studio Odyssey



漏電臨界点、突破!



spit:「まったり…

 いつものプロンテラベンチ前。スピットはつぶやきます。

syu-ho:「まったりですねぇ。
 こちらはベンチの商人、萩帆。
irurur:「することないですねー。
 いるるさんもまったりしてます。
Ahsgrimm:「課金以来、装備が弱くなったから、無茶できないしなー。
 とは、いつの間にかベンチメンバーとなっている、アースグリム。
miyuki:「まったり、またまた。
 佐倉家、三女(?)深雪嬢はにこにこしながら言います。

spit:「あ、そういえば、深雪嬢はプリーストになったんだな。

 と、言葉の先にいた深雪嬢が振り向きます。
miyuki:「そうだよ、最後のプリーストだよ。

 深雪嬢は笑います。最後の、と言っても、深雪嬢がプリーストになったのは課金制度前の話です。つまり、課金制度前最後の、という意味です。実際、課金が始まる前、大聖堂で最後に彼女が祝福を受けたあと、スピットたちが大聖堂から出ようとしたときには、すでに課金前の締め出しが行われていたのでした。*1

miyuki:「なにげにもう、リザとか使えたりりして。

syu-ho:「はやっ!*2

miyuki:「スピたん死んでも、もー、アピたんだけに頼らなくてもへいきだよー。
spit:「よかったな、しゅーちゃん。得意先が増えたぞ。
syu-ho:「それだけ死ぬ、と。
spit:「あー、ヒマだなぁ。

irurur:「ですねぇ…
Ahsgrimm:「空はこんなに青いのに。
miyuki:「あおー。

本日のプロンテラベンチ

 プロンテラは今日も快晴でした。



漏電臨界点、突破!


syu-ho:「そだ。
 と、萩帆が言いました。

syu-ho:「することないなら、買い出しつきあってもらえません?稼ぎ時の今、稼いどこーと思って。
spit:「あー、いいけど。どこに買い出し行くの?
syu-ho:「フェイヨン。
spit:「フェイかぁ。
 だるそうにスピット。
syu-ho:「イブリンさんからの依頼分の、アルバレスト他、アーチャー装備を買いに。

spit:「あいつは結婚してもまだ冒険する気か!!
 ばっと顔を上げて言います。

syu-ho:護身用らしいですよー。

miyuki:「なるほど。
spit:アブから身を守るためか。

Ahsgrimm:「おいおい。

miyuki:「ふぇいだと、アピたんいるね。
 深雪嬢はむにむにとパーティメンバーの位置を確認して言います。「フェイDかな?」

spit:「座ってても、なんだしな。

 あくび混じりに立ち上がりながら、スピットは言います。


spit:「フェイD、とっかーん。

Ahsgrimm:「あくび混じりで突貫できるレベルになったのか!?
irurur:「いや、突貫死自体が朝飯前なのでは…
miyuki:「むしろそれ。

syu-ho:「いきましょー。

 一行は近くにいたポタ屋にワープポタルしてもらい、フェイヨンはその武器、防具屋へと向かいました。*3


 せかせかとお買い物をする萩帆を、スピットたちは座って待ってます。
 せかせかと荷物を載せるついでに、ぴょいと座っていた深雪嬢までカートに中にぽい。

syu-ho:「うしょ。

フェイヨン、武器と防具の店
 カートに乗せられた深雪嬢をみて、スピット。

spit:「プリ、6zから〜。

Ahsgrimm:「安っ!
irurur:「しかもなぜ、6!?
miyuki:「あううぅ。
syu-ho:「はっ!まちまえた!!



 さて、一行はその足でカプラさんの前へと行きます。
 萩帆は買った物を持って、そのままプロンテラへと戻るためのポタ探し、スピットたちはフェイヨンダンジョンから戻ってくる、アピ待ちです。

 と、カプラさん前でスピットたちが待っていると、ふと、人垣の向こうを見て、深雪嬢がいいました。

カプラさん前にて
miyuki:「インくん?
spit:「ん?

