だだっとベンチに走るスピット。
別に、ベンチはスピットたちの所有物ではありませんが、「のっとり」といわれちゃあ、黙っちゃいられません。のっとりと言うからには、相手はそう。
スピットたちに
喧嘩を売っているに他ならないのです。
*1
spit:「乗っ取らせませんよー!!
スピットはベンチに駆け寄るなり、言いました。
ベンチの前にいたシーフの少年が、すっくと立ち上がりました。
spit:「
シンティスさん!?
shintisu:「ども、おひさしぶり。
なんと、そこにいたのは以前にプロンテラベンチであった、シンティスさんでした。
*2
spit:「シーフになったんですね。
shintisu:「おかげさまで。次は二次職に向かって精進の日々です。
spit:「がんばってくださいねー。
と、スピットは久しぶりにあったシンさんと笑いながら話しています
たったかたったか、そのベンチに走ってくる人影があります。
appi:「ベンチ乗っ取りって、ホントですかー!?
Abd:「見たんだって、マジだって!!
spit:「…あ、あいつら、シンさんしらネェや。
shintisu:「
エサですから。
spit:「…
釣られまくり。
駆け寄ってきたアピとアブが、スピット見つけるなり、言いました。
appi:「のっとり犯は、この人ですかっ!?
Abd:「よし、スピット!俺が凍らせる!!一気にいけ!!
spit:「穏やかじゃないなぁ。
shintisu:「ってゆか、本気でやったら
二次職のみなさんに勝てるわけないし。
spit:「まぁ、座れや。
そしてスピットは
かくかくしかじかと、説明しました。
spit:「かくかくしかじか。
Abd:「なるほど、そういうことか!
appi:「いや、
本当にかくかくしかじかでわかる分けないです。
shintisu:「えとですね。
シンさんは言いました。
shintisu:「僕は、スピさんのファンらしき者です。本当は。
appi:「らしきって。
Abd:「しかも、本当は、ときた。
spit:「なんだ、俺は喜んでいいのか悪いのか?
シンさんはかまわず続けます。
shintisu:「それでですね、今日は久しぶりにみなさんとお会いしたいなぁと思ったんですけど、なかなかスピさんのギルドのみなさんとお会いする機会も作れないんで、今日は宣戦布告してみたんです。そしたら、プロベンのみなさんもびっくりして、集まってくれるんじゃないかなって…
spit:「なるほど。
Abd:「現にひっかかったし…
ウィザードふたりはうーむと腕を組みました。
appi:「ってことは。
ぽんっと手を打って、アピはこにこに、言いました。
appi:「
PvP大会ですねっ。
spit:shintisu:「
三 ゜д゜)!!!*3
PvP。つまり、Player vs Player。
普段モンスターたちとしか戦えないミドカルドで、唯一、プレイヤー同士が戦える場所があります。それこそが、PvPフィールド。
最強の冒険者を決めるもよし、内輪もめ解決の手段にしてもよし、とにもかくにも、プレイヤー同士の殺伐とした殺戮フィールドこそ、まさにそれなのです。
*4
appi:「
スピさん対シンさん、プロベン所有権バトル〜。
アピはたのしそうです。
spit:「ま、マテ。
Abd:「じゃ、他のギルメンも呼んできますか。
shintisu:「そ、そういう話の流れなんですかっ!?
らしいです。
ほどなくして、ベンチ前にギルド、Ragnarokの面々があつまりました。
spit:「で、PvPってどーやるの?
と、スピット。
なんだかんだ言っても、乗り気です。
つか、お祭り大好き。
miyuki:「PvPは各街の宿屋からPvPドアマンに話しかけて行くんだよ。
spit:「ほー。
miyuki:「そうすると、PvP専用の仮想フィールドにとばしてくれるの。ここではプレイヤー同士が普通に戦えて、最強の冒険者を決めることとかが出来るわけね。あぁ、
恍惚の殺戮フィールド…*5
appi:「くわしいですねー。
miyuki:「おかぁさんはもっと詳しいです。
spit:「さては、日夜そこで殺戮に…
Abd:「そんなこと言ってると、狙われますよ?
そして確実に
死。
一行はプロンテラの宿屋に向かいます。
深雪嬢の教えてもらったとおり、PvPドアマンの話を聞いて、スピット。
appi:「つまり、ほとんどはわかっていないということですね。
そうとも言う。
spit:「この手のものは、やってみてわかるモンだ。いくぞ!
