「ふむ、貴様らがラガンの末裔か……」 「え、何々!?加賀君すごーーーい!?トリック?トリック!!?あ、挨拶忘れたおはよっすーーーーーー!!!」  唐突に空から現れた幼馴染はそのオレ様的口調のまま知るはずのない内容を口にした。  オレは何年たっても空気を読むことを理解しないもう一人の幼馴染…ミコに結構な勢いでチョップを入れる。  びすぅっ!といい音がしたがそんなことは気にしない。  頭から湯気が出ている(漫画的手法)を無視してオレは幼馴染に声をかける。 「加賀……じゃないな、メガネに寄生されたか」 「ふむ、貴様にはこの美しさはわかるまい」  加賀のトレードマークとも言える眼鏡は光の当たり方によってプリズムのような光を返していた。  くいっ、指でとフレームを直すたびに目に当たる光がうざい。ってか何度も直すな馬鹿。しかも、直すたびにニヤリと笑うから不快指数はうなぎのぼりだ。 「ふっ(くいっ)、見ろ(くいっ)このメガネの(くいっ)美しさを(くいっ)」 「……」  オレらが何も言わないのをいいことに調子に乗ったように眼鏡を直す。  オレは無言で肩にしょったバッグを持ち上げた。 「んん(くいっくいっ)!?どうしたぁ(くいっ)、原始生物がぁっ(くいっくいっ)!?オレ様の(くいっ)輝きに(くいっくいっ)おそれを…」 「うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」  思いっきりぶん投げたバッグは狙いをたがわず鬱陶しい幼馴染の顔面に吸い込まれた。「あらびあっ!?」とか国名なのか叫びなのか解らない声を上げる。 「何をする、原始生物!?こ、この…野蛮人!」  喚く加賀をバックごと踏みつけながら俺は尋ねた。 「で、何の用だ?変態生物……」 「ふむ、貴様のような原始生物に話してやる謂れは、むぎゅぅぅ。……は、話させてください、お願いします」 「よし、話せ……」  少し疲れたのでバックを踏んでいる足に体重をかけただけなのだが、どうやらこの変態生物は話がわかる奴らしい。 「我らは宿主と一体になって初めて力を発揮することは知っているな?」 「……で?」 「この宿主にたっての願いがあってな、それが叶う事によって同化が完了するのだ」  仮にも敵対していながら大した力もなく俺らの前に現れたらしい。どこまで馬鹿だこいつは…。敵にわざわざ教えることではないと思うが、ここまで話したのだ。聞いても拒みはしないだろう。  例え、危険な願いであっても同化する前に排除すれば害はない。 「……言ってみろ」 「あぁ、その、なんだ……」  俺の脚とバックを避けて、加賀は正座をする。……何故に正座かはわからないが、加賀の意識の問題なんだろう。ざ・オレ様系を地で行く男がこうまでなるのはそこまで重要な願いに違いない。 「オレ…いや、僕と付き合ってください」  時が凍った。  未だにチョップでのびているミコを指差す。首をふるふると横に振る加賀。  恐ろしい速度で鼓動する心臓が100回ほどなった後、俺は震える指で自分を指差す。  ……加賀は両手の指をつき合わせて、幾分かためらった後恥ずかしそうに縦に首を振った。 「うぉらっ!!!」  首を回し蹴りで刈りとる。横倒しになる前に肝臓めがけて2発目の蹴りを見舞い、完全に意識を奪ったのを確認したところで、俺はいつの間にか垂れていた額の汗をぬぐった。 「……悪は滅びた。」