studio Odyssey



街巡り 〜アルデバラン〜



 プロンテラの北。
 そこには、高い山脈がそびえていました。

 ミョルニール山脈。

 スピットはその山の中で…

ミョルニール山脈にて

 迷子になっていました。



街巡り 〜アルデバラン〜


 ウィザード、スピットは冒険者です。
 ここ、ミドカルド大陸をところ狭しと駆け回る、冒険者です。いや、の、はず。


spit:「迷子かよぉ。

 山道を、スピットはとぼとぼと歩きます。
 スピットはプロンテラの北、アルデバランという街に向かって歩いていました。いや、歩いている、つもりでした。*1

 冒険者スピットは、今までにもいくつもの街、ダンジョン、フィールドを巡っていましたが、それでもまだ、行ったことのない大地は残されていたのでした。前回の炭坑ダンジョンもそうです。そして、今スピットが向かっている街、アルデバランもそのひとつなのです。

appi:「あれー?スピさん、どこにいるんですかー?

 と、スピットに電波が届きました。
 アピも冒険に出てきたようです。

appi:「どーせなら、どっかに経験値稼ぎにでも行きましょうよー。

spit:「いいか、アピ。
appi:「はい?

 スピットはきっぱりと言いました。

spit:「俺は今、たっぷり迷子なのだ。


appi:「自慢になりません。


spit:「たすけてー。

 電波の向こうで、アピがため息を吐いていました。


 スピットはアピに電波をとばしてもらいながら、山脈の道を抜けていきます。
appi:「地図とか、持ってないんですか?
spit:「ないねぇ。
appi:「迷子になるためにいるみたいですねぇ。
spit:「えーと、この道を昇っていくのかな?
appi:「そーです。そうすると…


迷子、保護

appi:「私に会えます。
spit:「なんで俺より後に出たアピが先にいるんだー!?


 迷子だったからです。


appi:「アルデバランはこの峠を越えた、奥ですよ。
spit:「ふむ。

 アピとふたり。スピットは峠を越えて、水路の街、アルデバランを目指します。

spit:「なんか、アルデバラン付近は、気持ちの悪いフィールドだな…
 と、スピットは昼なお暗いアルデバラン付近のフィールドを見回してぽそり。アピが続きます。
appi:「この辺はモンスターも強いですし、私たちふたりで大丈夫ですかね…
 ちょっと不安げにアピが言った時でした。
 草むらの陰から、モンスターが飛び出して来ました。

spit:「細バッタ!?
appi:「カマキリですって!

 素早く、アピが呪文を唱えます。「キリエエルレイソン!」

 ぴかっと、アピの頭の上だけで、光の十字架がはじけました。

appi:「…


appi:パーティ組んでない!?

spit:「臨公パーティで抜けるからだ。

 カマキリモンスター、マンティスがスピットに向かって襲いかかってきます。
spit:「これ、強いの?

 アークワンドを構えて、スピットは聞きました。
spit:「ナパームビート!
 ばんっと、マンティスの身体の前にあった空気がはじけます。ふっとのけぞったマンティスに向かい、スピットは続けて魔法を放ちます。
spit:「ソウルストライク!!
 五つの精霊の弾がマンティスをはじき飛ばしました。マンティスの細い身体はその衝撃に耐えきれず、地面に崩れ落ちました。

マンティスというモンスターです
spit:「細ばったー。
appi:「カマキリですって。

 なんて言いながら、ふたりはアルデバランを目指します。




水路の都、アルデバラン




spit:「あるでばらーん!

spit:「はじめてきた。
appi:「私もです。

 たいしたモンだな、ウィズとプリだけで。*2

spit:「さーって、観光といくか。
appi:「そうですね。

 スピットとアピは街の入り口にいた守備兵に話かけました。
 この街にある観光名所や、武器、防具屋。酒場の位置など、守備兵は快く教えてくれます。

appi:「ありがとうこざいます。
 一通りの説明を受けて、スピット。

spit:「んなら、まずは…

アルデバランといえばここです!
 スピットたちがいつもお世話になっている、カプラさんこと、カプラサービス本社がこのアルデバランにはあるのでした。

 カプラサービスとは、このミドカルド大陸全土に広がる総合冒険者サービスを行う会社で、スピットたち冒険者たちが持ちきれないアイテムを預かったり、商人のカートの貸し出し、その他諸々のサービスを行ってくれる、冒険者たちの拠り所となっている女性たちをまとめる会社なのでした。

