studio Odyssey



突貫!イズルードダンジョン!!



 ざぁざぁと流れる水の音。
 スピットはくらい洞窟の奥へと進みます。

 イズルードダンジョン。
 スピットはいつもの経験値稼ぎ場所にいました。

 でも今日は、いつもの場所でもいつもとは違います。

 まっすぐ歩いて向かう先。
 それはイズルードダンジョン2Fの中心。

 そう。

 中上級レベルの冒険者たちが戦いを挑む場所。

 イズルードダンジョン3Fへと向かっているのでした。


mayumi:「スピたん、正気ー?

 冒険に出て、みんなはどこにいるのかなー?と電波をとばしてきたまゆみ嬢が言います。
appi:「いや、確かに今週末までに転職できるレベルになるにはそれしかないかもしれないですけど。

 ちょっと息切れ気味に言うのはアピです。たったかたったか、プロンテラからイズルードへ向かって走っています。

Abd:「なんだなんだ?どーした?
Grill:「いったい何事だ?
 まゆみ嬢と同じく冒険に出てきたアブ、グリが、飛び交う電波に乗せていいます。

irurur:「スピットさんが自殺しようと!
mayumi:「死ぬなー。
appi:「死ぬと経験値がへりますよ〜。

spit:「知ってる。*1

 きっぱりはっきり、スピットは言いました。


spit:「死ななきゃいいんだろ。


みんな:「いや、無理だから。

突貫!イズルードダンジョン!!


spit:「むー。

 スピットはふてくされていました。

 イズルードダンジョンにすむモンスターは、そのほとんどが水属性のモンスターです。よって、雷魔法の使い手であるスピットにとっては、属性効果で大ダメージを与えることが出来るため、非常に戦いやすい場所なのでした。

spit:「ライトニングボルトの最大ダメージさえ出せれば、3Fの敵も論理的には突破可能なんだよ。
Abd:「その時間、敵は待ってくれません。
Grill:「敵を足止めする魔法もつかえねーだろーが!

spit:「むー。*2

 3F入り口。
 スピットは待っています。

mayumi:「いっちばーん!

到着

mayumi:「っていきなりHPへってるよっ!
spit:「気にするな。

appi:しろ。


 ぞくぞくと、3F入り口にプロンテラベンチの面々が集まってきます。

appi:「スピさんのために、みんな集まってくれてるんですよー。
spit:「ありがたいことだ。
appi:「そして私もいる以上、スピさんは死なせません!
Grill:「おおぉ〜。

irurur:「プリの鑑ですね。
spit:「俺は死なないけどな。

appi:それはない。

スピットとアピ



appi:「はい。

spit:「…

 ばちばちばちっと、ふたりの間に火花が散ります。



spit:appi:ふんっ。


Abd:「ま、まぁまぁ。どっちも戦力ですって。
 アブが言います。

それもどうかと



mayumi:「自慢になんないよー。*3


spit:「よし、行くぞ!

 そして3Fへと、一行は足を運びます。





 いえ、違います。




間違い?

 ってか、ここは4F!?

Grill:「いきなり4Fはないんじゃ…
Abd:「無謀ですねぇ。
spit:「まゆみ嬢がてくてくいくから、ついてっただけだよ。
mayumi:「アヒャ。
appi:「んー。
irurur:「盾になってくれる騎士さんなしで、大丈夫ですかね?

spit:「なせばなる!

 スピットは言いました。
spit:「いくぞ!




早くも



 なりません。

Grill:「マルクとオボンヌの集中攻撃はなしだー。
spit:「へへん、アピー、ざまーみろー!
appi:「あううぅぅ。
Abd:「いや、自分も死んでますよ?
spit:「いいんだよ。


spit:「俺は死ぬのも仕事だから。*4

 マテ。

appi:「私はっ、生き返らせるのがお仕事ですっ!通りすがりのプリさん〜。

 たまたま通りがかかったプリーストに、アピが声をかけます。「すみません〜」

mayumi:「私にひーるー。
irurur:「あ、わたしもほしいですねぇ。
Grill:「いや、通りすがりの人にヒールねだるなよ…

 通りすがりのプリーストさんが聞きます。
「リザですか?

mayumi:「お願いできますか?
appi:「私だけ。

spit:マテ。

appi:「スピさんは、私が生き返らせるんです!


spit:…ならいいや。

 通りすがりのプリーストさんにアピはリザラックションをかけてもらい、生き返ったアピにスピットたちも生き返らせてもらいました。

appi:「まゆみさん、ヒールは?
mayumi:「おねがい。
irurur:「私にもお願いします。
appi:「はいはい。

 アピが皆の体力を回復しているのを横目に見ながら、スピットは言います。
spit:「戻るか。
Abd:「ですね。

spit:「アピのSPも微妙に心配だしな。

 てくてくと、スピットは4F出口へと歩いていきます。
appi:「また、ひとりで歩くー!
mayumi:「自殺志願者?

