studio Odyssey



spitとその仲間たち。5



 スピットは人待ち顔でした。

 ここはプロンテラ。そのベンチ…では、なく。

 イズルードの北東、海洋にぽつんと浮かぶ島。
 バイアラン島。

 スピットはその島のある洞窟、イズルードダンジョンの前で、人待ち顔なのでした。

spit:「ぉ。

 気づいたスピットが立ち上がります。
 向こうもスピットに気づいて、立ち止まって言いました。


アピ、登場

spit:「遅刻だ、遅刻。
appi:「船が混んでました!

 はっきりきっぱりと言うアピの言葉が真実かどうか、まぁ、スピットには確認する術がありません。

spit:「まー、いい。

 目を伏せ、スピットは偉そうに言います。

spit:「いいか、アピ。
appi:「はいっ。
spit:「今日は、アピの実力をはかるため、このダンジョンに挑む!
appi:「イズルードダンジョンは、初です!
 と、握りこぶし。
spit:「今日は、他のみんなはいない。
appi:「二人だけですか?
spit:「うむ。だから…
 スピットはこう、言おうとしてました。「だから、自分の身は、自分で護る。冒険者の、基本的な心構えだ。いいな!」

appi:「ってことは、デートですかっ!?

spit:「…チガウ。


 そして二人は、イズルードダンジョンへと挑むのでした。

spitとその仲間たち。5


 さて、イズルードダンジョン。
 水棲モンスターが多く住む、イズルードより船に乗って少しばかり行ったところにある、バイアラン島という島にあるダンジョンです。

 ご存じの方はご存じ。
 ここはスピットのホームグラウンド。
 レベルアップに、スピットがしょっちゅう来ているダンジョンなのです。

スピット、強気
spit:「アピ、どれくらいの強さなの?今。

appi:「どうなんでしょう?

appi:「カニと戦ったことはありません。
spit:「カニなんか余裕だ。


 っていうか、だからこの場所選んだんだろ。


spit:「ま、やばくなったら手助けするから、とりあえずカニとやってみ?

 スピットが言います。ちょうど、ふたりの前をカニのモンスター、バトンがてくてくと行くところです。

appi:「行きます!
 アピ、ソードメイスを振りかぶって、攻撃です。


appi:くぎばっと〜。

 なにやら効果音まで聞こえてきそうな勢いです。*1

vs カニ
 スピットの普段の魔法でなら、だいたいLv5程度の打撃でカニは倒せます。
 と、言うことは、スピットは逆算でだいたいのカニの体力がわかるのです。

spit:「1回攻撃するうちに、2回食らってるぞ…
appi:「ヒールがあるから、負けません!

spit:「SPが続く限りはな。


 一昔前のスピットを見ているようです。*2


appi:「ふー。
 程なくして、アピはカニモンスター、バトンを倒しました。

1戦闘で、体力半分以下
 効率、悪っ。


spit:「攻撃力、あんまりないの?
appi:「どっちかというと、防御タイプです。アンデッド系のモンスターになら、ダメージ受けないんですけどね。*3

spit:「…そういや、このダンジョンにもアンデッド系のモンスター、いたな。
appi:「ホントですかっ!?
spit:「地下2階にだけど。

 と、スピット。
 でも、スピットはあんまり地下2階には行きたくありません。なぜなら、地下2階にはアクティブモンスター、ポイズンスポアがいるからです。

 防御がのスピットにとっては、アクティブモンスターは…

spit:「…なに?
 アピが、目をらんらんと輝かせています。

spit:「2階、行きたいの?

appi:「(こくこく。


spit:「俺は行きたくネェ。



 でも結局、地下2階。
vs 魚ゾンビ
 魚ゾンビこと、メガロドン。

 アピはくぎばっとで、殴打です。

appi:「ふふふ、くらいませーん!

