studio Odyssey



少女には剣の輝き!




「いそげ、いそげ」

 と、言いながら、スピットはてくてく歩いています。
 それはまだ、太陽が南天に向かって昇っているころの時間でした。

「ご主人さまー、まってくださーい」
 と、ペットのへっぽこがぴょんぴょん、スピットの後ろを跳ねて追いかけてきます。
「いそげ、へっぽこ」
 言うスピット。とことこ。

「今日の冒険は、どこに行くのですかー?」
「今日は、久しぶりにみんなで、グラストヘイムにでも行こうかなと」

「またですかー」
「またって言うな!」

 いいながら、スピットはへっぽこに向かってくるりと振り返りました。
「いいか、へっぽこ。俺たち、ギルドRagnarokの面々はだなぁ…」
「あ」
「ん?」
 へっぽこがスピットの背中の向こうを見てつぶやいた声に、スピットは振り返ります。
 その耳に、その声は届きました。

「そこの人っ!」

「え」

 振り返るとそこには、ノービスの女の子がいました。
 いえ、いましたと言うよりは、その子はスピットの方へと向かって、全力で走ってきていたのでした。

「どいてっ!どいてっ!」
「ご主人さま!あぶないです!」
「むっ!?」

 スピットはぴーんと来ました。
 長年の冒険者の、勘という奴です。

 これは、かわさなければ…

「変なフラグが立つ!!」

 かなりマテ。

「うぐぅ…どいて〜」
「絶対、立つ!!」

 身構え、迫る少女にスピットは向き直ります。だだだっと走り寄る彼女の動きに集中し、帽子を押さえたまま…
「右…っ」
「ご主人さま!あぶない!!」


 べち。


「あ…」


「うぐぅ…痛いよぉ」



「…やべぇ、妙なフラグ立てちまったかもしんない」

 道に突っ伏したままつぶやくスピットの向こう、かけていた少女に近づいてきた、エプロン姿のおじさんが、怒りながら言いました。

「まったく、ちゃんとゼニーをはらわんか!」
「うぐぅ…」

「俺には聞こえない。俺は関わらない…」

 スピット。ぼそぼそ。

「お、お金が…お金が…」
「お金を払わないでアイテムを買うのは、犯罪ですよ〜」
「…へっぽこ、頼むから関わるな」
「さ、ちゃんとお金を払ってもらおうか。たい焼き、2つ分」


「俺は関わらない。関わらない!


 がくがくぶるぶる。

「あっ!」

 と、その子は突っ伏したままのスピットに気づいて、声を上げました。
「関わらない。関わらないッ!
「その帽子は…」

すらっしゅ しょっく!?


「ギルド、Ragnarokのマスター、スピットさん!!」


すらっしゅ しょっく!!x2

「ほほぅ…この子の知り合いの、ギルマスさんか?」

「知らん」
 すっくと立ち上がり、スピット。帽子をなおして、
「じゃ、俺は急ぐので!」
 しゅたっと片手をあげて言いました。

「あ、やっぱりスピットさんだ」
「聞こえない」
「待ってもらおうか、ギルマスさん…」
「あ、私…」

 と、その子は言いました。

「カルピンの義妹です」


「…」



すらっしゅ しょっく!?*1


少女には剣の輝き!


spit:「あー…まー…

 ベンチ前。
 スピットは言います。

spit:「詰まるところ、遅刻の理由というのは、そういうわけだ。


uxi-ta:「…思いっきり、嘘くさい。
aoiruka:「っていうか、たい焼きってなんですか?
Grill:「たいの形をしたおかし。あんこが入ってるやつ。
mayumi:「いや、そんなものがこの世界にあるのか、と。

 言ってはいけない質問です。


spit:「あっ!おまえら、信じてないなッ!?

 むきー!と腕を振り上げ、スピットは言いました。

heppoko:「ご主人さまの言ってることは、本当ですよー。
spit:「ほら!へっぽこもそう言ってんじゃんか!!

eve:「おいでー、へっぽこ。リンゴジュースあげようねー。
heppoko:「わーい。

eve:「で、へっぽこ。スピの言ってることは、本当かな〜?


heppoko:なんの話ですか?

spit:「おのれ…単細胞生物…*2

 ぴくびくと動く眉を片手で押さえながら、スピット。
spit:「まぁ、いい。本人に登場してもらえば、晴れる疑いだ。

 そしてスピットはくるりと振り向いて、彼女を呼びました。

spit:「ほら。こっち!