 と、スピットも振り向きます。

 そこには、栗色の髪をした、アコライトの男の子がいました。

spit:「知り合い?

衝撃の事実!?

spit:Ahsgrimm:irurur:Σ( ゜□ ゜!!!


 マヂ話にしか聞こえないんですがっ!?

inc:「ペットです。

マヂ話らしいです
 佐倉家、おそるべし!


miyuki:「インくん、これからフェイヨンダンジョンに行くけど、いくかい?
inc:「ふぇいですか?いいですよ。
miyuki:「3F?
Ahsgrimm:「4F。
miyuki:「4かヨ!?
inc:「(死にたくない。死にたくない。まだ死にたくないよぉー。がくがく。
miyuki:「だいじょうぶ。

 ぽんっと優しくインくんの肩をたたいて、深雪嬢。

miyuki:「死んでもいきかえるー。

inc:(TロT


miyuki:「いこっ。
 深雪嬢は言います。
 スピットもまた、言いました。

spit:「大丈夫。任せとけ。

センパイ!サスガ!!


 ちょうどやってきたアピが言いました。

appi:「突貫ツアーなんですか?
Ahsgrimm:「それ以外のツアーがこのパーティにあったら聞きたい。
irurur:「ですねぇ…





 そんなこんなで、一行はフェイヨンダンジョンを下り、4階までやってきました。

inc:「がくがく。
spit:「だーいじょうぶだって。
appi:「そぉーですよぉー。

 がくがくふるえているインくんに向かって、にこにこ笑いながら、スピットとアピは言いました。

spit:appi:「アサシン二人がなんとかしてくれるから。

Ahsgrimm:irurur:三 ゜д゜)!!

spit:「いやそうな顔をするな。


inc:「み、みなさんは、フェイでも苦戦しないくらいに強いんですか?
irurur:「さぁ?
Ahsgrimm:「どうでしょう?

spit:「マテ。そこの廃人。

appi:「プロンテラベンチの面々は、なぜかまゆみさんも含め、アサシンはつよーいです。

miyuki:「それ以外はふつーだよ。

inc:「でも、みんな二次職だ…

 言われて見回すと、確かにインくん以外は皆、二次職です。

miyuki:「でも、わたし、なったばっか。

 その割には、リザラックションとか、使えますが。

spit:「俺もなったばっかだぞ。

 その割には、LoVが10レベルとか使えますが。

appi:「あ、でも、スピさんはウィザードの中でも、群を抜いて…

 アピは言います。

appi:弱いです。



spit:q(=w=;

Ahsgrimm:「そういえば、スピはなんでそんなに弱いんだ?
appi:「すぐ死にます。
miyuki:「アピたんなしでは、生きていけない。
irurur:「そーいえば、レベルの割にはよく死にますし、ソロ狩りもままならないみたいですしねぇ。

 みんなが、ふと、口にします。

spit:…イジメ、カコワルイ!

appi:「素朴なギモンです。

 スピットはむにむにと口を曲げます。

 そして、ふぅとため息をはきました。

spit:「俺は別に、弱いわけじゃないぞ。


みんな:なんか言った?


spit:「俺はなー、耐水属性仕様、乱戦特化型Wizだから、ソロとかはだめなんだよ。

Ahsgrimm:「それは通常戦闘では役に立たないという!?
irurur:「最後勧告。

 そうです。
 スピットは、雷魔法以外の魔法は、念魔法をのぞいて、何一つ、使えません。
 多くの魔法使い、魔導士が雷魔法とセットで取得している、敵を凍らせる魔法、フロストダイバですら、使えません。よって、ソロでの狩りはアクティブモンスター、詠唱反応モンスターともに苦戦を強いられてしまい、ままなりません。

Ahsgrimm:「フロストダイバくらい、とれば?

spit:「人にはできること、できないことがあるのだ。

 スピットはふんっと口をとがらせて言います。

appi:「?
 アピは首を傾げました。

spit:「でもだなー!

