プロンテラは、その話で持ちきりです。
「プロンテラの教会で、結婚式が挙げられるんだって!
「しかも、国王自らが式を執り行ってくれて、ウェディングドレスが着られるんだって!
ウンバラという場所への道が開けてからこちら、冒険者たちの間では、ウンバラへの道の話よりも、同時にトリスタン三世が始めたその教会ウェディングの話の方が、多く聞かれたのでした。
*1
そんなプロンテラ。
ベンチ。
へっぽこが、わなわなと…
言いました。
heppoko:「罪深きへっぽこをお許し下さい…
heppoko:「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!
ribbean:「よすんだ、へっぽこー!!
Sylphienne:「へっぽこさん!?
heppoko:「
僻みだ、ばかやろー!!
リビアンとシルさんが、教会でウェディングをやると言うのです。
heppoko:「へっぽこ、ウェディングをぶちこわす役やるー。
Ridgel:「じゃあ、僕、修練の山で『今の俺はお前達を祝福できない』とか言う役。
ribbean:「いや、普通にやらせて?
そんなこんなで、リビアンとシルさんは大聖堂へ。
へっぽこもそれについていきます。
平和だな、ミドカツ王国は。*2
ともあれ、リビアンは結婚コンサルタントに結婚式の挙げ方を聞いています。
へっぽこもそれを暇ーと見ながら、ふと、思いました。「コンサルタントのお話だけ聞いてみようかなー」
heppoko:「あのー…
と、その時でした。
heppoko:「
なになになに!?
突然現れて歌い出したのは、無敵のソロ軍団。
哀愁漂いまくり。*3
ribbean:「えーと、シルさんのフルネームを書かないといけないのか…
Sylphienne:「リビアンさんのフルネームは簡単なのでいいのですが…
heppoko:「シルさんのフルネームはなかなか大変だー。
ともあれ、申し込み完了。
ribbean:「どきどきするねい。
あとは、国王に式を挙げてもらうだけです。
突然、シルさんが困ったような声をあげました。
ribbean:「どったの?
Sylphienne:「ううぅ…
Sylphienne:「
ウェディングドレスを、カートの中に忘れてきてしまいました…
ribbean:「じゃ、取りに行こっか。
Sylphienne:「ううぅぅ〜、すみません〜。
ribbean:「へっぽこ、待ってて。
heppoko:「うい。
とてとてと、二人は大聖堂を後にします。
しばらく後…
Sylphienne:「あれ?
ギルド電波で、シルさんの声が聞こえてきます。
Sylphienne:「も、もしかして…ドレスって、申し込みの時に消えちゃいます?
ribbean:「あ?あ、俺のタキシードもない。
Sylphienne:「指輪もないです…
ribbean:「俺もないや。
Sylphienne:「
あぅぅ〜、はやとちり〜。
へっぽこはおせんべいをぱりぱりと食べながら、メモしておきました。
*4
Sylphienne:「わたし、結婚式になると、何か粗相をしていませんか?
ribbean:「気のせい気のせい。
heppoko:「平和よのぅ〜。
大聖堂に戻ってきたリビアンとシルさんは、国王の前に立ちます。
そっと、国王がリビアンに向かって言いました。
「新郎、リビアンよ。汝、その富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、Sylphienneを愛し、敬い、慰め、助け、その命の限り堅く節操を守ることを誓うか。
ribbean:「はい。
答える声が、大聖堂に響きます。
大聖堂にいた冒険者たちが、その場所に集まり始めていました。
国王は、シルさんに向かって言います。
「新婦、Sylphienneよ。汝、その富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、リビアンを愛し、敬い、慰め、助け、その命の限り堅く節操を守ることを誓うか。
Sylphienne:「はい。
そして、国王は言いました。
「新郎リビアン、新婦Sylphienne。新たなる夫婦の誕生をここに祝福しよう!!
その瞬間、ふたりの身体がぽっと輝き、その姿がタキシードとウェディングドレス姿に変わりました。
一斉に参列者達が、ふたりに向かって言いました。
「おめでとー!!
「おめでとうございますー!!
「おめー!!
祝福する声に、二人は答えました。
ribbean:「ありがとー。
Sylphienne:「ありがとうございます〜。
heppoko:「ではでは、ベンチのみんなに見せびらかせにいくのです!
ribbean:「いこうか〜。
Sylphienne:「はい。
ウェディングドレス姿のシルさんを隣に、リビアンはゆっくりとベンチに向かって歩き出しました。
Ridgel:「…む。
heppoko:「ただいまぁー。
ribbean:「どもー。
Sylphienne:「えへへ〜。
やってきたふたりに、
Ridgel:「きぇぇぇぇぇ!!
eve:「チャージアロー!!