PvPドアマンに、スピットたち一行はPvP待合室へととばしてもらいます。
spit:「これだけ人数いるし、パーティ戦にしようか。パーティって、PvPフィールドでも機能するんでしょ?
miyuki:「あい。パーティは同様に機能します。んでもって、ちゃんとパーティ同志は魔法とかも効きますです。
*6
spit:「んじゃ、スピットチームとシンさんチームに分かれよう。プリはふたりだから、分かれるとして…
スピットはてきぱきと言います。
お祭りごと大好きは、お祭りごとまとめも大好きです。
ほどなくして、スピットチーム、シンティスチームのふたつにわかれました。
spit:「ふふ、こっちはいないはずのラバもパーティだ!
訳には立ちませんが。
miyuki:「燃えてきたー!
Nicrm:「こっちには廃アサがいる!
irurur:「って、私、そんなに強くもないですよ。
spit:「ふふふ。たっぷり漏電してくれるわ!
こちら、スピットチーム。
shintisu:「だ、大丈夫でしょうか…
appi:「スピさん倒したら、こっちの勝ちっ。
Abd:「いや、あんなのは凍結させれば役立たずだ。
ita:「そしてら、いるるさんさえなんとかすれば、おっけー。
こちら、シンティスチーム。
パーティバランスが絶妙です。
堅実バランス型のシンティスチームに対し、一発攻撃型のスピットチーム!
はたして勝負のゆくえは!?*7
一行はPvPフィールドとして、プロンテラの衛星都市、イズルードに飛び込みました。
spit:「いくぜー!
と、その時でした。
ぴしゅっと飛んできた矢が、スピットの帽子を飛ばしました。
「ぬなっ!?」と、スピットは振り返ります。
見知らぬハンターが、スピットに向けて、矢をいろうとしていました。
spit:「マヂですか!?
miyuki:「PvPフィールドはフリーですから、わたしたち以外の人もふつーにいますよ?
*8
深雪嬢の声が聞こえましたが、もう遅いです。
spit:「
それを先にいえー!!
迫り来る矢を交わす術もなく、スピットはあわれ、イズルードの地に散りました。
irurur:「おのれ、スピさんのかたきー!
と、いるるさんが突然現れたハンターに肉薄しよう…
ハンター:「アンクルスネア!
irurur:「をわ!?
それは敵の足止めする、ハンターのトラップです。
irurur:「…う、動けない。ニクさん、助け…
Nicrm:「うーむ、俺もすでにうごけんのだか。
miyuki:「あぅあぅ。
すでに前衛二人がアンクルスネアの餌食に。
ハンターさんはゆうゆうと矢をつがえ、プリーストの深雪嬢にその先を向けます。
miyuki:「
あーめん。
irurur:「Σ(TдT
Nicrm:「俺も念仏唱えて待ってるか。
第一回PvP大会、
戦闘にすらならずに終了。*9
さて、再びPvP待合室。
spit:「なるほど、だいたいわかったぞ。
と、スピット。
appi:「なにがですか?
spit:「PvPの戦い方とか。
ita:「それがわかると、何か意味が?
spit:「近接職と違って、マジ、ウィズは戦い方を考えないと勝負にならんのだよ。
shintisu:「そーゆーもんなんですか?
spit:「モンなんです。
*10
irurur:「ところで、アブさん、戻ってきてないみたいですけど?
PvP待合室で再び待ち合わせをした一行でしたが、アブが戻ってきていません。
どうしたのかしらと、皆心配顔ですが、
spit:「ほっとけ。
と、立ち上がりながらスピット。
spit:「第二回戦といこーじゃねぇか。
miyuki:「それもそーだね。
ita:「アブが抜けるたとなると、シンさんチームの戦力が落ちるね。
irurur:「組みなおしますか。
miyuki:「そだね。
Nicrm:「俺はどっちでもいーぞ。
appi:「気にもとめない姿勢がさすがです。みなさん。
shintisu:「いつもこんなですか…
appi:「いつもこんなです。
アピはにっこり、笑いました。
さて、パーティを組み直し、再びPvPフィールドへ。
今回の舞台は森の町、フェイヨンです。
irurur:「このメンツで勝てるんですかね…
ita:「ハンデとしてはちょうどかな?
spit:「プリ発見次第、撃破だね。
と、スピットチーム。
三人です。
アブが抜けた分のバランスを調整するため、シンティスチームにニクロム、深雪嬢、アピを入れました。
回復は自力ですが、突破力はギルドRagnarokでの上位三人です。
*11
spit:「いくぞ!
