それはスピットがいつものようにバイアラン島の海底ダンジョンから帰ってきた時でした。
「あの〜。
声に、スピットは立ち止まりました。
イズルードの道具屋の脇、ひとりのノービスがいました。
*1
「あの〜、冒険はじめたばっかりで、何をしたらいいのか、さっぱりなんですけど、誰か、教えてくださいませんかー?
どうやら、スピットに声をかけたわけじゃないようです。
スピットは、てくてくと歩き出しました。
spit:「今、レベルいくつですか?
スピットはノービスさんに話しかけました。
「今、まだ1です。
spit:「(本当に初心者さんだ…
spit:「うーん…
スピットはうなりました。
いろいろと考えてみます。
spit:「ま、いっか。
「はい?
spit:「暇だし。
「はい?
spit:「お名前は、ノービスさん?
yangu:「あ、yanguといいます。
spit:「おけ。
そしてスピットは言いました。
yangu:「なにをしてるんですか?
無言でむにむにしているスピットに向かって、yanguさんが聞きました。
spit:「電波をとばしています。
yangu:「でんぱ?
spit:「機能的には、ウィスパーとか言います。ある特定の個人に対して、チャットを開く機能です。
yangu:「φ(. . )メモメモ
spit:「発言ウィンドウの左側に名前を入れて発言するか、お友達ウィンドウで右クリックし、1:1ウィンドウを開くで、出来ます。
spit:「他にも、パーティだけで話すとか、ギルドだけで話すとかも出来ますけどね。
さて、そんなこんなでしばらくすると…
ita:「よんだか?
やって来たのは、おなじみの騎士、ita-yuです。
spit:「ぺこぺこ乗ってるし…
ita:「いいだろ。
*3
スピットはイタにyanguさんを紹介しました。
spit:「初心者で、まだLv1なんだって。
ita:「ははーん。
イタもわかったもので、こくりとうなずきました。
ita:「レベルアップを手伝ってあげよう、と。
spit:「せめて、一人で戦えるくらいまでは。
ita:「いいでしょ。
yangu:「ありがとうございます。
spit:「よーし、ならば…
スピットはぐっとこぶしを握っていいました。
spit:「早速、
実施練習!!
スピットたちはイズルードを飛び出しました。
spit:「さて、では基本的な操作方法を教えます。
yangu:「はい。
spit:「攻撃は、敵にカーソルをあわせて、クリックです。この時、コントロールキー、ctrlキーを押しっぱなしにしておくと、オートで攻撃し続けます。
ita:「剣士やシーフ、直接攻撃の職業では必須です。
spit:「マジシャンではあんまり使いません。
yangu:「φ(. . )メモメモ
spit:「あと、回復アイテムとして、とりあえず、芋をあげます。
yangu:「いも?
ita:「Ragnarokといえば、
芋です。
*4
spit:「では、基本操作指導、終わり。
はやっ!?
spit:「早速、あのぷにぶにしてるピンクの奴を殴ってみましょう。
ita:「ポリンといって、最弱のモンスターです。
yanguさんは言われたとおり、ポリンに挑みかかります。
yangu:「うりゃー。
で、しばらくして…
yangu:「はぁはぁ…
spit:「あ、終わりました?
yangu:「け、結構強いんですね?
ita:「ノービスで、Lv1ではね。
spit:「じゃ、回復しておきましょう。芋の使い方を教えます。
spit:「F12キーを押すと、画面にショートカットウィンドウが出ます。
ita:「ショートカットにアイテムやスキルをドラッグしておくと、ファンクションから呼び出せるわけです。
yangu:「φ(. . )メモメモ
spit:「体力がやばくなったら、ここから連打です。
ita:「芋連打〜。
spit:「あ、あとノービス時代の経験値を稼ぐ手段として、HPが少なくなったら、プバを探して殴るというのも、手です。
yangu:「プバ?
spit:「こいつは攻撃してこないし、経験値がたくさんなので、ねらい目。
yangu:「なるほど。
ばきっ、ばきっ、ばきっ…
spit:「体力はかなりあるので、長期戦になりますが。
yangu:「あたらないー。
ita:「でも、その間にHPが回復するから。
yangu:「ホントだ。
spit:「Ragnarokは立ち止まっていると、かってにHPとSPが回復して行きます。立ち止まっていれば、いかに攻撃中であっても、回復するんですよ。
yangu:「ほー。
spit:「あ、モンスターが落としたアイテムは拾っておいてください。
ita:「それを街で道具屋に売って、お金にするんで。
yangu:「ゼロピー。
*5
yangu:「あ、ところでみなさんみたいに座るには、どうしたらいいんですか?