 途中、街にいる人たちとスピットたちは話しながら歩いていました。

 そして、気づいたことがひとつ、ありました。

appi:「アルデバランのみなさんは…

みなさん、日本語がおかしいです!


spit:「方言みたいなもんだろう。*3



 さて、そんなこんなで、カプラ本社。

 早速とスピットたちは中に入ってみました。

「いらっしゃいませー。

spit:「ぉ。
 スピットたちを迎えてくれたのは、カプラサービスの女の子。茶色の短い髪を元気に揺らす、ビニットさんでした。

「いらっしゃいませ!カプラタイプ、ビニットです。ではここで、お客さまだけに教える、カプラ特級秘話!」

spit:「カプラさんの秘密!?

 スピットは目を輝かせます。

appi:「…

 アピはそんなスピットをジト目です。

「実は、私たちカプラ…

 ぷるるるるっと、ビニットさんのポケットの中から、音がしました。「あ、携帯が…」


spit:Σ(゜п ゜!!



「もしもし、あ、ひさしぶりー。うんうん、元気ー。あー、それでさー…

spit:「携帯って、なんだっ!!

 と言うより、この世界に携帯電話があることの方が不思議です。


そうなんでしょうか



 スピットとアピはカブラ本社を巡ります。
 サインをくれるというカプラさんに、サインをもらおうとしてアピに引きずられたり、末っ子のカブラさんに「Wの名を持つカプラ…」とか言ってみたり。「きっとツインバスター(以下略)」

 なんだかんだと楽しくお話をして、ふたりはカプラ本社を出ました。*4

 そして街を巡りながら、次はスピットが行きたいと言った、セージギルドに向かいます。

 そしてセージギルド前。

セージギルド入り口 spit:「うーむ。

appi:「はいれませんねー。

spit:「入れるようになったら、また来るしかないか…
appi:「ですね。ちょっとどこかで休憩しましょうか。


 とことこと、ふたりは街の西側にある酒場に来ました。*5

appi:「天気いいですし、なんか飲み物かって、外で座って飲みましょうよ。

spit:「…とりあえず、ビール。

appi:「昼間からー!?*6

 とは言っても、お金のないスピットはアピににんじんジュースを買ってもらい、ふたりは酒場の前にあるベンチに腰を下ろしました。

appi:「どこに来ても、ベンチなんですねぇ。

アルデバランベンチ  ちゅーちゅーとにんじんジュースをすするスピットの横顔に、アピが言います。

spit:「おちつくー。
appi:「そうなんですか?

 午後の陽光の下、スピットとアピは他愛もない話に花を咲かせていました。*7


 その時、スピットとアピの頭の中に、電波が届きました。

irurur:「あれ?スピさんとアピさん、アルデバランでデートですか?

spit:「…は?

 ちゅーちゅーとすすっていたにんじんジュースを、スピットは思わず落としそうになります。
 ふいと隣を見ます。隣に座っていたアピが、ちょっと笑いながら返しました。

appi:「ち、ちがいますよぉ。

irurur:「あれ?でもふたりなんですよね?
spit:「ふ、ふたりだからと、デートとは限らないぞ。
appi:「そ、そうですよっ。

 ベンチに座ってふたり、しどろもどろに返します。
irurur:「あ、そーなんですか。
 いるるさんのちょっと笑った風な感じの声が聞こえてきます。

appi:「そ、そうですっ。
spit:「ああ、そうさ。

 スピットは勢い、言いました。

spit:「何しろ、真の目的は時計台ダンジョンに挑むことだかんな。

 勢い、言ってしまいました。

Ahsgrimm:「なにっ!? そうなのか!?
Nicrm:「ならばアルデバランに集合だー。
irurur:「ですね。


spit:「って、いつからいたんだ、オマエら!!

 電波でグリム、ニクロムが返します。

Ahsgrimm:「じゃましちゃ悪いかと。
Nicrm:「ま、そういうわけで。

irurur:「スピさん、集合場所はどうしますかー?

 にこにこ笑うような、いるるさんに声に、スピットは返しました。


spit:「時計台南東にある、パラソルの下に集合…

irurur:Ahsgrimm:Nicrm:オッケェ!!


