さて、しばらく後のプロンテラベンチ。
行儀よく座っているアピに向かって、スピットは聞きます。
appi:「おかーさんなら
そこにいますよ。
spit:「どこに?
座りながら、スピットが聞いたときです。
spit:「
かくれてやがったかー!?
得意のハイディングで姿を消していたまゆみ嬢が、ぴよっとプロンテラベンチに現れて言います。
mayumi:「でも、なんで突然、スピたん、呼び出したり?
そうです。
スピット、突然、電波でみんなを呼び出したのです。
spit:「そんなの簡単だ。ひさしぶりにみんなで…
スピットは胸を張って言い…
appi:「修行に
飽きたそうです。
mayumi:「ああ、なるほど。
spit:「…む。
言い返せよ。
spit:「他のみんなは?
スピットが話題を変えようとした時です。
Abd:「ただいまー。
その頭に生えているものを目にとめたスピットが叫びます。
spit:「
変なの生えてる!?
Abd:「最近、頭装備にはまっているのです。
*2
そういいながら、アブは片目にした、片眼鏡をひょいとあげて見せます。
spit:「あ、いいなぁ、それ。
片眼鏡をみて、スピットは物欲しげです。
appi:「プロンテラの道具屋で売ってますよ。
spit:「行って来ます。
ita:「あ、今、プロンテラに移動中。
電波からのイタの声に返して。
spit:「すぐ戻ってくるよ。
と、しばらく後…
イタがたどり着いたベンチに、スピットが買い物袋を下げて戻ってきました。
さっそく、中身をごそごそ。
spit:「むぅぅ。
appi:「片眼鏡って、いくらなんですか?
spit:「似合わない。
*3
ita:「で?
片眼鏡の位置を直しているスピットに向かって、イタが聞きます。
ita:「突然みんなを集めて、何をするつもり?
spit:「おお、それだ!
思い出したように、スピット。
spit:「なんかもー、最近は戦っても戦っても、全然レベルがあがらなくてな。
mayumi:「転職前はそーゆーモンです。
spit:「だからもー、ここはひとつ、つえぇ敵と戦って、一気にレベルアップを図ろうと思ってな。
appi:「パーティで強い敵のところにいけば、確かに効率はいいですねぇ。
spit:「って訳で、久々にみんなでどっかのダンジョンにでも潜ろうかと。
Abd:「オークD?
*4
spit:「いーや、ここはひとつ、今度こそ、あのダンジョンの最深を目指すのもテかと。
ita:「あのダンジョン?
スピットはすっくと立ち上がり、拳を握りしめて言います。
spit:「フェイヨンダンジョン、俺たちは
ムナックたんにあるのかツアー!
*5
Abd:「おおっ!なつかしい!!
と言っても、ここにいる二人以外はそんな話、知りません。
mayumi:「…ムナックたんくらいは、ふつうですよぉ?
ita:「別に、ツアー組むほどでも…
spit:Abd:「黙れ、
上級職!!
appi:「フェイヨンなら、お手のものです。
むんと胸を張るアピは、アコライトなのです。
*6
ita:「っていうか…
イタはスピットに向かって言いました。
ita:「むしろ、フェイヨンダンジョンにいくなら、ムナックじゃなくて、
ソフィーにあえるのかツアーの方がいいんじゃないか?
spit:「…ソフィー?
mayumi:「ソフィーたん!ハァハァ…
Abd:「中の上のモンスターですよ。最近になって、出てくるようになった。
spit:「へぇ。
appi:「あ、そうですよ。
ぽんっと手を打って、アピが言いました。
appi:「ソフィーは、属性が
水だったと思いますよ。
spit:「いざいかん!
フェイヨンダンジョン!!
水属性モンスターは、スピットの雷魔法でなら、対属性効果で200%のダメージが与えられるのです。
そんなこんなで、スピットたちはプロンテラの街を歩きます。
フェイヨン行きのワープポタルを出している、アコライト探しです。
spit:「南の壁沿いにいないかな?
