studio Odyssey



あぴらいと→あぴっぷり!?



「ぴんぽんぱんぽーん。

 修行中のスピットの頭の中に電波が届きました。
 歌うような楽しげなリズムで電波をとばしてきたのは、

appi:「スピさん、ごきげんようー。

 アピです。

spit:「なんだ?どーした?

 スピットはアークワンド振るう手を止めて、アピに返します。
 アピは歌うような声で、言いました。

appi:「私は今日、プリーストになります!


spit:なんですと!?

あぴらいと→あぴっぷり!?


 スピットは砂の町、モロクを目指して歩いていました。
 電波でアピの位置を聞くと、彼女はモロクにいるということだったのです。「なぜモロク?」 「ミミズ相手に、レベル上げしていたもので」

 しかしスピットは腑に落ちません。
 ミミズはなかなかの強敵モンスターです。スピットの場合は属性的な問題から、一撃で倒すことの出来ない相手なのですが、アピだって、まともに戦えばかなりのダメージを受けるはずです。そのアピが、ミミズ相手にレベルあげ?
 つい先日一緒に冒険したときは、同じレベルだったのに!?

 です。

 ちなみにスピットはあの冒険から、1レベルしか、あがってません。*1

spit:「絶対になんかずるしただろ。
appi:「してないですよー。

 そんなこんなで、スピットはモロクへとたどり着きました。
spit:「さて、アピはどこかなー?

 きょろきょろと町中を歩くスピットに、声をかける人がいました。

謎の声:「燃えるポーションはいりませんか?

spit:いりません。


過激派か全共闘か
syu-ho:「あぅぅ。

 声をかけてきたのは、以前プロンテラベンチであった、卵殻帽子にサングラスという出で立ちの商人、萩帆です。*2

spit:「過激派のお前には、プロンテラよりモロクの方が似合うな。
syu-ho:「どーゆー意味ですか?
spit:「そのままだ。
syu-ho:「はうぅ。


syu-ho:「スピットさんがモロクにくるなんて、珍しくないですか?
 萩帆が聞きます。

spit:「うむ。
 スピットは返します。

spit:「なんでも、アピがプリーストになれるレベルまでいったと言うんでな。お迎えがてらに、モロクまで来たという訳だ。
syu-ho:「おおっ、ついに癒しアコライトから、プリたんですかっ。
spit:「うむ。
syu-ho:「スピさん、アピさんのプリースト姿、楽しみですかー?
spit:「なんでだよ。

syu-ho:「スリットから覗くガーターベルトにどきどきかと。

spit:「…



spit:あり得ないな。


 いや、即答しろよ、おめえ。

 旗色の悪くなったスピット。話を変えます。

spit:「ところてで、しゅーちゃんも一緒にプロンテラにいって、祝福するか?

syu-ho:「うーん、行って祝福してあげたいところですが、今日はこれからここで取引があるので。
spit:「しろいこな?

syu-ho:「なんでですかっ!!


 萩帆との話もそこそこに、スピットはモロク西南、通称、あやしい武器屋前へと向かいます。

spit:「しかし、アピがずるなしでミミズ相手に戦って、俺より先に転職しちゃうなんてなぁ。*3

 つぶやきながら、建物の裏にある怪しい武器屋の前に顔を出した時、スピットは理解しました。


ずるの正体

spit:「お前がずるの正体かッ!?



 なんでだよ。


mayumi:「いきなりひどいあつかい。

 詳しく話を聞くと、やはりスピットの思っていた通り、アピはまゆみ嬢に盾になってもらいながらミミズと格闘し、転職できるまでにレベルをあげていたのでした。
spit:「ずるだ。
mayumi:「いや、全然ずるぢゃないし。

appi:「長く険しい道のりでした。

 アピが言います。

appi:「それはもぅ、毎日毎日格闘の日々。疲れた身体を自分で癒し、長い戦いの間には、私もやさぐれ、『なんでレベルあがらないのー!?』と、不良少女になってみたりみなかったり…

spit:「はぁ…
mayumi:「わかるよっ、アピたん!
spit:「オマエら、いつの間にか仲良くなったなぁ。

appi:「しかし、そんな修行の日々も今日で終わりですっ!