 そんなこんなで…
時計台前広場
spit:「んじゃ、いくか。

 スピットは立ち上がり、アルデバランの街の中心にある、時計台ダンジョンを目指します。

 ふと、小声に言いました。


spit:オマエら、ヒマだろ。

Ahsgrimm:失敬な。



 そして入り口前。

appi:「では、いざ時計台ダンジョンに挑みましょうか。

 苦笑いのアピです。

それをいっちゃあ

 時計台ダンジョン。
 このダンジョンはアルデバランの街の中心にある、時計台の中のダンジョンのことです。
 高レベルモンスターが蠢くこの場所は、上級冒険者たち格好のダンジョンで、スピットたちにはかなり厳しいダンジョンです。当然、スピットだってわかっています。ええ、だって、勢い、言ってしまっただけですから。

 時計台の鐘の音が、ごーんごーんと響いてきました。

spit:「…このダンジョンに行ったこと、ある人は?
Ahsgrimm:「あるぞ。

spit:「で、その時の感想は?


Ahsgrimm:死にました。*8

appi:「…あ、青ジェムいくつあったかな…

spit:「…そうか。

 スピットは帽子の位置を、きゅっと整えました。

spit:「行けばわかるか!

 スピットたちは時計台ダンジョンの中に飛び込みました。


とつげきー

spit:「道案内は任せた。
irurur:「デビルチ狩りとしましょう。
Ahsgrimm:「妥当ですね。

 そして一行は地下へと下ります。


Ahsgrimm:「この魔法陣の中から、デビルチと言うかわいい生き物が出てくる。

 と、グリム。
気づけ、オマエら…
irurur:「でも凶悪。

appi:「なんで魔法陣から出てくるんでしょう?
spit:「きっと、この魔法陣が向こうの世界とつながってんだろ。
appi:「へー。
spit:「嘘だ。
appi:「はうっ!?

spit:「本当は、時計台ダンジョンが時を管理する魔法の力にあふれているから、時間と空間のゆがみが起こって、過去、現在、未来、別次元と一時的に繋がりやすくなってしまうのが原因なんだ。そのゆがみを強制するために、時計台の随所に魔法陣がかかれているんだが、ユミルの爪角の件で、そのバランスが崩れはじめているんだな。
irurur:「へー。
Ahsgrimm:「さすがIntウィズ。

spit:「嘘だ。

Nicrm:「嘘かよ〜。
appi:「あれ?なんか、かわいいいきものいますよ?


Ahsgrimm:irurur:デビルチ!?


 っていうか、気づけよ!!


乱戦!!
Nicrm:「強いなー。
Ahsgrimm:「痛い!
spit:「がんばれー。
irurur:「あっ。

 いるるさんが声を上げました。
 見ると、別の魔法陣から、新たなデビルチが姿を現そうとしています。しかもその魔法陣は、アピのすぐ隣でした。

appi:「!?

irurur:「アピさん!!
spit:「誰か、引きつけて!ユピテル…

 スピットの魔法の詠唱が響きます。しかし、魔法陣から現れたデビルチは、それよりも早くアピに向かって襲いかかりました。

appi:「キリエ…!?
 アピが防御魔法を唱えます。
 しかし、
spit:「アピ!?

 アピの魔法、スピットの魔法よりも早く、デビルチはアピに向かって飛びかかりました。

appi:「!?
 その時でした。

 アピとデビルチの間に、ひとりの商人の少年が割って入ったのです。
 そして商人の少年は、言ったのです。

商人の少年:おばさん、大丈夫?

appi:「お、おば…?

spit:「下がれ、商人!!

 呪文の最後を、スピットが結びました。

spit:「ユピテルサンダー!!









 デビルチの出現する魔法陣の近くには漁師を置いて、「AC防御はまかせた」「うぃ〜」 スピットたちは現れた商人の少年に向かって礼を言いました。

Ahsgrimm:「ないす突貫。
irurur:「いやぁ、危なかったです。
appi:「ありがとう。
spit:「俺からも礼を言おう。

 と、スピット。
 帽子をちょいと取って、言います。

商人の少年:「いやだなぁ、スピットおじさんらしくない。

spit:「お、おじ…

 ちょいとあげたスピットの手が、ぷるぷると震えていました。
spit:「お前、俺のことを知っているようだが?
商人の少年:「ええ、よく知ってます。
spit:「そうか。

 かぽっと帽子をかぶって、スピットは言いました。

spit:「であれば、話は早いな。
商人の少年:「はい?