てくてくと歩きます。
プロンテラの街には、たくさんの露天を開く冒険者たちがいます。そしてその露天の位置にも、だいたいのおきまりの位置があって、商人なら噴水広場、アコライトのポタ屋なら
*7壁づたい、といった風なのです。
appi:「いた。
アピがフェイヨン行きのポタコさんを発見しました。彼女はさっそくと、交渉に入ります。
mayumi:「ハァハァ…
Abd:「嬢、危険な人ですよ。
しばらくして、アピが言いました。
appi:「おねがいします。
と、すっくとポタコさんは立ち上がり、「ワープ、ポタル!」
その声とともにスピットたちの眼前に光の柱が立ち上りました。
spit:「いざ、フェイヨン!
スピットたちは、光の中に飛び込みました。
spit:「むぅ…
スピットたちが出た先は…
直ぐ左に、
フェイヨンダンジョン。
spit:「いざ!突貫死!!
ぶんぶんっと杖をふるって、スピットは人混みをかき分けてフェイヨンダンジョンへと進みます。
フェイヨンダンジョンは、スピットたちもすでに何度か訪れています。アンデッドの多く徘徊するこのダンジョン。地下への階を進めるごとに、次々と強敵が現れてくるダンジョンです。特に1階と2階のレベルは大きく離れており、以前はその2階より先にスピットたちは進むことが出来なかったのでした。
spit:「なぁに。
スピットはふふんと笑います。
spit:「レベルもあがった今、1階や2階では、やられやしないねっ!
ぶんぶんとアークワンドを振り回し、まゆみ嬢とイタを先行させながら、アブ、アピとともに進みます。
ita:「まぁ、1階くらいじゃ、何があっても死なな…
笑いながらのイタの言葉は、最後を結ぶことはありませんでした。
その顔が、ぴきりと凍り付きました。
それはスピットもです。
聞こえてきた、天の声にです。
spit:「GM発言!?
*8
ita:「再起動!?
mayumi:「なんですと!
appi:「これからなのに。
spit:「そうと決まれば、うかうかしていられない!
スピットはぐっと拳を握りました。
spit:「いけるトコまで、特攻!!
ずんずんとスピットは進み始めました。
ita:「まてまて!
あわてて、後をイタたちが追いかけてきます。
さて、ずんずんと進むスピット。
周りでは天の声に皆、帰り支度を始めています。その中、スピットは奥を目指して、ずんずん、ずんずん。
mayumi:「あれ?アブたん、いないよ?
appi:「あれ?さっきまでいたんですけどね?
ita:「…ソルスケに絡まれてるのを、見た気がするなぁ。
spit:「問題ない。ソルスケくらい、俺でも倒せる。
appi:「アブさんの方が、今ではスピさんよりもレベルが上ですもんねー。
mayumi:「じゃあ、平気だ。
でも、アブは速攻魔法、ソウルストライクのレベルはスピットの半分ですが。
ま、まぁ、アブが結局どうなったかはご想像にお任せするとして(それで正解)、スピット一行はタマゴモンスター、エギラやら、白蓮玉やらをたたきつぶし、地下3階を目指します。
と、その時でした。
進むスピットたちと逆方向、つまり、道を戻ってくる人波の中のアコライトが、立ち止まっていいました。
「おひさ〜」
ぴくりと、スピットは立ち止まって、その声の主を見ました。
spit:「フェイヨンダンジョンに来ると、必ずいるな!オメー!!
mayumi:「誰?
ita:「おお、久しぶりだな。
appi:「誰ですか?
「これはこれは、申し遅れました。
そのアコライトは軽く笑って言いました。
arcafe:「アルクと呼んでください、お嬢さん方。
mayumi:「お嬢さん?
spit:「…お嬢さん?
ita:「前のパーティメンバーなんだ。
アルクの隣に立って、イタが言いました。
mayumi:「イタさんのパーティめんばぁ!? ハァハァ…
spit:「ハァハァしない!!
appi:「と、言うことは、スピさんのお兄さんの…
arcafe:「ま、そういう事になりますかね。
spit:「フェイヨンダンジョン以外で、お前の陰を見たことがないがな。
arcafe:「これは心外。以前、助けてあげたのを覚えてないんですか?
