今日も今日とて、プロンテラベンチ。
スピットはいつものように、いつもの帽子をかぶって、冒険へと繰り出しました。
「誰か、いるかねー」
と、ベンチへ。
「おー、おは」
と、スピット。
「おはようございます」
と、ベンチに座っていたアピがぺこりと頭を下げました。
「暇そうだな」
「スピさんこそ」
よいしょと、スピットはアピの隣に座りました。
「さて、どーするね?」
「レベル上げにでもいきましょうかー?」
「むぅぅぅん。でも、かったるいしなー」
「暇なら、息子のレベル上げの手伝いでもしてやってくださいよ」
「おおぅっ!?」
突然かけられた声に、スピットはたいそう驚いて飛び上がりました。
「あ、お義兄さん、こんにちは」
ベンチの後ろに、音もなく姿を現したのは、氷魔導士、アブドゥーグこと、アブでした。
「それとも、デートの邪魔でしたかね?」
「なんでだよ」
「なんでですか」
「いや、なんとなく」
いいながら、アブもベンチの脇に腰を下ろします。
「他の連中は?」
アブが聞きました。
「グリさんが、臨時公平パーティに出ていきましたから、そろそろ帰ってくる頃かもしれないです」
「他の連中はどーかな?」
スピットはむにむにとギルドメンバーの所在を確認しました。
「あ、グリムがいるな。モロクだって。たまにはベンチこーい。と。あとはー…」
「あ」
アピがぱっと顔を明るくしながら声を上げました。
「よーす」
と、プロンテラ城の方から、ベンチの方へと歩いてくる仲間たちの姿がありました。
「相変わらず、この広場は混んでるなー」
と、その中の仲間の一人、騎士、イタが言います。
「身体が重い…」
続いて、アサシンのいるる。
「久しぶりですねー」
アブの言葉に、スピットが続きました。
「前回、あってるけどな」
「って、スピ。前回は本当はいつの話か知ってますか?」
「それを言ったら、時期モノイベントの話なんか、出来ないぞ」
「何の話ですか、スピさん、お義兄さん!」
「ふれてはいけない話題」
言って、スピット。「お?」と噴水広場の方に目をやります。とことこ歩いてくる、見慣れた姿。
「グリムだ。おーい」
とことこ歩いてくるのは、アサシンのアースグリム。
「よー、はやかったな」
「おう、ポタしてもらったからな」
「ぼつぼつと人数、集まってきたな」
スピットのつぶやきに、アブ。
「と、なると、突貫死ですか?」
このパーティはいつもそんな話ばっかです。
「プリがもう一人ほしいなぁ」
とは、アピ。いつものメンツを見回して言います。
相変わらず、回復補助系スキルを持った人がいません。
「アピたん死んで、ぱんてぃら披露でもーまんたい」
「わっ!?」
突然にアピの背後に現れるやいなや、彼女にぎゅうと抱きついて「ぱ、ぱんてぃらプリ」なんて言いながら手を彼女の胸のあたりに忍ばせつつ、はぁはぁするのは誰でもありません。
「ハイディングして、クローキングしてまで近づいて来て、何をしているー!」
スピットは素早く魔法を唱えます。「サンダーストーム!!」「あぅー」
「あ、相変わらずですねぇ、まゆみさん」
どきどきしている胸を押さえながら、アピは言いました。
「もーまんたい」
サンダーストームをひらりとかわして、再びアピにくっつくのはまゆみ嬢。
「ちっ、かわしやがったか」
「ふふり」
「つか、やること変わってないね」
「仕様です」
イタといるるはひょいと肩をすくめました。
「死んだー!?」
「何を突然」
と、突然ベンチに戻ってきて叫んだのは焼豚こと、グリル=ポーク。
「経験値、マイナス1パーセント!?」
「気にするな」
スピット。
「スピさんは、日に3回は死にます」
アピ。
「あれ?なんか今日は人数多いね」
切り替えが早いのは、ベンチメンバーのいいところでもあります。