三人は武器を構え、フェイヨン奥の階段を駆け上がりました。
その奥には、
miyuki:「きたー!?
appi:「キリエエルレイソン!!
Nicrm:「迎え撃つぞ、リーダー!
shintisu:「はいっ!
spit:「つっこめー!
第二回大会の戦いの火ぶたが、きって落とされました。
spit:「シンティス!!
shintisu:「うあ!スピさんきたっ!?
spit:「ベンチはわたさーん!
appi:「そういえぱ、そんな戦いだったんですね。
miyuki:「
ワスレテイタ。
shintisu:「負けるもんかー!
短剣を引き抜き、スピットを迎え撃つ準備は万全。「さぁ、こいっ!」と構えますが、
spit:「近接するか。
ぴたりとスピットは停止。
shintisu:「なっ!?
spit:「魔導士なめるなっ!
ソウルストライク Lv9!!
五つの精霊が弧を描いてシンティスさんに襲いかかります。
突破力はパーティ随一のスピットです。その打撃力はナイト、アサシンすらも軽く凌ぎます。しかも、それが五発分。
当然、一次職のシーフ、シンティスさんは…
shintisu:「ぐは…
miyuki:「ああっ!シンたんっ!
appi:「
大人げない…
Nicrm:「えげつな…
spit:「
これが勝負の世界だっ!
ふっと、スピットは帽子のつばを降ろしてにやり。
miyuki:「よし、わかった。
はっとするスピットの後ろには、すでに深雪嬢の姿。
miyuki:「
死ね。
spit:「をわああぁ!?
ぶんっと、深雪嬢はワークワンドを振り上げ…
spit:「いるるっち!助け…
振り向けど、いるるさんはニクロムと交戦中。
spit:「イタ…
は、「きゃーきゃー」言って逃げているアピを追っかけています。よく見ると、アピはこっちに気づいている様子。「にやり」
*12
spit:「あぅ…
miyuki:「
撲殺プリー!
spit:「んなら!
負けっかー!!
負けるな男の子!
あーんど、女の子!
世紀の勝負の結果は…
spit:「後は任せた!いるるっち!イタ!!
irurur:「やられました…
spit:「って、早いよ!!
miyuki:「生き残ってるのは…
フェイヨン奥の階段、その上と下。
ナイトの二人が雌雄を決さんと、向き合います。
ita:「勝負だ、ニクロム…
Nicrm:「望むところだ…
shintisu:「世紀の対決!
spit:「がんがれー。
appi:「果たして、勝者は…
ita:「行くぞ!
Nicrm:「おうともさ!
イタが剣を振るい、階段を駆け下ります。迎え撃つニクロムは、剣を大上段へと構えました。
ita:「ツーハンド・クイッケン!!
イタの身体がかっと輝き、その敏捷度がぎゅんとあがりました。
*13
対するニクロムもまた、
Nicrm:「
オートカウンター!!
みんな:「
三 ゜д ゜)!!!
Nicrm:「
まちがえたー!!*14
くいっとイタはニクロムの横に回り込み、
ita:「バッシュ!!
*15
Nicrm:「げきちん…
ばたり。
最後に立っていたのは、イタでした。
spit:「勝者、スピットチーム!!
たからかに、スピットが宣言しました。
その時でした。
「フロストダイバ!!
spit:「なにっ!?
イタの身体が氷結魔法、フロストダイバに凍結させられました。
その場に現れたのは…
spit:「
アブ!?
Abd:「ユピテルサンダー!!
*16
spit:「うぬぬぬ。
miyuki:「この場合、勝者は?
スピットはくぬぬぬと奥歯をかみしめつつ、言いました。
Abd:「卑怯者とは、心外な。
ふんっと胸を張って、アブは言いました。
みんな、そろって苦笑いです。
spit:「よし、お前の言い分はよっくわかった。
スピットは言いました。
spit:「てめぇ!
決闘だ!!
Abd:「なにを!?いいでしょう!
受けてたちますよ!!
appi:「ああ、今日はPvP大会で一日終わりそうですね。
miyuki:「いーんじゃない?
shintisu:「なんか、僕のせいでしようか?
ita:「いや、いつもこんなんだ。
irurur:「ですね。
Nicrm:「オーケー、つきあうぜっ!
そしてPvP大会でその日一日は暮れていったのでした。
プロンテラベンチの面々は、いつもこんなんです。
*17