「禁煙したんだ」
そう言ったのは、つい2時間前。
煙草嫌いの彼女の為に、決心したらしい。
一緒に煙草を吸う時間が、
唯一、彼と共有できる時間だったけれど…
「一本どう?」
食後のコーヒー。
煙草を差し出す。
「だから、禁煙してるんだって」
「そっか。じゃ、失礼して」
煙草に火をつけ、一服。
『食後の一服が堪らないんだ』
彼を理解したくて、始めた煙草。
それが吸えない彼は、
私の方をジッと見ている。狙い通りに。
「一本どう?」
受け取る彼に、笑いながら火をつけた。
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- author:
- Kitahara Hataki