「しかし、あれだな」
あれという指示代名詞が何を差すかはともかく、スピットは皆を見回して言いました。
「久々に人数集まったし、どっかいくか?」
「行く?逝くの間違いでは?」
と、アブ。
「イ、イクぅー」
「いってろ!」
まゆみ嬢がにこにこ言うのにわざわざ突っ込んでいるのはグリム。
「あとは、ラバさんとシンくん、ピンくん、エイルちゃんがいれば、完璧なんですけどねー」
「ギルド、Ragnarokも、人数増えたなー」
仲間たちを見回して、スピットはちょっと笑いました。
「あ、その事なんだけど…」
順繰りに仲間を見回したスピットと、最後に視線があった彼が、言いました。
スピットは帽子をちょいとなおします。
ぴりりっと、空気の中のちょっとの電気が、彼の言葉によって身体をこわばらせた何人かの緊張を、スピットの右手に伝えていました。
「実は…」
騎士、イタはぽつりと言いました。
「冒険者をやめようかと思うんだ」
「突然だなー」
スピットは帽子をなおしながら、笑います。
ひょいと視線をずらすと、隣にいたいるるも複雑な顔をしています。視線を送りはしませんでしたが、アピの後ろで彼女に抱きついたままのまゆみ嬢も、ちょっと身をこわばらせているのがスピットにはわかりました。
「そーいや、最近、見かけないなーとは思ってたけど」
「と、突然ですね、イタさん」
イタは「うーん」と頭をかきながら言います。
「実は、前々から考えてはいたんだけど、最近、冒険に出てもおもしろくないっていうか…なんか、昔みたいなハラハラドギトキすることがないってゆうか…」
「ギルドのメンバーで出かければ、いつもハラハラドキドキです!」
「ってか、アブ、それはすぐに死ぬから」
グリの言うことはもっともです。
「いや、そういう事じゃなくて…」
苦笑気味に、イタは続けました。
「なんつーか、最近、ミドカルドの治安も悪くなってきたってゆーか、なんかちょっと、この世界もおかしくなってきたってゆーか…その中で、なんか特に目的もなく冒険者やってて、あー…なんだろ…」
「確かに、治安は悪くなった」
うなずきながら、アースグリム。
「冒険者に税金かけて、金取るようになってから、ミドカルドは明らかにおかしくなったと思う」
「あ、それはあるかも」
「課金かー…」
*2
ううむとスピットはうなりました。
「確かに、お金払ってまで、冒険者することあるのかなって、思うことはあるけど」
「現実、お金払わなきゃならなくなっても、冒険者の数は減るどころか、増える一方ですしね」
アブが言います。言葉の先にいたグリがうなずきながら返します。
「俺はそういう、課金後の冒険者たちと臨時公平パーティとか組むけど、確かにたまに冒険者らしからぬ行動や発言をする輩もいるね」
「殲滅してヤレ」
「グリムさん、キケンな事を言わない」
「そっか…」
小さくつぶやいて、スピットは言いました。
「やめちゃうんか」
言うスピットに、アピは目を丸くしました。
「ひ、引き留めないんですか!?スピさん!?」
「別に」
「べ、別にって」
「俺たちは冒険者だからな。何をするのも、何を考えるのも、それぞれの自由だと思う」
スピットはちょいと帽子をなおして、言いました。
「おつかれ、イタ」
「ちょ、スピさん!?」
「何を言ってるんですか、スピ!」
「なんだよ」
「イタがいなくなったら、前衛がいなくなって大打撃です!」
「そいつは困る!考え直せ!!」
「ゲンキンだなー」
「あ、そうだ。俺もシンティスから預かってたものがあるんだ。えっと」
と、アースグリムはごそごそと腰にぶら下げていた革袋をあさりました。
「これ、預かったんだ。スピに渡してくれと」
「マヂ!?」
ぽいと投げ渡されたそれを受け取り、スピットは目を丸くしました。
