ここは砂漠の中にある、あり地獄ダンジョン。
地属性モンスターがたくさんいる、風魔導士のスピットには、ちょっと戦いづらいところです。
spit:「いくぞー!
と、スピット。「おー」と続くのは、ハンターのウィータとマックスです。
spit:「でっでれ〜。
なんですか、それ。
spit:「
!?
spit:「
なんでだ!?
uxi-ta:「違うの?
spit:「違いますっ!
Max:「アコたんにでれでれしすぎて、ヒールをもらえなくなったから、ヒルクリを手に入れようという話じゃ?
spit:「違う!
ヒルクリこと、ヒールクリップ。
クリップというアイテムに、このあり地獄ダンジョンに住むモンスター、ビタタのカードを差すことにより作ることができるアイテムです。
このアイテムは、装備すればアコライトのスキル、ヒールLv1を使うことが出来るようになり、Mage/Wizの間では大変重宝されているアイテムなのでした。ご多分に漏れず、スピットもそのMage/Wiz。そろそろ高レベルのモンスターたちと戦うことも多くなってきて、このヒールクリップが欲しいなぁと思い始めたのでした。
とは言っても、10,000,000zとも言われるそんな高価なアイテムを買うお金があるわけもなく、その日暮らしのスピットは、自力で獲得する以外に道はなかったのでした。
そんなわけで、あり地獄ダンジョンです。
*1
spit:「
…飽きた。
早ッ!?
spit:「つまんなーい!
だだっ子のように叫びながら、辺り構わず念魔法、ソウルストライクをスピットは放ちます。
うじゃうじゃといるアリが、ばったばったとなぎ倒され、しかし、そのアリたちがドロップするアイテムに次から次へとアリが群がり…えんえん、スピットはソウルストライクをうち続けていました。
spit:「たんちょー。
たまに出てくるビタタをソウルストライクで打ち抜きますが、カードはいっこうに出てきません。
uxi-ta:「カードのドロップ率は1/10000とかって言われてるから、出ないよ。
アリを撃ちながら、ウィータ。
Max:「すぐに出たら、10Mzなんて価格つかないし。
spit:「つまらん。
ふんっと鼻を鳴らし、スピットはダンジョンの中を見回しました。
ダンジョンの中には、もくもくとアリやビタタを狩っている人たちがうじゃうじゃといます。しかし、皆一様に何かにとりつかれたような顔をして、無言で狩り続けています。
spit:「
…目が死んでる。
uxi-ta:「あー、あの人、B○Tかなぁ…
Max:「かねぇ…ずーっと壁際、うろうろしてるしねぇ。
呪いと言うことにしましょう。
自縛霊で。
生前、どうしても獲得したかったアイテムか獲得できず、死してなおそのアイテムに執着し、狩り続ける亡霊。
あり地獄ダンジョンには、そんな亡霊がたくさん…
spit:「
自動人形か。
だから、そういうことは言いっこなし!!*2
"hayate":「おやおや、スピットくん。
と、電波がスピットに届きました。
シーフのハヤテさんです。
"hayate":「さっそく、あり地獄ダンジョンで、ビタタ狩りかね?
ヒルクリがあれば、スピットももっと高レベルのダンジョンで生きていけるのではないかという助言をしてくれたのは、ハヤテさんです。
spit:「これは、
罰ですか?