 ばっと、スピットは構えました。

spit:「俺をおじさんというのはまだ許すが、アピをおばさん呼ばわりした罪は、重い。

衝撃!?

 きゅうううんっと、商人の少年の足下に、魔法陣が生まれました。

商人の少年:「おわわ!?

spit:サンダーストーム!!

 青い雷が、盛大に炸裂しました。

appi:「あー…おばさんと呼ばれたのはショックだけど、何もそこまで…
spit:「ちっ。

 間一髪、かわした商人の少年は壁際でがくがくと震えていました。

壁際に逃げ出す商人
spit:「よし、10秒時間をやる。しっかりと名を名乗れ。

appi:「わたしをおばさんという、君はだーれ?
irurur:「しっかり根に持ってますね。

 二人の視線に壁際に追い込まれた商人の少年は、しどろもどろに言いました。


ubu:「わ、私は初心と書いて、ウブと言う者ですっ。ええっと、そのー、信じてもらえるかわかんないんですけど、スピさんのギルドメンバーのアブドゥーグと、イブリンの間の生まれた、長男なんですっ。

 初心と名乗った商人の少年は言いました。

spit:「…よし、わかった。

ubu:「ほ。

spit:じゃあ、死ね。

ubu:なんでっ!?

appi:「ま、まぁまぁ、スピさん。落ちついて!
spit:「がるるる…

irurur:「これはあれですかね。
Ahsgrimm:「スピが言っていたこともまんざら嘘ではないと。
Nicrm:「なにが?

appi:「時計台ダンジョンの中は、過去と現在と未来とが曖昧になって、魔法陣で繋がっちゃうって、スピさんが言ってたじゃないですか。

spit:「んなもんは、口から出任せだ!
ubu:「うあぁぁ、にんじん無料で渡すんで、ゆるしてくださいー!

spit:「…






spit:「とりあえず、そういうことにしといてやる。

 帽子をかぶり直し、アークワンドを抱え直したスピットが言います。
 道具袋の中には、スピットの持てる限界のにんじんが入っているなんてのは、些細な問題です。

spit:「で、時計台ダンジョンの地下って、こっちでいいのか?
Ahsgrimm:「おう。でも、地下は初心はきついんじゃ?
spit:「しらん。
ubu:「をわ。
spit:「自分の身は自分で守れ。パーティには、いれてやる。
ubu:「おばさん、キリエしてもらえます?
appi:「しょーがないなー。
spit:「アピをおばさん呼ばわりするな!
irurur:「スピさんが怒ることでも…
Nicrm:「実際、初心から見たら、おばさんだし。
ubu:「ほらほら、にんじんですよー。
spit:「俺は馬かッ!!

 そして、一行は時計台地下を目指します。



spit:「とつげきー!


突撃開始に天の声

spit:「なにッ!?

 聞こえた天の声に、皆顔を上げました。

「一部サーバに不具合が発生したため、サーバを再起動します」

 じっと、スピットたちは一点を見ました。

ubu:「なんで私をみるんですかー!?

Nicrm:「一部…
Ahsgrimm:「不具合…

ubu:「おばさん、なんとか言ってください!

appi:「限界ぎりぎりまで、突貫?


ubu:Σ(TдTii(そうじゃないです

 スピットは勢いよく、答えました。

spit:「当然だっ!!



Nicrm:「ラスボスに負けるな〜。
irurur:「本当にラスボスですね。
Ahsgrimm:「よーし、二刀を見せてやる。
appi:「いけるとこまで行きましょう!

 一行は時計台ダンジョンを地下へと向かって、駆け下りていきます。

突き進め!パーティ、プロンテラベンチ!!

 乱戦をの中を突き進み、迫る敵をうち倒しながら、スピットたちは進みます。
 天の声が、最後の時間を告げようとしていました。

spit:「初心!
 迫る敵を蹴散らしながら、魔法の詠唱の合間を縫ってスピットは言います。
 振り返りざまの台詞に、その頭の上の帽子が軽く、楽しそうに踊っていました。

spit:「未来の俺たちって、どんな感じになってんだ?

ubu:「スピさんたち?

appi:「相変わらずなのかな?
ubu:「えっと…

 初心はちょっと考えて、言いました。


ubu:「相変わらずに、漏れてます。

irurur:「それかー!!
Ahsgrimm:≧w≦)b !!(ビシッ
Nicrm:「わかりやすい…

appi:「それはよかったです。


spit:「おーっしゃ!!