「Ragnarokのエンブレムじゃないですか」
スピットの手の中のそれを見て、アブ。
「女の子以外にも、あげてたんですね!?」
「いっぺん死ぬか、テメェ…」
「シンくん…ギルド抜けちゃうんですか?」
グリムに向かって、アピです。
「いや、とりあえず、もうちょっと強くなったら、自力で奪いに来るとかなんとか…」
「…それなら、いいんですけど」
エンブレムをしまうスピットに、アピは眉を寄せました。
「ってことは、リベンジですか!?」
と、元気なのはアブです。
「かかってきなさい!私を倒せますかね!!」
「って、なんでお前なんだ!」
「あのときの勝者は、私です!!」
「よし、死ね!」
アークワンドを握りなおして立ち上がるスピット。身構えるアブ。を、無視してもうひとりの魔法士、グリ。
「せっかくうちのギルドに入ったのに、残念だな」
「そうですね…」
「いや、俺は別にいいんじゃねぇかと思うぞ」
アブととっくみあいをしながらも、スピットは言いました。
「さっきも言ったけど、俺は冒険者っていうのは、何をするのも、何を考えるのも、自由だと思うからな」
「ならば、下克上…」
「ぶち殺す、テメー…」
いーいーとほっぺたを引っ張り合うふたりを見ずに、
「いや、でもマテ。確かに自由かもしれないが、何をするのも、何を考えるのも自由というのは、どうかと思うぞ」
グリムは言いました。
「最近、そういうヤシが増えてきたのは事実だ。
*3モンスターを狩っている時に、突然横から殴ってくる奴らも増えたし、明らかに意図的にドロップアイテムを盗むようなヤシもいる。壁打ちで文句、大量トレインで文句、撒き餌で文句、チート、BOT、RMT、もー、ミドカルドでは何でもありになってきてる」
「いわゆる、ノーマナー
*4」
「確かに、そういうのがいやになったって言うのもちょっとはあるかも」
イタは言いました。
「結局、冒険者を管理するためにお金取ってるはずなのに、全然管理してない実状。それでも冒険者の人数は右肩あがり。なんか、そんなミドカルドでこれからも冒険者続けて、何の意味があるんだと思う?」
いつものプロンテラベンチ。
「そんなわけで、冒険者をやめようかと思うんだ」
いつものプロンテラ。
青く抜ける空の下。
すうと大きく息を吸い込んで、彼は言いました。
「引退しようかと」
さすがのスピットもアブとのとっくみあいをやめて、ゆっくりとベンチに腰を下ろしました。
「いるるっちと、まゆみ嬢も、最近は見かけなかったけど?」
スピットは言いました。
「あ」
「えー…」
ふたりは言葉を濁します。
「えっと…俺は別に冒険者やめようとか、そういうことは考えてないんだけど、ただ、ちょっと冒険の回数は減らそうかな…と」
「ピクミンはよわーい」
「ピクミン?」
「アサシンの事の隠語」
「なぜにピクミン?」
「『ひっこぬか〜れて〜たたか〜って〜たべ〜られて〜♪』って、なんかのCMから」
「なんだそれは」
*5
「ぼろぼろだな、ギルド、Ragnaokは」
スピットは「ふぅーう」とため息を吐いて言いました。
そして軽く、笑いました。
「いいけど」
「よくないですよ!!」
アピはスピットに食ってかからんばかりの勢いで、言いました。
「な、なんだよ、突然」
「だって、なんで笑ってるんですか!?仲間とのお別れになっちゃうって話なんですよ!?」
アピは言います。
「スピさんは、仲間とこんな風にお別れになって、寂しくないんですか?みんなで一緒に、いろんなところを冒険してきて、楽しいこともあったし、つらいこともあったけど、一緒にやってきた仲間なんですよ?それなのに、なんでこんな風にあっさり…」
「そうはゆーけどなぁ…」
眉ねを寄せながら、スピット。
「俺に何をどーしろと?」
「なんですかっ、それ!?」
