スピットは人待ち顔でした。
ここはプロンテラ。そのベンチ…では、なく。
イズルードの北東、海洋にぽつんと浮かぶ島。
バイアラン島。
スピットはその島のある洞窟、イズルードダンジョンの前で、人待ち顔なのでした。
spit:「ぉ。
気づいたスピットが立ち上がります。
向こうもスピットに気づいて、立ち止まって言いました。
spit:「遅刻だ、遅刻。
appi:「船が混んでました!
はっきりきっぱりと言うアピの言葉が真実かどうか、まぁ、スピットには確認する術がありません。
spit:「まー、いい。
目を伏せ、スピットは偉そうに言います。
spit:「いいか、アピ。
appi:「はいっ。
spit:「今日は、アピの実力をはかるため、このダンジョンに挑む!
appi:「イズルードダンジョンは、初です!
と、握りこぶし。
spit:「今日は、他のみんなはいない。
appi:「二人だけですか?
spit:「うむ。だから…
スピットはこう、言おうとしてました。「だから、自分の身は、自分で護る。冒険者の、基本的な心構えだ。いいな!」
appi:「ってことは、デートですかっ!?
spit:「…チガウ。
そして二人は、イズルードダンジョンへと挑むのでした。
さて、イズルードダンジョン。
水棲モンスターが多く住む、イズルードより船に乗って少しばかり行ったところにある、バイアラン島という島にあるダンジョンです。
ご存じの方はご存じ。
ここはスピットのホームグラウンド。
レベルアップに、スピットがしょっちゅう来ているダンジョンなのです。
spit:「アピ、どれくらいの強さなの?今。
appi:「どうなんでしょう?
appi:「カニと戦ったことはありません。
spit:「カニなんか余裕だ。
っていうか、
だからこの場所選んだんだろ。
spit:「ま、やばくなったら手助けするから、とりあえずカニとやってみ?
スピットが言います。ちょうど、ふたりの前をカニのモンスター、バトンがてくてくと行くところです。
appi:「行きます!
アピ、ソードメイスを振りかぶって、攻撃です。
appi:「
くぎばっと〜。
なにやら効果音まで聞こえてきそうな勢いです。
*1
スピットの普段の魔法でなら、だいたいLv5程度の打撃でカニは倒せます。
と、言うことは、スピットは逆算でだいたいのカニの体力がわかるのです。
spit:「1回攻撃するうちに、2回食らってるぞ…
appi:「ヒールがあるから、負けません!
spit:「SPが続く限りはな。
一昔前のスピットを見ているようです。
*2
appi:「ふー。
程なくして、アピはカニモンスター、バトンを倒しました。
効率、悪っ。
spit:「攻撃力、あんまりないの?
appi:「どっちかというと、防御タイプです。アンデッド系のモンスターになら、ダメージ受けないんですけどね。
*3
spit:「…そういや、このダンジョンにもアンデッド系のモンスター、いたな。
appi:「ホントですかっ!?
spit:「地下2階にだけど。
と、スピット。
でも、スピットはあんまり地下2階には行きたくありません。なぜなら、地下2階にはアクティブモンスター、ポイズンスポアがいるからです。
防御が
紙のスピットにとっては、アクティブモンスターは…
spit:「…なに?
アピが、目をらんらんと輝かせています。
spit:「2階、行きたいの?
appi:「(こくこく。
spit:「俺は行きたくネェ。
でも結局、
地下2階。
魚ゾンビこと、メガロドン。
アピは
くぎばっとで、殴打です。
appi:「ふふふ、くらいませーん!
受けるダメージは、わずかに一桁。
spit:「恐るべし、特化スキル…
アコライトの真価を、スピットはちょっと見た気がしました。
やすやすとメガロドンを片づけたアピ。
appi:「おおっ! ゾンビより効率いいです!
spit:「そりゃそうだろ。
スピットは鞄の中からとりだした、魔術魔物大全を見ていました。
spit:「モンスターレベルが、7レベル違うからな。
appi:「Σ=w=) そうなんですか?
そうなんです。*4
appi:「よーし。
spit:「なにがよし?
appi:「この調子で、がしがしいきましょう!
spit:「え? 2階で?
spit:「あ、くそっ!
appi:「スピットさん、大丈夫ですか?
spit:「俺の心配する暇があったら、自分の心配しとけ。なんだ、今のダメージ!
appi:「手が滑っただけですよー。あ、紅ポットいります?
spit:「もらう!
appi:「たくさんあるから、どーぞ。
spit:「ありがたく使わせて貰う。くそ。毒スポアと連戦するなら、女剣士を助けるんじゃなかった!
appi:「…あげなきゃよかった。
spit:「返せと言われても、返さないー。
appi:「いいませんけどね…動機が不純な気がして…
spit:「困ったヒトは助けるだろ!
appi:「ヒトは、当て字でしょう?
spit:「…さぁ?
appi:「姉に言っておこうかな。
spit:「何故そこでイブの話を出す。あ、毒スポア、そっち行った!
appi:「え〜、まだメガロドンがぁ〜。
spit:「あー、もー、しょうがねぇなぁ。
ふと、スピットが思ったことは内緒です。
spit:「(デートじゃネェ。
確実に。
次々と遅い来るモンスターをうち倒し、ふぅと一息。
ぺたりと体力回復のために座り込んだアピが言いました。
appi:「なんか…
spit:「んー?
appi:「私ばっかり、ポイズンスポアに狙われてません?
spit:「…日頃の行いだろ。
と、スピットが言った時です。
spit:「
なんでだー!
spit:「ふーっ、ふーっ。
appi:「日頃の…
spit:「
言うな。
いや、それ以外は
考えられないです。
もはや、
何も言えません。
spit:「今日はきっと厄日だ…
「たのしそうだなー」
と、突然かけられた声に、スピットはくるりと振り向きます。
spit:「お、イタの兄貴。
ita-yu:「デートか?
spit:「そう見えるか?
appi:「ちがいますよー。
ita-yu:「ぼろぼろだもんな。
spit:「だまれバカ。
ita-yu:「俺、下行くわ。デートの邪魔しちゃ、悪いだろ。
ita-yuはくすくすと笑いながら言います。
appi:「デートじゃないですよ〜。
アピも笑いながら返します。
spit:「だまれ、バカ。
スピットだけは、むすっとして返しました。
ita-yu:「じゃ、がんばれよ。スピット。
ita-yu:「
いろんな意味で。
どんな?
spit:「ちょっとマテ。
てくてくと歩いていこうとするita-yuさんを、スピットは呼び止めました。
呼び止めて、そして、ふんっと胸を張りつつ、
spit:「すまん。ポット切れた。芋も底をついた。
ita-yu:「はぁ?
スピットは胸を張りつつ、
spit:「つぅワケで、後は任せた。
ita-yu:「まてコラ!スピット!!
appi:「すぴっとさーん!
デート終了。