マテ。
"hayate":「
精神修行です。
ヲイ。*3
Ridgel:「まぁ、なかなか出ませんよ。
と、同じく電波で騎士のリジェルさん。
Ridgel:「ただいま、そちらに向かっています。
"hayate":「じゃ、俺も向かうかな。
Farmei:「私も向かい中です。
と、電波に割り込んできたのは、華ちゃんです。
Farmei:「みんなで狩れば、気持ちも晴れますよ〜。
spit:「
ムリ。
きっぱりはっきり。スピットは言いました。
そして、アークワンドで地面になにやら、書きだしました。
spit:「
いーか。ビタタカードの出る確率を1/10000として、このあり地獄ダンジョンにいる敵の比率が、アリ3種、ビタタで、存在比率が1.5:1.5:1.5:1としよう。すると、ビタタ1匹狩る内に得られる経験値は、おおよそで700。カードの出る確率が1/10000とすると、出ない確率は9999/10000。何匹倒すと、確率が50%を下回るかと考えると、乗数で求められるから、(9999/10000)^n。で、約、7000匹で確率は50%を下回る。と、するとこれまでに稼がれる累積経験値は、7000x700=4,879,000。これだけ経験値があると、今レベル62の俺はレベルが70を越える。
spit:「
気が狂う。
っていうか、勝ち組負け組で分類すると、自分、
勝ち組に入る計算なんですね、スピットさん。
*4
uxi-ta:「理屈だ…
Max:「レアは理屈じゃないよ〜。
spit:「俺は理屈で生きてる、
魔法職だっ!
"hayate":「魔法は何で雷や炎が出せるんですかー?
spit:「
魔法だからだ!
屁理屈だ!?
さて、しばらくして、ハヤテさんとリジェルさん、華ちゃんも合流です。
ぶーぶーいっているスピットとともに、とりあえずはビタタ狩りを続けます。
っていうか、もともとはここに来たかったのは、
スピットでは?
"hayate":「
…飽きた。
早ッ!?
"hayate":「つまんなーい!
spit:「つまんなーい!!
もはや手がつけられません。
Ridgel:「何か、この二人を黙らせるいい方法は…
uxi-ta:「どこかに放り捨てればいいかと。
Farmei:「グラストありますよ?
spit:"hayate":「
それだッ!!
Farmei:「ワープポータル!!
spit:「よーし、死なばもろとも。
uxi-ta:「ひっぱられた!?
"hayate":「いこうぜ、リジェル〜。
Ridgel:「俺もか!?
spit:「よーし。
なにやら、スピットの顔に生気が戻って参りました。
uxi-ta:「どうしろと…
そんなんで元気なあなたが
ナイス。
spit:「しかし、いつもいつもグラストヘイム突貫では、おもしろみがないな。
死。とつくはずですが、まぁ、置いておいて、スピットは言いました。
spit:「そーいえば、リジェルさん?
Ridgel:「はい?
spit:「以前、
DOPがどうとか?*5
"hayate":「なるほど、ゲフェンダンジョンか。
Ridgel:「言った記憶があるような、ないような…
spit:「いざ、歩いて、ゲフェン!
さすが危険なゲフェ方面ポタル。
一行はグラストヘイムを行く冒険者たちとは、全く逆方向に、てくてくと歩いていきます。
そして、グラストヘイム入り口。
Ridgel:「さて…
spit:「この先が…
愉快!?
この先の森には、プティという竜族のモンスターが住みます。
竜族のモンスター、プティは、フィールド上に見られるモンスターの中では強敵の分類に属します。いくら歴戦の冒険者といえども、プティには一応の用心を…
"hayate":「いってこい。
用心に越したことナシ。
しばらくして、リジェルさんから電波が届きました。
Ridgel:「うーむ、まぁ、大丈夫と言えば大丈夫。
と、リジェルさん。
Ridgel:「むしろ、モンハウを作れるほど敵がいない…
"hayate":「さて、リジェルが小細工をかます前に行きますか。
spit:「では、ゲフェンに向かって、突撃ー!!
一行はゲフェンに向かって、プティマップを抜けていきます。
Ridgel:「なんか、愉快な数字が…
"hayate":「あたらないー!?
Farmei:「みなさん、回復は自力で?
Ridgel:「ボクは大丈夫。
spit:「ボクも大丈夫。
uxi-ta:「え?
spit:「あたれば一瞬で消し飛ぶから。
"hayate":「SPの無駄遣いはしないっと。
Ridgel:「戦いは数だよ!兄貴っ。
spit:「戦闘は火力!