ベンチのみんなの前に


「うぐぅ…

shintisu:「…
Farmei:「…

Max:「どこでナンパしてきたの?

spit:マテ。



spit:「んー、とりあえず、自己紹介。説明してやってくれ。

 帽子をなおしながら、スピットは言いました。

「えっと、えっと…

 女の子はしどろもどろに言います。

「名前は、迦陵頻伽と言います。





spit:「…
uxi-ta:「…
aoiruka:「…
mayumi:「…
shintisu:「…


eve:「…かりょうびんが。


uxi-ta:「はじめまして〜。
aoiruka:「こんにちわー。
shintisu:「こんちわー。


eve:読めなかったんでしょ?

mayumi:「じゃ、さっそく調教〜。
spit:「マテ。

mayumi:「えっえっ!? ぢゃぁぢゃぁ、飼育?
aoiruka:「飼うのか!?
Farmei:「でも、手伝ってもらえば、30分でノービスなんか卒業できますよ?
eve:「盾のあおいるかさんもいるし。
aoiruka:「俺!?
Grill:「ウチのギルドに入ってしまったのが、運の尽きです。
shintisu:「センセー、がんばー。*3
Farmei:「アイスソードあたりで、エルダ狩りとかは?
eve:「それならきっとすぐだね。
mayumi:「の、ノビたん…はぁはぁ…
eve:「はぁはぁしないっ!
aoiruka:「仕様です。
Max:「トーキーボックス!
shintisu:「ハァハァって…
mayumi:「ノビたんー!
uxi-ta:「まゆみさん、ストップっ!?
eve:「せめて、陽が落ちてから!
aoiruka:「落ちればいいんだ…
mayumi:「もーまんたい。
Grill:「なにがかは、聞かないでおこう。


karyo:「…

spit:そんな目で俺を見るな。


 仕方なく、スピットはこほむと咳払いをひとつ。


spit:全員整列っ!?

整列っ

spit:「しかも、増えてるし、変わってる奴いるし!


irurur:「スピさん、また遅刻?
miyuki:「変わってるのって、誰?
appi:「誰でしょうねー?
Max:「…代わり、あり?


 ソコ。


spit:「迦陵ちゃん、こっち。
karyo:「はい。

 とことこと、迦陵ちゃんはスピットのとなりに戻ってきました。

spit:「んじゃ、とりあえず、自分の自己紹介の続き。

karyo:「えっと…

 迦陵ちゃんが話す後ろ、ポタ広場にいたポタアコさんたちが、なんだなんだと、スピット達の方を見ています。
 それもそうです。ずらり壁際に並んだギルド、Ragnarokの面々、これだけ同一ギルドの人間が一カ所に集まるというのは、なかなか街中でみれたものではありません。*4

karyo:「迦陵頻伽(かりょうびんが)と言います。えっと、このギルドのメンバーだった、カルピンの義妹です。よろしくお願いします。

 ぺこり。

spit:「と、言うことだ。

miyuki:よろしくお願いされた。


spit:お前にはしない。

mayumi:「なんでー!?


 胸に手を当てて考えてみればよいかと。



spit:「ここに、カルピンからの手紙がある。

 ぴっと、スピットは手紙を取り出し、皆に見えるようにちょっと上に掲げました。

spit:「今からこれを読み上げるので、みんな、心して聞くよーに。
 そしてスピットはそれを読み上げました。


spit:「えー、ギルドのみなさんへ。とうとう、料理の修業に旅立つ日が、明日となりました…

 カルピンが料理の修行のために旅立つという話は、皆もすでに聞いていました。*5
 そして、その長い旅は、スピットたちが初めに思っていたよりも、ずっとずっと長い旅だったのでした。「んー、十年かぁ」「いい年になってるなぁ…」「死んでるかもよ?」「…ありそう」「まだ続きがあります。えっと…」

spit:「ギルドの方なんですが、エイルと一緒に、追い出してしまってください。そしてみなさんに、いろいろとご迷惑をかけて申し訳ありませんでしたと、お伝えください。

Grill:「質問。
spit:「ん?
appi:「エイルちゃんも一緒にギルドから外すの?
spit:「俺は、書いてある事を読んでいるんだし、本人の希望がそうならば、そうするし、ギルマスさんは頭の出来がいいので、ちりばめられたヒントですべて理解する力があるのです。
uxi-ta:「意味がわかりません。
spit:「続きがあるので、続けまーす。*6 えーと、私が消える代わりと言ってはなんですが、代わりに彼女をギルドに入れてやってください。何になるかとかは、まだ決めていないようなので、スピさん、よろしくお願いします。

karyo:「よろしくお願いします。
spit:「よし、そんならな…
appi:「とりあえず、それは置いておいて。続き。

spit:「んーと、あおいるかさん。
aoiruka:「ほい?


spit:いつか料理します。


aoiruka:(;´Д`)

Grill:「プ。

spit:「グリさん、同。


Grill:ヌアー!?