spit:「座るには、ノービスの基本技能レベル、3以上が必要です。それ以上になければ、Insertキーでたったり座った出来ます。
ita:「座ると、HPとSPの回復が早くなります。
yangu:「スキルって奴ですか?
spit:「そっす。Jobと言ったりもします。
ita:「レベルがあがったら、スキルウィンドウを開いて、スキルを割り振らないと、意味がないので。
yangu:「φ(. . )メモメモ。
spit:「ちなみに、Baseレベルもあがったら自分でステータスを割り振らないと、意味ないです。
ita:「ところで、転職したら、職業は何になろうと?
yangu:「剣士です。
spit:「だったら、StrかAGI、Vitですね。
*6
yangu:「φ(. . )メモメモ。
spit:「さて、では。
スピットは帽子をひょいとかぶりなおして、言いました。
spit:「上級操作指導、終わり。
嘘をつけ!
spit:「こっから先は、がしがしとレベルをあげましょう。イタ。
ita:「おっけー。
わっしと、イタはぺこぺこの上で腕まくりです。
yangu:「どうするんですか?
spit:「簡単です。
スピットはyanguさんにずいっと近寄って言いました。
spit:「これから、イタがつよーい敵を殴ります。
yangu:「殴ると…?
ita:「殴ると、モンスターは殴った人を攻撃してきますから。
*7
yangu:「はぁ。
spit:「その隙に、背後から
ばがすっ!とやっちゃってください。
yangu:「なんか、すごい技ですね…
spit:「…横殴りと言って、基本的には、ルール違反です。
なら、教えるな。
*8
ita:「いきますよー。
yangu:「はいー。
ばき!
さて、それから数日後のことでした…
スピットはイズルードにある、剣士ギルドにいました。
spit:「ここが、剣士ギルドです。
言うスピットの視線の先には、yanguさんがいます。
*9
spit:「ノービスの基本技能レベルが9レベルになれれば、剣士に転職できます。
yangu:「はい。
yanguさんはこくりとうなずくと、剣士ギルド職員に話しかけました。
スピットはちょいと、帽子の位置を整えました。
yanguさんの頭の上にも、帽子があります。
spit:「また、帽子つくっとかなきゃな。
ぽつりとつぶやきます。
*10
そんなスピットの目の前で、yanguさんは剣士へと転職を果たしました。
yangu:「おおっ!
spit:「これでyanguさんも、いっぱしの冒険者ですねっ。
yangu:「いやぁ…
yanguさんは、ぽりぽりと帽子の上から頭をかいて、笑いました。
スピットとyanguさんは、剣士ギルドを出ました。
まぶしいばかりの陽の光に、スピットは目を細めます。
spit:「さて!
spit:「ところで剣士に転職したワケですが…
息を吸い込み、スピットはyanguさんに向き直って…
「ヤングさんですか?
不意に、yanguさんを呼ぶ声が聞こえました。
スピットは振り返ります。yanguさんも振り返ります。
目の前には、緑色の髪をしたノービスが一人、たっていました。
spit:「お知り合いですか?
スピットは耳打ちしました。
yangu:「いえ、ぜんぜん…
ヤングさんは返します。
緑色の髪のノービスさんは、こちらをじっとみて、反応を待っています。
スピットはちょいと帽子をあげて、言いました。
spit:「いいじゃないですか。
yangu:「はい?
spit:「これからは剣士として、がんばってくださいませ。
yangu:「はい。ありがとうでした。
spit:「このミドカルドで冒険をしていれば、また、あうこともあるでしょう。
緑髪のノービスさんが、てくてくとこちらに歩いてきました。
スピットは帽子に手をかけたまま、言いました。
spit:「この大地は、そういう大地です。
spit:「出会いは、どこにでも転がってますよ。
スピットは道具袋の中から蝶の羽を取り出すと、真っ青なミドカルドの空に向かって、それを放り投げました。
それからのことを、スピットは知りません。
でも、今日もスピットはいつもの帽子をかぶって、ミドカルドの大地へと、仲間たちと繰り出して行くのです。