだったのかと、
小一時間問いつめたい。
appi:「えと、それで、スピさん。
spit:「ん?
いつもの位置で言うアピに、スピットは帽子を直しながら振り向きます。
appi:「他のアイテムはそろっているのでしょうか?
spit:「…
spit:「いや、何にも。
殺れ。
ribbean:「アピさん、早めに揃えないと、スピさん、お金使っちゃいますよ?
appi:「あはは。そうかも知れません。
spit:「お前ら、俺をなんだとおもってんだ…
makie:「
浪費家?
spit:「心外だぞ、コラ。
*13
ともあれ、スピットとアピはそのまま、婚礼用品売り場へと向かう事に。
spit:「なぁ…
スピットはギルドメンバーに聞こえる声で言います。
spit:「ネタだーと、追いかける人はいないの?
heriosu:「
馬に蹴られたくないので。
makie:「二人きりで、ゆっくりしてきてください!!
spit:「ちぇーっ。
spit:「えっと、タキシードとウェディングドレスと、ヴェールとブーケと…
婚礼用品売り場の売り物を見ながら、「うむむ…」とスピット。
spit:「意外と、高いな…
appi:「あ、でも、ほとんど必要ないかも知れません。
アピは言います。
appi:「ウェディングドレスも、以前に頂いたものがありますし…ブーケもあったような…
*14
spit:「あー、言われてみればあったかもしれん。
とりあえずタキシードを購入するスピット。
appi:「あとは、スピさんの分のダイヤの指輪ですね。
spit:「指輪は、モロクだっけか…
appi:「ですね。
そんなこんなで、二人はカプラ転送サービスを使って、モロクに飛びます。
appi:「ありました。
カプラ転送の到着地点のすぐ近く。
宝石商人の前に立って、アピ。
appi:「では、私が買いますね。
spit:「うむ…
む。
ちょっとうらやましい光景。
spit:「…
appi:「スピさん、どうしました?
spit:「ん? んー…
spit:「
柄にもなく、ちょっとどきどきしてみたり?
言うスピットに、アピは笑っていました。
appi:「さて、どうしましょうか。
spit:「誰も追っかけてくれないし…つまらんし…帰るか…
appi:「ですね。
スピットはむぅと口を曲げ、帽子を直しながら言います。
spit:「んじゃ、蝶でもどるか。
appi:「はい。あ…
アピの台詞が終わるよりもはやく、スピットは蝶の羽を使い、プロンテラへと戻ったのでした。
spit:「追っかけてこないなんて、つまらん奴らめ!
heriosu:「あ、おかえりなさーい。
makie:「お散歩、どうでした?
ribbean:「二人の時間を、大切にしてあげたいなーという、気持ちですよ。
spit:「つまらん奴らだ。
むすり、帽子を直しながら、スピットはいつもの位置に座ります。
そして後からやってきたアピも、ちょこんといつもの位置に座って…
spit:「ん?
じーっと自分を見るアピに、スピットは小首を傾げます。
spit:「どした?
聞き返すスピットを、アピはじーっと見ています。
そして、心なしか、ちょっと怒ったような表情です。
spit:「なんだ?
appi:「いえ…ただ…
アピは言いました。
appi:「
スピさんは、やっぱり嘘つきですね。
その表情は、ちょっと怒った時のそれだったのでした。
ribbean:「何をしたー!?
spit:「いやまて、何かした記憶がねぇぞ!?
makie:「婚約者に嘘とは!?
heriosu:「斬りますか?
spit:「まっ…待ってー!?
今にも斬りかからんばかりの皆に、スピットは身構えます。
シルさんが、アピに向かって、聞きました。
Sylphienne:「嘘つきなのですか?
こくり、うなずき、アピはちょっと怒ったようにして言ったのでした。
spit:「あー…
ribbean:「ほほーう?
heriosu:「ああ、覚悟はしていたと、そう言うわけですね。
makie:「覚悟の仕方が、あまのじゃくなだけですね?
にやにやの皆から、ついと視線を逸らし、スピットはぽつり。
spit:「…キノセイだ。
appi:「まぁ、そう言う事にしておきますね。
アピも軽く、笑っていました。
「
ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
高速で駆け込む騎士。
spit:「しかも、いきなり斬りつけられた!?
Ridgel:「何をやっていますか!あなた達ははははは!!
Sylphienne:「お、落ち着いてください。リジェルさん。
Ridgel:「これが落ち着いて、居られますか!!
Ridgel:「そう、それはまさにビデオの巻き戻しのように!!
spit:「無茶な!?
appi:「あはは。
Ridgel:「巻き戻し!巻き戻し!プローポーズシーンの再生希望!!激しく希望!!
spit:「ああ、わかったわかった。
スピットは苦笑して、くるり、アピに向かって振り向きました。
spit:「アピ…
appi:「は、はい。
初夏の風が吹き始めたその日は、ベンチで、ちょっとだけ、何かが変わったような日だったのでした。
*15