Max:「スピさんが役に立ってる…
uxi-ta:「さすが、火力のみ。
そして一行は
誰も死なずに、一行はプティマップを抜けました。
さあ、一路、ゲフェンは、ゲフェンダンジョンに突撃です!
spit:「いきなりかこまれた!?
"hayate":「さすがだ!!
さい先のいいスタート。
さあ、二階です。
"hayate":「ばんごーう!
Ridgel:「いち。
uxi-ta:「に。
spit:「さん。
仕様です。
突き進むプロンテラベンチ。
二階を抜け、さぁ、DOPこと、ドッペルゲンガーの住む、三階です。
大歓迎。
Ridgel:「ところで思ったんだが、ハヤテよ。
"hayate":「なんだ、リジェルよ。
Ridgel:「スピットさんたちは、スピットさんたちでパーティを組むと、公平組めるのでは?
"hayate":「…
"hayate":「華苺さん、レベルは?
Farmei:「64です。
"hayate":「Jobレベルは?
Farmei:「48。
"hayate":「スリーサイズは?
誘導尋問失敗。
そんなこんなで、ハヤテさんリジェルさんペアと、スピット、ウィータ、マックス、華ちゃんチームに別れ、いざ再突貫。
"hayate":「女の中に、男がひとり〜。
Ridgel:「うらやましいんだろ?
spit:「ってゆーか、リジェルさん、そのパーティ名は…
Ridgel:「見たな!!
Ridgel:「ならば、死ね!
ならつけるな!
"hayate":「む!モンハウの予感!?
先を歩いていたハヤテさんが言いました。
"hayate":「
妖気!?
Farmei:「髪の毛、立つんですか?
"hayate":「そろそろ夏だしな。
意味不明。*6
"hayate":「スピさん、LoVだっ!
spit:「おおっ!?
spit:「戦闘でLoVを打つのが、
めっちゃ久しぶりな気が!?*7
spit:「めっさつ!!
と、スピットは、キメっ。
"hayate":「で。
"hayate":「
まだいるんだが?
spit:「漏電雷魔導士の電力が、
この程度で切れるとでも?
Ridgel:「火力はすごいんだがなぁ。
Farmei:「火力だけ。
"hayate":「ふっふっふ。モンハウを一掃するぞ。
spit:「はっしゃ〜。
"hayate":「みなのもの、下がっておれ!
spit:「…爆発の中に、誰かいる。
"hayate":「うお!?
ちーん。
"hayate":「
下がっておれと!?
spit:「あと一発うてるぞー!!どこだー!!
Ridgel:「いや、もういないから…
spit:「むんー!むんー!
uxi-ta:「スピさんが元気だ…
Max:「不安だ…
spit:「ああ、なんて久しぶりなんだろう!
スピットはアークワンドを両手でぎゅっと握りしめて、言いました。
spit:「SPが赤くなるなんて!
Ridgel:「さすが、SPは消費するためにあるとのたまう方。
Farmei:「漏電し放題…
"hayate":「漏れ漏れ。
一行は少しの休憩の後、再びゲフェンダンジョンを散策します。
と、そういえば、ここには何をしにきたのでしたっけ…?
"hayate":「お。墓地の向こうに…
Ridgel:「溜まってそうだ。
spit:「俺、出番!?
"hayate":「ふははは、なぎ倒してくれるわ!!
通路を右に折れ、いざ、金網の向こうへ!!
spit:「あれ…?
それは一瞬の出来事でした。
いったいなにが起こったのか、スピットにはまったく理解できませんでした。
"hayate":「うはははは。
ハヤテさんは笑いながら言いました。
"hayate":「そういえば…
spit:「
ドッペルゲンガー!?
そしてドッペルゲンガーは「ふ」と笑い、スピット達を一瞥し、ダンジョンの奥へと消えていきました。
spit:「おのれ…いまに見てろよ!!DOP!!
スピットの声が、ダンジョンに響きました。
spit:「
違う!?
9割方、正解な気もします。