 話題を変えるように、ぴっとアークワンドを取り出し、スピットは言いました。

spit:「俺は、雷魔法なら、誰にも負けない!!*4

 ちょうど、角の向こうからモンスター、ソフィーがこちらに襲いかかってこようとしているところでした。
spit:「グリム!ソフィーを引きつけてくれ!
Ahsgrimm:「はいよ。

 と、アサシンのアースグリムはソフィーの前に立ちはだかり、その攻撃を自分に向けさせます。

spit:「アピ!ブレッシング!!
appi:「は、はいっ!

 スピットの命令に、アピははっとして、祝福の魔法、ブレッシングを唱えました。

inc:「能力向上魔法?
miyuki:「DEX、INT、STRを一時的に上昇させる魔法。

irurur:「なにをすんだ?

spit:「深雪嬢、ソフィーに、レックスエーテルナ!

miyuki:「アヒャ!?

 突然に言われて、わたたたっと、深雪嬢はアースグリムが引きつけているソフィーに向かって、レックスエーテルナという魔法を唱えました。
 この魔法は、指定した敵一体を次の1回の攻撃のみ、2倍のダメージを与えられる状態にするプリースト魔法です。
 そして、次の1回の攻撃というのが、多段攻撃であった場合、その多段攻撃のすべてのダメージを2倍にすることができるのでした。

spit:「よーく、めんたまひんむいて、みとけ!!

 スピットは構えます。
 その口から響く呪文の詠唱に、ソフィーの足下に魔法陣が生まれました。

appi:「ドーピングモード!?
miyuki:「むしろ、リミッターオフ!?

spit:「これが、俺の最強魔法だっ!!



漏電臨界点、突破!!





Σ( ゜□ ゜!!!


miyuki:「き、キター!!

irurur:「いった…
Ahsgrimm:「初めて見た…

inc:「振り切れたー!?
appi:「おおっ!!


spit:「ふ…

 と、笑って、スピットは帽子のつばをちょいとあげました。


spit:「俺の名は、雷魔導士、スピット…

 きめっという感じのスピットに向かって、こぶしをきゅっと握ったアピが言いました。



appi:「まさに、名実ともに、漏電雷魔導士!!

spit:あうっ!?


miyuki:「見事な漏電っぷり!
Ahsgrimm:「無駄にオーバーキル。
irurur:「漏れすぎですよ〜。


 拍手しながらも、喝采とはちょっと言い難いパーティメンバーからの言葉に、スピットは「あぅぅ」とその場にしゃがみ込みました。
 そして近くにいたインくんの袖をひっぱりながら、

spit:「どーおもう?とーおもう?あいつら、どーおもう?

 泣きべそ気味に、聞きました。
 インくんちょっと考えて、困ったように苦笑いを浮かべて、返しました。

inc:「えーと…


inc:「すごいと思います。


inc:いろんな意味で。


 それはもう、まさにそれなのでした。*5


*1 彼女の転職後、ベンチに戻ろうとしたら、もう入れませんでした。なむー。
*2 リザ。リザラクション。おなじみ、復活魔法。使用の際にはアイテム、ブルージェムストーンを使用する。
 この魔法を覚えるのには、プリーストのリカバリーLv1以上、SP回復力向上Lv4以上が必要。
*3 フェイヨンの奥には弓手村があるので、アーチャー装備が充実している。
*4 ちなみにspitの雷魔法はすべてLv10。なんか1こくらい、道を究めた者に、特別な魔法くらいください。グラビティ…(世の中には多色マジ、ウィズが多すぎですっ)
*5 ごらんのように、Ragnarok Onlineでは9999以上のダメージは表示されません。でもカウントはされるらしいです。
 このときのspitの魔法はユピテルサンダー。多段ヒット魔法で、1ヒット、1064を出しているので、ユピテルLv10の弾数が12弾で、12768ダメージ出ています。ちなみに、ソフィーのHPは4690。無駄に漏電しまくり。