がくがくと、アピはスピットの襟首をつかんで彼を揺すりました。「あぅあぅ〜」「引き留めたりするのが、リーダーじゃないんですかっ!?スピさんは、パーティリーダー!ギルド、Ragnarokのマスターじゃないんですかっ!?」「くっ、くるし…離して…」と、アピはぽいっと勢いよく手を離してスピットを放り出しました。「いたっ!?」「スピも大変だな〜」
きっと、彼女はイタの方を見て言いました。
まっすぐに右手を差し出して。
「今までリザした分の青ジェム、返してください。あと、ヒール、ブレス、その分も!」
「そんな、アピ。むちゃくちゃな」
「つか、そんなの覚えてるやつはいるのだろうか…」
「スピだったら、メガ単位をかるーく越えるな」
「つか、他に何かいい引き留めの言葉は思い浮かばなかったんだろうか」
「なかったんじゃない?」
「よせって、アピ。子どもじゃあるまいし」
「子どもでも、なんでもいーです。だって、仲間なんですよ。引き留めるのが…」
「仲間なんだから、そーゆーこと、ゆうな」
言って、スピットは立ち上がると、ちょいと帽子をなおしました。
「ラバがいないのが、残念だけどな」
そして口許を軽くゆるませて、言いました。
「なぁ、イタ。弟の方もそうだし、俺の兄貴の方もそうだけど、俺たちが冒険者になった理由って、覚えてるか?」
それは今から1年も前の話です。
今ここにいる仲間たちの中でも、そのころの事を知っているのは、スピットとアブ、そしてイタだけです。後から仲間になったみんなは、知りません。アブは笑っていました。イタも、ちょっと、口許を曲げていました。
「聞いたこともなかったな」
ぽつりと、グリムが言いました。
「スピたんが冒険者になった理由?」
まゆみ嬢は首を傾げます。
「そ。俺たちが、冒険者として、このミドカルドの大地に、飛び出した理由」
1年も前。
まだ、ミドカルドの大地には今ほどの冒険者もいなかった頃。
スピットたちが、冒険者として、この広い世界に飛び出した頃。
*6
「あのとき、俺たちがそれぞれの胸に、何を求めて冒険の旅に出たか、覚えてるか?」
スピットは帽子をなおして、言いました。
「漏電雷魔導士の俺、いきずりの魔導士のアブ、ショボコソのラバ、そしてお前ら。それぞれ、想いは違ったかもしれないけど、俺たちはやがて来るこの時代、そして今いるこの仲間たちみたいな奴らとの出会いを期待しながら、まだ見ぬ大地の、その果てを目指して、旅だったんじゃなかったっけ?」
「最近、昔はよかったとか言う、古参の冒険者たちがいるけど、確かにあの頃みたいな、どきどきする毎日とか、今はネェよ。あの頃夢見ていた世界の果てっていうものが、思ったよりも近くにあるんじゃないかって気がしちまって、希望とか、夢とか、そういうものが思ったより綺麗じゃなくて、なんかちょっと、冒険者してる意味が、あの頃と比べて薄っぺらくなってるみたいな気は、するよ」
*7
「でもな」
薄汚れた、帽子。
「俺は、正直言って、イミルの爪角だとか、今のミドカルドの実状だとか、そういうのには興味がない。俺が興味があるのは、あの頃から今も、変わってない」
その帽子をちょいとあげて、スピットは笑います。その帽子は、ずっとずっと、スピットが冒険者として旅立ったあの日からずっと、彼の頭のうえにちょこんと乗っかっていました。
誰かと出会った日も、バカみたいに笑った日も、新しいダンジョンに突貫した日も、新しい街に訪れた日も、ずっとずっと、彼の頭の上にありました。
だから、スピットはその帽子のつばをちょいとあげて、笑って、言いました。
「俺はまだ見ぬこの世界の果てを、見てみたい。俺には、まだ、それが見えてない。だけど、お前には、もう見えたか?」
青く広がるミドカルドの空の下。