 受けるダメージは、わずかに一桁。

spit:「恐るべし、特化スキル…

 アコライトの真価を、スピットはちょっと見た気がしました。

 やすやすとメガロドンを片づけたアピ。
appi:「おおっ! ゾンビより効率いいです!

spit:「そりゃそうだろ。
 スピットは鞄の中からとりだした、魔術魔物大全を見ていました。

spit:「モンスターレベルが、7レベル違うからな。

appi:「Σ=w=) そうなんですか?


 そうなんです。*4


appi:「よーし。
spit:「なにがよし?

appi:「この調子で、がしがしいきましょう!




spit:「え? 2階で?



spit:「あ、くそっ!
戦いまくり! appi:「スピットさん、大丈夫ですか?
spit:「俺の心配する暇があったら、自分の心配しとけ。なんだ、今のダメージ!
appi:「手が滑っただけですよー。あ、紅ポットいります?
spit:「もらう!
appi:「たくさんあるから、どーぞ。
spit:「ありがたく使わせて貰う。くそ。毒スポアと連戦するなら、女剣士を助けるんじゃなかった!
appi:「…あげなきゃよかった。
spit:「返せと言われても、返さないー。
appi:「いいませんけどね…動機が不純な気がして…
spit:「困ったヒトは助けるだろ!
appi:「ヒトは、当て字でしょう?
spit:「…さぁ?
appi:「姉に言っておこうかな。
spit:「何故そこでイブの話を出す。あ、毒スポア、そっち行った!
appi:「え〜、まだメガロドンがぁ〜。
spit:「あー、もー、しょうがねぇなぁ。



 ふと、スピットが思ったことは内緒です。


spit:「(デートじゃネェ。確実に。


 次々と遅い来るモンスターをうち倒し、ふぅと一息。
 ぺたりと体力回復のために座り込んだアピが言いました。

appi:「なんか…
spit:「んー?

appi:「私ばっかり、ポイズンスポアに狙われてません?

spit:「…日頃の行いだろ。

 と、スピットが言った時です。

乱戦








spit:なんでだー!


spit:「ふーっ、ふーっ。

appi:「日頃の…

spit:言うな。


 いや、それ以外は考えられないです。


乱戦2

 もはや、何も言えません。

spit:「今日はきっと厄日だ…


「たのしそうだなー」

 と、突然かけられた声に、スピットはくるりと振り向きます。
spit:「お、イタの兄貴。
ita-yu登場
ita-yu:「デートか?


spit:「そう見えるか?
appi:「ちがいますよー。
ita-yu:「ぼろぼろだもんな。
spit:「だまれバカ。

ita-yu:「俺、下行くわ。デートの邪魔しちゃ、悪いだろ。
 ita-yuはくすくすと笑いながら言います。

appi:「デートじゃないですよ〜。
 アピも笑いながら返します。

spit:「だまれ、バカ。
 スピットだけは、むすっとして返しました。

ita-yu:「じゃ、がんばれよ。スピット。


ita-yu:いろんな意味で。


 どんな?


spit:「ちょっとマテ。

 てくてくと歩いていこうとするita-yuさんを、スピットは呼び止めました。
 呼び止めて、そして、ふんっと胸を張りつつ、

spit:「すまん。ポット切れた。芋も底をついた。
ita-yu:「はぁ?


 スピットは胸を張りつつ、

spit:「つぅワケで、後は任せた。


ぱたり

ita-yu:「まてコラ!スピット!!

appi:「すぴっとさーん!



 デート終了。


*1 ドラえOん風に。
 ちなみに「くぎばっと」とはアコライト最強の武器、ソードメイスの俗称。アコライトって、僧侶キャラのくせに、武器は撲殺武器。
 どうかと。
*2 最近スピットは強くなったので、あんまり電池切れを起こさない。むしろ、速攻魔法を連発する時くらいしか、電池、きれなくなりました。
*3 デバインプロテクションというアコライトのスキル。アンデッド系のモンスターから受けるダメージを減らすことが出来る。アピはこのスキルとヒールのスキルを基本的に上げているらしい。
*4 でも、意外に伊豆Dで修行しているアコライトはいない。