祝福なのか?
Sylphienne:「な、なんですか〜。
Ridgel:「ふふふ…さぁ、血の宴じゃ!!
Kagetsuki:「シルさん、未亡人化計画。
Ridgel:「地獄を見せてやるぜ! きええぇぇぇ!!
heppoko:「らじゃー!!
Sylphienne:「そんなぁ〜。
heppoko:「
てい。
カウントダウン開始。*5
Ridgel:「…へっぽこさん?
heppoko:「あい?
Ridgel:「もしかして、マジにやる気なのですか?
heppoko:「
マジじゃないんですか!?
Ridgel:「爆弾こわせー!!
eve:「破棄破棄!
Kagetsuki:「爆発するぞー。
何が平気なのか?*6
それもどうか。*7
Ridgel:「と言うより…
仕様です。
makie:「およ。
と、AFKから戻ってきた槇恵さん。
makie:「
おおおおおおおおおおぉぉぉぉお!?
makie:「
わりーごがあぁぁあ!?
ribbean:「その物騒なものはしまって。マジで。
*8
と、そこにすていぬがやってきました。
suteinu:「ウェディングドレスですかー。
Sylphienne:「はい〜。
ribbean:「いいだろう。
suteinu:「ふ…
叫ぶな叫ぶな。
ribbean:「まぁ、うらやむ気持ちも、わからないでもないですがね。
suteinu:「遠巻きに指をくわえる私たち。
makie:「うらやましくなんかないぞ。
Liede:「結婚できない人たち。
Ridgel:「がーん。
しばらくそうして、タキシード姿のリビアンと、ウェディングドレス姿のシルさんを
軽くいじって遊んでいたベンチの面々。
スピットもやってきて、みんなでお話をしていると、ふと、リジェルさんが言いました。
Ridgel:「時に…
Ridgel:「スピットさんはいつ結婚式を?
spit:「
何故!?
Ridgel:「え? だって、結婚実装されたし。
spit:「なんでよ?
Ridgel:「エー。
makie:「でも…
ふと、槇恵とんが言います。
makie:「スピさんが結婚したら、
最終回っぽいですね。
spit:「最終回!?
Ridgel:「最終回、いいですね!
ribbean:「最終回は、ベンチに花束とハットが…
タキシード姿から戻ったリビアンが言いました。
ribbean:「薄汚れていると、尚グッド!
spit:「なんか俺、
死んでないか?
Ridgel:「そして、スピットさんは叫ぶのです…
『レイー!!』と。
誰?
ribbean:「いやいや、そういうエンドはよくないですよ。やっぱり、最後はスピさんが旅に出ようとして、それをアピさんが見送る。
Ridgel:「旅立ち系もいいですね。
ribbean:「そして、最後にスピさんはこう言うのです…
ribbean:「
『お前を殺す…』
Ridgel:「それなんてW?
spit:「ガンダムかよ!?
Ridgel:「あ、じゃああれだ!幼いリーデの手を引くアピさんがベンチに現れて…
Ridgel:「
『パパは勇敢に戦ったのよ…』と!
spit:「
なんで俺死にENDなんだよ!?*9
appi:「…なんのお話ですか?
と、ベンチにアピがやってきました。
spit:「お?
Ridgel:「おや。
実演してみる奴ら。
Ridgel:「いきまーす。
ぽとっとハットを落とすリジェルさん。
ずれた。
Ridgel:「もう一度ー!
キター!?
spit:「ばっちりだ!!
Ridgel:「完璧ですね!!
ribbean:「これでOK!!
appi:「…
appi:「えーと…
アピは小首を傾げて、楽しそうなベンチのみんなを見ていました。
ルーンミドカツ王国。
その城前広場。
ポタ広場と呼ばれたその場所の北西に位置するベンチ。
そのベンチを、プロンテラベンチと呼ぶものたちがいました。
「この場所に、いつも集まっていた、仲間達がいたのです」
そう、それはもう昔の話。
プリーストは微笑みます。
よくわからなくて、彼女に手を引かれた幼子は、小首を傾げて彼女を見上げています。
プリーストは優しく彼女に向かって微笑みかけると、そのベンチに視線を戻して、微笑みをたたえた口許のまま、言ったのでした。
「そう…それは、私たちの冒険の物語…」
終わらないから!?*10