spit:「通りがかりに、速度増加かけただけだろうが。
arcafe:「パーティメンバーの女の子を助けてあげもしましたよ?と、そう言えば、彼女が今日はいませんが?
spit:「イブはイブで忙しいんだよ。
arcafe:「ああ、フラれたんですか。
appi:「そうなんですか?
mayumi:「そうなんだ。
ita:「だから最近、見かけないんだ。
spit:「オマエら、黙れ。
arcafe:「ところで、スピットたちは戻らないんですか?
spit:「いけるトコまで、突貫するのだ。
ぶんぶんっと、スピットはアークワンドを振るいます。
arcafe:「相変わらずですね、兄弟そろって。
アルクは苦笑いです。イタも苦笑いしています。
spit:「俺の方が頭がいい。
きっぱりと言うスピットの耳には、「そう言う問題じゃないな」とつぶやきあうイタとアルクの声は聞こえません。
spit:「で、アルク。
arcafe:「はい?
spit:「ついてくるのか、来ないのか。時間はないぞ?
言われて、アルクは一瞬目を丸くしました。でも、それも一瞬でした。
アルクは口許を曲げて、言います。
arcafe:「仕方ないですね、4階まで、お供しましょう。
アコライト、アルクを加え、スピット一行は進みます。
*9
そして4階。
屈強のモンスターたちの巣窟へと、スピットたちは飛び込んだのでした。
ita:「いくぞ!まゆみ嬢!
mayumi:「はいっ!
ita:「ツーハンドクイッケン!!
mayumi:「ソニックブロー!!
spit:「いくぞ、アピ!
appi:「はいっ!
spit:「逃げろー!!
appi:「はいぃぃー!
ita:「よし、突き進むぞ。
mayumi:「はいっ!
appi:「わたし、役に立たないですねー。
spit:「安心しろ。
spit:「俺も
たってない。
mayumi:「もしや、イタさん、5階までいけますか!?
ita:「いや、それは…
spit:「アピ〜。
appi:「はい〜?
mayumi:「今なら、5階もいけそうな予感!?
ita:「SPがもたないよ。
spit:「暇だな〜。
appi:「そうですね〜。
ita:「って。ちょっと
マテ。
spit:「あん?
ita:「ここには、オマエのレベルあげるために来たんじゃなかったのか!?
spit:「おおっ!?
mayumi:「おおっ!? ぢゃなくて。
appi:「スピさん、一回も戦ってないですねー。
ita:「いいから、オマエもなんかとやってみろよ。
mayumi:「危なくなったら、助けますよー。
appi:「サポートは万全です!
spit:「むーん…
スピットはアークワンドを抱えてうなりました。
spit:「まぁ、そうだなぁ…
フェイヨン4階は、結構レベルの高いモンスターたちが徘徊する場所です。
まだウィザードにもなれていないスピットには、ちょっとばかり、つらいはずです。
イタは言います。
ita:「ツーハンドクイッケンがかかってる間なら、スピットがやられても助けられるし。
mayumi:「ソニックブローも、まだ出せますよー。
*10
しかし、スピットは通路の向こうに見えたモンスター、ホロンに目をとめて、言いました。
spit:「まぁ…でも本気を出したら、本当はこんな奴ら、敵じゃないんだけど…
ita:「
ホゥ?
appi:「何を根拠に…
mayumi:「ないとみた!
ita:「じゃあ、いけ。そら、
いけ。
spit:「眉間のしわが怖いぞ。
mayumi:「インベナムー!
まゆみ嬢が近づいて来たホロンに毒を与えます。
mayumi:「今がチャンス!
appi:「今です!スピさん!!
spit:「仕方ないなぁ…
スピットはぶんとアークワンドを振るいます。
spit:「ならば、皆もしかと見よ!ギルド、Ragnarokのマスター、スピットの真の力を!!
スピットの口から、呪文の言葉が響きます。
狙いを定められたモンスターの足下に魔法陣が生まれ、
spit:「ソウル、ストライク!!
振るったスピットの杖の先から…
不発!?