カチッ。
蓋を開ける。
ガシュ、
フリントが削れ、
芯に染み込んだオイルに着火し、
ボッ、
と火がつく。
何もせず、
カチッ、
と蓋を閉じる。
内部酸素が少なくなり、
アルコールランプのように火が消える。
"また禁煙失敗したの?"
その言葉が頭をよぎる。
別に依存してるわけじゃない。
別に口寂しいわけじゃない。
別に吸いたいわけじゃない。
ただ…
いつかからか、ずっとポケットに入っていたこいつ。
こいつの使い道がなくなるのが少し、
寂しいだけ。
- size:
- 505KB
- author:
- Kitahara Hataki