彼はゆっくりと息を吸い込んで、そっと、言いました。
「ああ」
「ひとつの終わりは、見えた」
「なら、いいや」
「アピ」
「ぅー」
ふてくされ気味のアピに向かって、スピットは笑いながら言います。
「俺だって、いつかは冒険者をやめるときが来る」
「ぅうー」
「お前にだって、いつかは来るぞ」
スピットは視線を仲間たちに送ります。
「ここにいる、みんなにだって、いつかは来る」
「でもなぁ…」
プロンテラベンチ。
スピットは言います。
「それでも、いいんじゃネェかと、俺は思うんだ」
「俺たち冒険者は、誰も、口には出さないかもしれないけど、それぞれ、目的があって、そんで、毎日、冒険してる。それが強くなるって目的でもいいし、お金を稼ぎたいって目的でもいいし、レアアイテムを集めたいって目的でもいい。仲間たちと冒険したいって目的でもいいし、世界の果てを、見てみたいって目的でもいいと思うんだ。俺たちは、このミドカルドの大地を冒険する、冒険者たちだからな」
「俺たちは、何をするにも、何を決めるのにも、自由だ」
「ミドカルドの大地は、そういう大地なんだ」
吹き抜けていく、春の香りを乗せた風に、スピットの翡翠色の髪が揺れていました。
「さて、と」
言ったのはアブです。
よいしょっと立ち上がって、彼は続けました。
「さて、パーティ、プロンテラベンチのリーダーにして、ギルド、Ragnaokのマスター、スピット」
「おぅ」
「今日の冒険は、では、どちらへ?」
「そうだな」
腰に下げていたアークワンドを手に取り、スピットは言いました。
「あそこに、いくか」
にやりと、笑います。
「懐かしき、この世界の果てに最も近い場所。そして、魔壁が眠るとされた、かのダンジョン!」
「おおぉっ!」
「ど、どこですか?」
「そんなの、きーたこともないよー」
「うむ。興味があるな…」
「で、リダ、それって、どこよ?」
「決まっている!」
びしっと、スピットはプロンテラ城、その向こうをアークワンドで指して言いました。
「プロンテラ北ダンジョン!!」
「マテ!!」
「突貫死!!」
「そのパターンかー!!」
「つか、いつもそんなんだ」
「いいか、イタ」
「ん?」
「一言だけ、別れの言葉だ」
「最後は華々しく、散れ」
「Σ(´д`!!(散るんだ!?
プロンテラの空は、今日も抜けるような青空でした。
きっと明日も、ミドカルドの大地は快晴です。
そしてスピットたちはいつもと同じように、冒険の旅に出ます。
その仲間たちは、ちょっとずつ、もしかしたら、変わっていくかもしれません。
でも、彼らが求める何かは、必ず、その旅路の先に転がっているのです。
彼らの旅路の果てにあるものは。
この世界の、果てにあるものは。
僕は、それを楽しみに、彼らの冒険を、今日も見守っているのです。
そう。
今日もまた、プロンテラベンチから、冒険は。
「いっくぞー!」
昔、神と人間、そして魔族による戦争があった。
その長きにわたる聖戦の末、壊滅的な打撃を受けた3つの種族は
滅亡を避けるために長い休戦状態へ入るしかなかった。
1000年のいつわりの平和…
この長い平和は、ミドガルド大陸で生活している人類から悲惨な戦争と、過去に受けた傷を忘れさせてしまっていた。
彼らは過去の過ちを忘れ、己の欲望を満たすために自らの文明を発展させていった。
そしてある日…
少しずつその平和のバランスが崩れる異常気象がミドガルド大陸の所々で現れ始めた。
人間界と神界、魔界を隔離する魔壁から響いて来る轟音、凶暴化する野生動物、頻繁に起こる地震と津波。
そして、いつの頃からか広まっていった魔物たちの噂。
平和の気運が崩れて行くなか、この世界の平和を支えているというイミルの爪角の噂が少しずつ冒険者たちを中心に広がって行く。*8