spit:「それでは、みなさんがよい旅を続けられますように。と。

appi:「よい旅を。
Grill:「カルピンも。
aoiruka:「ですねー。

 それぞれに言うギルドメンバーを見回しながら、スピットは手紙をしまいました。
 そして迦陵ちゃんの頭をぽんと叩いて、

spit:「って訳で、ウチのギルドに加入するので、みんな、なかよくするように。

 言います。

karyo:「よろしくお願いします。


miyuki:よろしくお願いされた。


spit:俺がされたんだ。


appi:「どっちでも不安だ…
shintisu:「カルピン、なむー…


spit:「っと、じゃ、うちのギルドの面々を一応、紹介しておくか。

 と、スピットは壁際に並ぶギルドの面々を見て、言いました。



spit:「奥から、アサシンのシンティス。
shintisu:「よろしくー。

spit:「となりが、ペコの影になってるけど、ハンターのウィータ。
uxi-ta:「おねがいしまーす。

spit:「ペコペコに乗ってるのが、騎士のあおいるかさん。最近、うちのギルドに捕獲された。
aoiruka:「捕獲…

ギルメンしょうかーい spit:「となり、アサシンのいるる。
irurur:「怠け者ピクミン。

spit:「となり、要注意人物、佐倉家の次女、佐倉 深雪。
miyuki:「のーみそ足りないプリ。

spit:「となり、プリーストの玲於奈。
Leona:「よろしくぅ。

spit:「となり、ギルドメンバーじゃないけど、ベンチ前のお友達、華ちゃん。
Farmei:「華苺(ファーメイ)です。よろしくー。

spit:「となり、プリーストのアピ。
appi:「よろしくお願いします。

spit:「最後が、マジシャンの焼豚こと、グリル=ポーク。
Grill:「ども〜。



spit:覚えた?


karyo:

 登場人物が多すぎます。


spit:あと、アサシンのグリム、騎士のシュト、ウィズのアブにショボアサのラバ。さっきまでいたイブに、その息子と娘の、初心、えぶ。同じくさっきまでいたまゆみ嬢にマックスに、ベンチ前のお友達としては、ハヤテさんやリジェルさん。あと、風ちゃんとか…


 人物名鑑?*7


karyo:「えーと…
appi:「さすがに人数多いですし、すぐには覚えられないでしょうけど、一緒にいれば、すぐに覚えられますよ。

 苦笑気味に、アピはいいました。

karyo:「だいじょうぶです。

 迦陵ちゃんはこくりと頷いて、言いました。

すばらしい


 第一印象確定。



いつのまにか



 誰が?


aoiruka:「俺は普通だ。
Leona:「私は個性的じゃないよ。
irurur:「おれも個性なんてないなー。
Farmei:「私も別に普通カナ?闇ポタくらいだし。
appi:「みんな一般的ですよねー。

きっぱり



 そのギルマスは誰だ。


karyo:「で…

 迦陵ちゃんはスピットの方を向きました。

karyo:「あとひとりですね。
spit:「なにが?

 ハテナと、スピットは首を傾げました。

aoiruka:「スピさん、自分は?

spit:「おおっ!?

 はっと目を丸くして、スピットはぽんっと手を叩きました。

spit:「そうだな、自分の紹介を忘れていた。俺は、パーティ、プロンテラベンチのリーダーにして、ギルド、Ragnarokのマスター…

 そして、スピットはちょいと帽子をなおしました。

irurur:「漏電。
mayumi:「だだもれ。
Leona:「へっぽこ。
uxi-ta:「言われた!?
shintisu:「たれながし。
Grill:「ナンパ師。
いくつ名があるんだ



spit:オマエら…



appi:「いずれバレることです。



spit:「スピット。俺の名前は、スピット。

 帽子を直し、スピットは言いました。

spit:「ようこそ、ギルド、Ragnarokへ。


Grill:「このギルドは、効率から最も遠いギルドです。
aoiruka:「一日一死にが基本です。
mayumi:「スピたんは、十回くらい死んでるけど。
shintisu:「突貫かけて。
Leona:「そんなスピさんを、いじめ抜くのが活動の目的。

appi:「そんなギルドです。

 と、アピはにっこり、笑いました。


spit:ヲイ…


karyo:「よ、よろしくお願いします。

 迦陵ちゃんは軽く、笑っていました。



Leona:「そんなわけで!

 すっくと、玲於奈は立ち上がります。
 はっとしたシンティスが立ち上がり、「あぶないっ!」


Leona:「ワープポータル!

 しゅんっと立ち上った光の柱の近くにいた迦陵ちゃんを、ぱっと下がらせました。

しかし、ポタは

spit:「ピンポイントに俺の足下なんだが?