 アピの声が響きます。

大聖堂

spit:「ついにですか。

 ここはプロンテラ大聖堂。
 モロクから飛んできたスピットたち。

 プリーストへの洗礼してくれる神父の前、アピはつけていたサングラスをぴっと取りました。
 ちょっとたれ目がちのかわいい目が、きらきらと輝いているさまに、スピットは「お」と息をのみました。


アピ
appi:「アコライト、最後です。
 ゆっくりと静かに、アピが言います。

spit:「うむ。
 スピットはこくりとうなずき返します。

 アピは神父に向き直り…


台無し




spit:「感動的なシーンがーッ!!



mayumi:「ああぅ!?*4




 苦笑のアピ。
 神父も苦笑しながら、プリーストへの洗礼の言葉をゆっくりと述べていきます。

 大聖堂の高い天井に響く静かな声。
 やがて差し込む、祝福の陽光。

 スピットは目を細めました。癖で、帽子の位置を整えようとして、そこにつばがないことに気づきます。
 少し、スピットは笑いました。

 柔らかな光に包まれていたアピの姿が、プリーストの姿へと、変わっていました。

アピの後ろ姿


 アピはくるりと振り返りました。

 そしてスピットの前でポーズを決め、

プリースト

appi:「転職〜。

 うれしそうに、笑いました。


 「ぉっ」とスピットは思わず身を引きます。

 やっぱりプリーストの女の子は、アピみたいな赤い髪の子がいちばんかわいく見えるなぁなんて、思っていた訳ではありません。
 なんと声をかけたらいいか、わからなくて無言だった訳ではありません。

 まゆみ嬢が言いました。

mayumi:「あぴらいと→あぴっぷり!?

 はっとして、返します。
spit:「いや、それはどうかと。

appi:「あ、それも変えないといけないですねー。

spit:「よーし。

 にこにこ笑っているアピに向かって、スピットは言いました。

spit:「他に人もいないし、ここはいっちょー!
mayumi:「キター!

spit:「祝砲!!


要はそれがやりたかった、と

spit:「おめでとー。

mayumi:「おつかれー。

appi:「ありがとうございますー。*5


spit:「さて。

 そしてスピットは先陣を切って、歩き出しました。
 ふたりから少し離れて振り返り、聞きます。


アピ、新たな旅立ち

mayumi:「オークDでパンティラ披露?
appi:「なんでですかー。

mayumi:「スピたんもみたいでしょ?
spit:「なんでだ。


 そして三人は歩き出しました。
 向かう先は、いつものベンチ。
 まゆみ嬢が先導します。

mayumi:「オークD〜。

 ちょうど、ベンチ前にポタルを出しているアコライトの姿があります。
 早速とまゆみ嬢が交渉に出ます。

 その間、スピットは久しぶりのベンチの定位置に落ちつきました。

プロンテラベンチ
 とことこと隣にやってきたアピが、ちょこんと座って言います。


とってもうれしそうなアピ

spit:「なんとでも言えよ。

 いいながらも、スピットも笑っていました。


mayumi:「交渉成立だよー。

 まゆみ嬢が呼びます。ふたりは立ち上がります。

 ふたりに気づいたアコライトの女の子が、はっとして言いました。

知り合いポタコ
appi:「あ、おひさしぶりです。

 アピはにこにこ笑いながら言います。

appi:「おかげさまで、ついさっき、アコライトじゃなくなりました。

mayumi:「もう大人の身体。
spit:「マァテ!


 アコライトの女の子は笑っています。
「それじゃ、オークD出しますよー!*6

appi:「お願いします。
mayumi:「ぱんてぃーら!
spit:「街中でそういうこと言わない。

 立ち上る光の柱の中に、まゆみ嬢が飛び込みます。
 続いて、スピット。

 そして最後、プリーストになったばかりのアピが、飛び込みます。

「いってらっしゃいませ。

 かけられた声に、元気に答えて。

appi:「いってきまーす。


 プロンテラの空は、今日も青く広がっていました。


*1 スピットの成長速度は、なぜにこんなの遅いのでしょうか?
*2 くわしくは「ギルド、その名は…1」を参照。
*3 アピが冒険を始めたのはスピットよりだいぶあと。なぜスピットの成長はこんなの遅いのでしょうか。謎です。
*4 ハイディングで消えている。
*5 お約束ですか?そうですか。そうです。
*6 アピとまゆみ嬢のお友達のようです。
** 余談。
オークダンジョンにて
 パンティーラ。