studio Odyssey


あとがき

 あーとーがーきー!!

 そんなわけで、如何でしたでしょうか。message of 512Byte.形式で作り上げたストーリー、「夏の始まりの季節」
 お楽しみいただけましたでしょうか。

 ぶっちゃけ、この作品を本当に面白がってもらうには、2004年の夏の始まりの季節と呼べるくらいの時期にやった、512の募集の頃から関わってないと、あのアドリブ感から来る楽しみは感じられないかも知れません。

 この作品は、studio Odysseyでみなさんから「夏の始まりの季節」というテーマで投稿を募り、そして作り上げられました。
 コメントでも触れていますが、512のその内容が、26編(当初は26編の予定だったのです)の何処に来るか等はまったく考えず、ただ思いついたままに512を書き、あとで繋げてストーリーにしてみようというような感じでした。
 まあ、そんなアドリブ企画だっただけあって、主人公の名前は「シュウちゃん」になるわ、親友が出てきたら「サル!」とか言うわ、別れのシーンがたくさんあったり、挙げ句の果てにはヒロインの女の子が○○になってしまうわ…(読んでいない方のために伏せ字)

 いやもう、まとめる側としては大変でした。

 「ヒロインがああなってしまったから、しゃちょはサイトから、『夏の始まり』をこっそり下げたのでは?」なんてまことしやかにささやかれていたりもしたようですが(してない?)、みなさんから投稿を募っておいて完結しないというのはいかがなものかと、一念発起。message of 512Byte.のサイトデザイン変更と同時に、このたび、完結させました。

 忘れていたわけではありません。

 あ。

 さて、そんなわけで制作苦労話やなんかをちょろちょろと。
 っていうか、苦労しかなかったですよ。

 512Byteは、当たり前ですが、512バイトしか使ってはいけないというのがルールです。そういう企画なんで、当たり前ですけど、これが案外と簡単そうに見えて、ものすごく難しい!しかも、普通に512を作るだけならまだいいのです。が、これをつなぎ合わせてストーリーにするとなると…これは下手なショートを作るよりも大変です。
 何しろ、少なすぎてはダメなのです。全26編で終わらせるというのが、512の、暗黙のセッションルールです。まぁ、実際はプロローグとエピローグを抜かないと26編にはならないのですが、それはオマケしてもらうとしても、26編で512バイト。つまり、13キロバイトでストーリーを終わらせなければいけないのです!13BKですよ!?ショート書いた方が楽だっての!!

 この中で起承転結をうまく割り当て、投稿していただいた作品を収録し、ストーリーとして完結させる…いやぁ、大変でした。一番大変だったのは、やっぱりオープニングでしたかね。どうやってはじめたものか…起にあまり割いてしまうと、投稿分が割り当てられないですし、ストーリーが成立しない。ぶっちゃけ、13KBなんて、起で全部埋まってしまいますから。
 それから、これは個人的な事ですが「夏の始まりの季節」というテーマは、簡単なショートではダメかなと思っていたところもあります。「夏の始まりの季節」という言葉から、僕はどうしても、恋の物語を連想してしまうのです。しかも、どっちかというと、ちょっとファンタジーっぽい感じの。何故かと問われても、答えはないのですが。

 結果、完成した512は、僕がこの言葉から想像していたものにとても近い、ファンタジーな恋物語が出来たと思います。大部分が僕が書いているし、引き回していたのも僕なんで、そりゃあそうだろうと言われれば、それまでですが…
 もっとも、たった13KBなので、512の間に何があったのかとか、それぞれのキャラクターの心情や動き、ドラマなんていったものは、書ききれていません。けれど、要所は押さえていると思います。十分に、ドラマとして成立していると言ってもいいんではないかと思っています。ここから物語を広げて、さらに別の事へ…なんてのも可能でしょう。まぁ、それは僕の仕事ではないですが。

 「夏の始まりの季節 512」は、結果として「夏の始まりの季節」企画の完成品として、唯一存在するものです。
 しかし、「夏の始まりの季節」という企画、それ自体は、512の企画ではありません。そもそもは、「夏の始まりの季節」は、その言葉そのものが、1つのコンテンツとして成立するはずのモノだったのです。そういう、参加型企画として検討していたのです。

 当時の企画ノートの冒頭で、僕はこのように言っています。

簡単に言えば、テーマだけが決まっていて、その中身は何もない状態から、みなさんのお力により、ひとつのコンテンツとして成功させよう、という、サイト閲覧者参加型企画です。

 つまり、512でなくとも良かったのです。
 実際、映像作品として、CMのようなものもありましたし、写真やCGの投稿もありました。この企画は、「夏の始まりの季節」という言葉から想像されるもの、それら全てを1つのコンテンツの中に埋め込み、それに触発された誰かが、「夏の始まりの季節」というテーマを変えることなく、新しく何かを作り出し…そしてどんどんと広がっていって…と考えていたのです。

 もっとも、言い出しっぺのstudio Odysseyに、それだけのパワーがありませんでした。スタッフのみんなに力を借りても、僕がイメージしていたような、「ひとつの言葉から生まれる何か」というようなものを、作り上げる事は出来なかったのです。
 なので、結局、512という、「イメージが占める割合が非常に高いもので、この言葉と世界を表現する」という場所に軟着陸を試みました。

 まぁ、結果として「夏の始まりの季節 512」は、良くできた作品になったと思います。投稿していただいたみなさんのお力と、スタッフのみんなの力によって、「夏の始まりの季節」という言葉を、うまく表現出来ました。
 ありがとうございました。

 ただ、何度も言うようですが、「夏の始まりの季節」は、512の企画ではありません。この512は、ドラマとして十分に成立しているでしょう。そして、先に言ったように、このドラマは「ここから物語を広げて、さらに別の事へ…なんてのも可能でしょう」

 そしてそれは、先にも振れたように、僕の仕事ではないですが。

 「夏の始まりの季節」という言葉は、数年前に、ふっと頭に思い浮かんだ言葉なのですが、とてもすてきな響きを持った言葉だと思います。
 そして今、季節は少しずつ、この「夏の始まりの季節」に近づいていっています。

 「夏の始まりの季節」という言葉から、みなさんは、何を思い浮かべますか?

 言葉でも、絵でも、歌でも、ストーリーでも、あなたが「夏の始まりの季節」から想像した何かであれば、それは「夏の始まりの季節」と題するにふさわしい物なのです。それはつまり、「ここから物語を広げて」と言える物なのです。いえ、元をたどれば、「夏の始まりの季節」という言葉からこの512も生まれたのものです。「ここ」が差すのは、この512ではなくともいいのです。
 そうして生まれた何かはすべて、「夏の始まりの季節」の物語なのです。

 そしてそれを受けてまた、誰かが何かを想像したときは、またそれが、「夏の始まりの季節」の物語となるのです。

 さて、「夏の始まりの季節 512」
 お楽しみいただけましたでしょうか。

 願わくば、この世界のどこかで、このmessageを受け取った誰かが、「夏の始まりの季節」というタイトルの何かを生み出してくれればと思います。
 たとえそれが創作というカテゴリーでなく、あなたの毎日のそれと同じ意味での「物語」の中ででも。

 これから来る夏の始まりの季節が、みなさんにとって、かけがえのない季節になりますように。

2005/04/24 しゃちょ@studio Odyssey