Leona:「いってら〜。





グラストヘイム




 結局、全員集合。


spit:「…えぶになってるし。
ebu:「お師さま、突撃ですー!
miyuki:「そのイキだー!

spit:「深雪嬢だし。
miyuki:「キニスンナー。


spit:「しない。


karyo:「こ、ここは…?

 どきどきという表情で、迦陵ちゃんはあたりを見回します。

aoiruka:「グラストヘイムにノービスは違和感だ…
Grill:「インジャネ?


spit:「うーし…

 にやりと笑うと、スピットは帽子をきゅっとなおして、言いました。


いざ!



spit:突貫!!



はい、お約束




 死。











 さて、それから、数日の日が流れました。


karyo:「なにしてるんですか!?

なにをしているんでしょう?


 ここはイズルード。
 剣士ギルドです。


karyo:「じゃ、行ってきます。

aoiruka:「ほい。
spit:「いてら。


 迦陵ちゃんはギルド職員に話しかけ、剣士転職の、最後の試練へと向かいました。


spit:「この試練を乗り越えれば、晴れて剣士か。
aoiruka:「ですね。

 ついさっきまで、エルダー森で壁をしていたあおいるかさんは、軽く笑いました。

aoiruka:「これで、新しい前衛が…
spit:「うむ…

 剣士は、彼女が自ら決めた職でした。
 もっとも、スピットとしても新しい前衛が欲しいと思っていましたし、女騎士さんのお友達がほしいなぁとか、別にそういうよこしまな事を考えたりしていたりしたわけではなくもなく。

spit:「うむ。

 ぽつり。

spit:「少女には剣がよく似合う。


spit:「将来は両手剣騎士になって、ペコには乗らせない。

aoiruka:「俺しかいないから、俺が突っ込むべきですか?



spit:「あおさん。
aoiruka:「はい?
spit:「俺は今、重大なことに気づいた。
aoiruka:「なんでしょう?


それは重大な問題だ



 重大だ。



 やがて、試練を抜けた迦陵ちゃんがふたりの前に、戻ってきました。
到着
karyo:「おまたせしました。

spit:「うむっ。


karyo:「では、転職したいと思いますっ。


 くるりと振り向き、迦陵ちゃんはギルド職員に話しかけました。

 すると、彼女の身体がぽっと弱く輝き…


剣士誕生!

spit:「おめ〜。で!


 その瞬間、迦陵ちゃんはぴくり、と身をこわばらせました。


karyo:殺気!?



素早い!?

spit:何っ!?


aoiruka:よけた!?



 遅れて、青い雷が駆け抜けました。*8


karyo:「ふぅ…

 迦陵ちゃんは軽く額をなでて、言います。

karyo:「何をされるのかと。


spit:「チイイィィ!

 くやしぃぃっと、スピットは帽子を押さえながら歯ぎしり。

aoiruka:「将来有望だ…

 あおいるかさんはうるうるとしながら、剣士ギルドに差し込む光に向かって両手を組んでいます。


karyo:「さて、と。


 その光の中で、迦陵ちゃんは微笑みながら、言いました。

素早い!?

spit:「行きますか。
 スピットは帽子をなおします。
aoiruka:「ですね。
 歩き出す彼女に、あおいるかさんも続きます。


 光の中で、彼女の腰にぶら下がった剣が、弱く輝いていました。



*1 いや、こういう演出にして欲しいとの要望が本人から…ってか、プレステ版だよねっ。そーだよねっ。お兄さんは心配しちゃうよっ!?
 ちなみに、これ書くためにインストールし直したりしたってのは、別の話だ。
 ちなみに「/ショック」で、たびたび出てくるびっくりのエモーションが出る。カルピンについては、「Ragnarokへようこそ!」と「街巡り 〜プロンテラ〜2」を参照。
*2 ポリンは単細胞生物との噂。(嘘です)
*3 たびたびベンチ前に遊びに来ていたあおいるかさんですが、所属していたギルドが解散したため、スピットたちのギルドに捕獲されました。ギルメンみんなで、一斉捕獲でした。
*4 ギルド、Ragnarokの面々は重複なしで、現在14人。(重複含めると15人。一時期は16人マックスまでいました)全員集まることはまれですが、それでも結構、集まりはいい方で、いつも4、5人は接続しています。
*5 くわしくは「街巡り 〜プロンテラ〜2」を。実は、リアルに修行の旅です。
*6 実は、スピットは本当に旅立ちの前日にカルピンとあって話している。(最も、課金していないので、迦陵ちゃんのアカウントで話したんだが)この辺の話は、その時の話。細かいところは、まぁ、お察しください。と。
*7 そういえば、RO日記には登場人物紹介がない。
*8 こんな素早さでかわされたのは、初めてだ!雷がまだ、落ちてもいない!?