 後ろから、パーティメンバーがあわててついてきます。


 さて、そんなわけで3Fに戻ってきたスピット一行。
 4F入り口前で、少し休憩を取ることにしました。

4F入り口前

appi:「わかってますか?スピさん。
spit:「なにが?

 バックの中からバナナを取りだし、もぐもぐしながら聞きます。
irurur:「あ、バナナはおやつにはいりますか?
Abd:「入ります。
mayumi:「にんじんあるよー。使用済みにんじん。
Abd:irurur:「なにに!?*5

appi:「いいですか、スピさん。今日は、スピさんのレベル上げにみんな来ているのであって、突貫ツアーではないんですよ?




spit:「…


衝撃発言

 本末転倒!?


appi:「とりあえず、3Fならみんなで戦えば十分対応できますから、ここで戦いましょう。
irurur:「ですね。
mayumi:「盾になるほど回避できないだろうなー。


 そしてスピット一行は3Fをところ狭しと駆け回ります。

 マルク、オボンヌといったモンスターたちも、スピットたちが束になってかかれば多少の混戦も突破できます。
 まゆみ嬢、いるるさんが敵に先制攻撃を与え、グリがファイヤー・ウォールで迫る敵を防ぎます。
 そしてスピットの放つ雷魔法。
 アピは傷ついた仲間を癒し、アブは…

Abd:「お?

spit:「どした?

 乱戦を終わらせて一息ついているとき、ふと、アブが言いました。

Abd:「すまん、ちょっと用事が出来た。
spit:「はぁ!?

Abd:「いや、いま、ちと電波が入ってな。助けを求められてるから、ちょっと行って来る。


spit:「…むしろ、俺を助けろ。
Abd:「では、さようなら。

spit:「マテァ!ゴルァ!!

mayumi:「ふふ。アブきゅん、オンナだな?
Abd:「はぅ!?
spit:「ぬなッ!?
irurur:「そうなんですか?
Grill:「おお〜、そんな話がー?

spit:「をいをぃをい!どこの誰だよ、ヲイ!

 スピット、からみ方がオヤジです。

Abd:「いや…あー…
 アブはぽりぽりと頭を掻いて言葉を濁らせました。が、

mayumi:「私、知ってるー!
spit:「よし、教えろ!
Abd:「わああぁ!待ってください!!

 ばっと、アブはまゆみ嬢の口を押さえつけました。

mayumi:「じゃー、にんじんぷれいの刑でゆるす。
Abd:「それはいやです。


 ってゆーか、どういう刑だ?*6

Abd:「で、では、また明日〜。

spit:「マテェ!

 しゅんっという空気を切る音とともに、アブは蝶の羽根の力に姿を消しました。
mayumi:「ちっ。
 楽しそうに舌打ちするのはまゆみ嬢です。

irurur:「あ、私もそろそろ別の用事があるので、失礼しますね。
Grill:「戦力がたおちー。
mayumi:「がたがたー。
irurur:「また明日、お手伝いします。

 と、いるるさんも笑って、蝶の羽根の力に姿を消しました。

 ざぁざぁという水の流れる音が響くイズルードダンジョンの中、スピット、まゆみ嬢、グリ…

mayumi:「あれ?そういえば、アピたんは?

spit:「ああ、そういえばさっき、てくてく奥の…

 スピットは電波にアピの位置を探します。
 と、近くにもう一つ、パーティメンバーの反応があります。

spit:「!?

 だっと、スピットは走り出しました。
mayumi:「なになに!?
Grill:「リダ!?

spit:「アピの近くにニクロムがいる!!
mayumi:「蟹漁師!?



 そしてたどり着いて、スピットは落胆しました。



時すでにおそし
spit:「…やっぱり。

appi:「ニクさんを助けようとしたら…
Nicrm:「む、無念。


spit:「蟹漁師の力が、負に働くとは…*7
mayumi:「ああっ、癒しアピたんいなくなって、どーすんの!?
Grill:「どーしましょうかねぇ。


spit:「ん?

