彼は言ったんだ。
「もう、渡す物がないんだ」
彼はとても寂しそうだけど、笑顔はたやさなかった。
「それでも、私は行かなければならない」
「なぜですか?」
彼は笑顔で答えた。
「この日は、幸せを渡さなければならないんだ」
「でも…」
「物は無い、しかし笑顔はある。笑顔は何物よりも価値がある」
「笑顔の価値?」
「そう、笑顔は人を幸せにする。皆を幸せにする。だから、私は笑顔を渡すために行くのだよ」
彼は飛びきりの笑顔で僕を見る。僕も笑顔になってしまう。赤いソリが駆け出して行く。
『Merry Christmas!』
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- A