 スピットは元気よく身を翻して、アークワンドを突き出しました。
spit:「ならば記念に、しかと見ておけ!

 スピットの呪文の詠唱に、巨大な魔法陣が生まれました。

spit:「ロード・オブ・ヴァー…!!








「ただいまー」

 夕暮れをすぎたプロンテラ。
 初心は我が家のドアを開けて言います。

「おかえりなさい」
 母である、イブリンが息子を迎え入れました。
「今日も一日、冒険していたの?」
「あ、うん」
 短く答えて居間の方を見ると、そこには父である魔導士、アブドゥーグの姿もありました。
「あ、父さん」
「ん?」
「今日、父さんたちが一緒に冒険していたころのスピさんにあったよ」

 初心は今日時計台ダンジョンであったことを、ひとつひとつ話していきました。

「そうか、漏電し放題だったか」
 アブはおかしそうに笑います。
「ずるーい!」
 とは、話を一緒になって聞いていた、初心の妹、えぶです。
「私もスピさん会いたかったよー!」
「えぶはまだノービスじゃないか。アルデバランに行って、時計台に入るのなんてムリだよ」
「ムリじゃないもん」
「というより、えぶ」
 アブは真剣な顔で言います。
「漏電雷魔導士にあこがれるのはやめなさい」
「ええぇーっ」
 えぶは不満いっぱいで言います。
「なんでー?」
「仮にもパパの娘なら、一流の氷マジシャンを目指しなさい。雷魔法より、よっぽど使える」
「氷魔法は、じみー」
「はぅあ!?」
「こらこら、えぶ。あんまりパパをいじめないの」
「私は、ちょー強力スプレッド爆発魔法、ロード・オブ・ヴァーミリオンを連発するような、かわいい女の子ウィズになりたいの」
「そんなの連発するのはかわいいと果たして言うか」
 初心はぽつり。
「いいの」
「いい、えぶ」
 イブリンは娘のえぶに向かって、諭すようにして言います。

「雷魔導士を目指すのはいいけど、スピの元で修行するのは、ママも考えもの」
「なんで?」
「接頭辞に漏電とつくから」
「激しく同意」
 ぉ?とか言って、アブ。

「いいもん、漏電でも」
「いいんだ!?」

 えぶはきゅっと祈るように手を組むと、あこがれるような視線で部屋の片隅を見て、言いました。

「あぁ、お師さま。いつか、お会いしとうございます」

「…母さん」
「はい?」
「えぶは、ご飯抜きで」
「はい」

「えええぇっ!?」






 数日後のアルデバラン。
 現在。

 スピットは途方に暮れていました。

spit:「さーてこまったぞ。

 眼前には、プロンテラへ続く山道が広がっています。

spit:「俺ははたして、一人でプロンテラまで、帰れるのかね?



 高レベルモンスターうごめく山道を眺めて、スピットは苦笑いに口許を曲げました。

spit:「ま、いくしかねぇか…

 帽子をかぶり直し、歩き出します。

 目指すは、プロンテラ。
 そしてプロンテラでは…

 すでに新しい冒険がスピットの事を待っていたのでした。



ebu:「えーと、お師さまの帽子屋さんは、この辺だっけ…




帰り着け!spit!!
*9



*1 ベータ2から実装された都市。あまり活気はなかったし、ベータ2時代はspitはレベル上げばかりだったので、あまりベータ2時代に実装されたとこにはいっていない。
*2 途中には、かなりの強悪モンスターがいたりするのですが。
*3 アルデバランの人々の日本語は、かなり微妙です。韓国語の訳が変なんですな。実際にいって、話してみてください。笑います。っていうか、あんまり通じません。
*4 あんまり書くとネタバレになっちゃうので、この辺はみなさんもアルデバランに言って、お話してみてください。
*5 2次職のセージはまだ未実装。
*6 そんな名前のギルドを見つけたら、チェキ。(ないしょ)
*7 ちなみにアルデバランのベンチは、座れます!というより、いつものプロンテラベンチの方が、座れないベンチで、珍しいのです。(古いベンチは多くが座れない)
*8 グリムのレベルはギルドで上から2番目。(一番はいるるさん)
*9 ちなみに帰れなかったので、ポタ屋にポタしてもらいました。
 そんなわけで、次回はspitの初めての弟子、えぶの登場です。おみのがしなく!