イズルードにまでも

 スピットは洞窟の奥から歩いてくる、もう一つのパーティメンバーの電波に気づきました。

Panache:「こんにちは。

mayumi:「パナきゅーん!
spit:「ナイスタイミング!


Panache:「みたいですね。

appi:「じゃ、私はニクさんと一緒に戻ってきます。

spit:「よーし!だらば…

mayumi:「再突貫?


spit:「と、その前に…


海はきれいに

spit:「ふーう。
Grill:「最悪。


コラマテ
spit:「おま、そういうキャラだったの!?

mayumi:「なんだかなぁー。




 そしてニクロムとともに戻って来たアピに合流し、一行は…


またかい!

 4F入り口!?



またかい!

appi:「だめですってばー!

spit:「わかってるってば。


聞く耳なし




appi:「もー!どうなっても…


当然ですか?

 こうなりました。


わきすぎです


 学習能力ナシ!!


spit:「なむー。














 深い深い森の中。

 ここはフェイヨン森の中。

 セーブポイントがフェイヨンだったスピットは、よみがえってそのままとことことこの森の中に来たのでした。

appi:「スピさーん。
spit:「ん?

 たまたまセーブポイントが同じだったらしいアピが、後からスピットを追いかけてきます。

appi:「フェイヨンだったんですねぇ。
spit:「アピもか。

 フェイヨン森の中、スピットはよいしょと座ります。
 本当はもうちょっと経験値をためておこうかと思ったのですが、アピも来ました。「しかたない」と、スピットは今日はこれで終わりにすることにしました。

spit:「ああ、そうだ。

 と、スピットは思い出したように言います。

spit:「今日もお世話になりました。

 と、ぺこり。
appi:「なんですかー、いったい。
spit:「いや、アピがいないと、うちのパーティはダメダメだな、と。

appi:「…


appi:「むしろ、スピさんが?


spit:むを!?

 っていうか、そのとおりだし。

 アピはちょっと笑いながら、言いました。

appi:「私がプロンテラベンチ専属プリになる日も、近いですかね。
spit:「ん? っていうか、すでにそうじゃん。

appi:「いえいえ。

 アピは言います。

appi:「そーゆー意味じゃ、ないです。

spit:「じゃ、どういう?

appi:「スピさん、あとどれくらいでウィザードになれるんですか?
spit:「あと2レベルだな。
appi:「じゃ、あとちょっとですね。
spit:「週末はフェイヨンツアーだからな。準備しとけよ。
appi:「アブさんも、スピさんと一緒にウィズになるんですよね。
spit:「そう言ってたな。
appi:「ふふ。

 アピはくすくすと笑いました。

appi:「たのしみ。

spit:「俺も楽しみだ。

appi:「そしたら、私も、ついにプロンテラベンチ専属プリですかね。
spit:「何言ってんだ?

appi:「ふふ。

 頭にハテナを浮かべるスピットに、アピはにこりと笑って、言いました。

appi:「私は、スピさんたちと一緒に冒険できるようになって、ほんとーによかったなーと思うんですよ。
spit:「それはどーも。ま、こっちもおかげで助かってるしな。

 よいしょっとスピットは立ち上がります。

spit:「アピ、そろそろ…

appi:「だから…

spit:「?

appi:「私は、これからもずっと、スピさんたちと冒険して行こうと思ってます。


 そう言ったアピに、スピットは首を傾げます。
 傾げて、口許を曲げて、「何言ってんだか」と頭の上の帽子の位置を整えようとしてそこに帽子がなくて、ひょいと肩をすくめました。
 アピが吹き出すようにして、笑いました。


spit:「明日もその冒険の旅にでるぞ。

appi:「はいっ。


 果てしないミドカルドの大地を包む空の色は、抜けるような青をしていました。*8


*1 死ぬと無条件に経験値がベース、スキル、ともに1パーセント減る。高レベルになるとこの1パーセントは非常にでかい。
*2 計測してみたところ、スピットの最強魔法、ライトニングボルトLv10は詠唱時間に約7秒かかる。
*3 イズルードダンジョンの敵はほとんどが水属性なので。
*4 見えないところで死んでます。
*5 知りたい人は嬢に直接聞け。(ぉ?
*6 知りたい人は嬢に直接…
*7 蟹漁師の力については次回。
*8 アピの台詞の真の意味は?
 そしてスピットはウィザードになれるのか!? 次回、ダンジョン3部作最終部、「攻略!フェイヨンダンジョン!!」