studio Odyssey



おはなしのつくりかた

 管理人、しゃちょ流のお話の作り方講座。

ネタもと。

 「ネタって、どういうところから出てくるの?」

 と、おはなしを作っている人に聞くと、

 「ふっと」

 なんていう答えが返ってくる可能性が高い。実際、ネタなんて物は「ふっと」思いつく物なんですけど、本当にインスピレーションがわき起こってくるのには、ちょっとしたコツのような物があったりするわけで…
 今回は、そのコツについて、書いていくことにしてみましょうか。

 もちろん、主観。


ネタさがし

 ネタ探しは、毎日毎日、常にしている。

 実際、すでに最初の方の回でも触れたように、日常の中にネタになりそうな物は非常にたくさん転がっているんですね。
 ただ、そこでのネタというのは、大体が、単体では役に立たない物の場合の方が多い。それ故に、「書こうにも、ネタが見つからない」なんていう風に、感じてしまいがちなんですね。

 発明の基本は、2つの物を合わせること。
 と、これは理系人間にとっては結構当たり前の考えなんですけれど、これは、実は「おはなしづくり」にも言えることなんですね。

 2つの物をくっつける。
 こういう風に考えていくと、結構簡単にネタは見つかる物なんですよ。

ネタもと、そのいち

 初期の頃に、手帳にその時見た物を書き込んでいくと言うようなことを書きましたね。

 そんなわけで、その手帳、今見返してみるとどうでしょう?色々と書き込まれてはいませんか?ネタの元になりそうなこと。


 僕の手帳には、日記というか、その時その場で起こったことが色々と書き留められています。たとえば、この「おはなしのつくりかた」の連載が開始された直後のころに、(日付を見ると、1/18となっている) 電車を待っているホーム、そのベンチで、「今、隣の人のセーターの綿毛が飛んできて、僕のコートに付いた」と書かれています。

 これ、このままでは、ただのワンシュチュエーションでしょう。

 実際、この後特に何が起こったわけでもなく、僕は普通に電車に乗って大学まで行ったようですが、このセーターの綿毛を飛ばした子が、実は僕の知り合いだったりしたら?

シュチュエーション A

 ふわりと風に乗って飛んできた綿毛に、僕は手帳にものを書き込む手を止めて顔を上げた。真冬に綿毛?と思って、風にながれて僕の腕に落ちた綿毛に、風上に視線を走らせる。

「あ」

 僕の座るベンチの右端、そこに座っていた彼女と、僕の目があった。白いセーターを着た彼女、僕の腕に落ちた綿毛が、彼女の着るセーターのそれだとわかるのに、時間はかからなかった。

 彼女は笑いながら、僕に向かってひょいと頭を下げて見せる。

 僕は知っていた。彼女は、僕が昔バイトをしていたコンビニで、数日だけいっしょに仕事をしたことがあった子だった。
 そして、そこに彼女が座っていたことも、実を言うと僕は知っていた。だけれど、彼女は膝の上に置かれていた受験問題集をじっと見つめていて、僕は、結局、声をかけられずにいたのだった。
 僕は手帳を閉じると、ゆっくりと立ち上がった。

「やあ、ひさしぶり」
 平静を取り繕って、僕は声をかけた。
 彼女は微笑みながら、返した。
「あ、覚えてましたか?」


 これは、実際に僕の体験したシュチュエーションを2つ、繋げて書いてみました。

 これなら、十分にドラマティックな出会いになるでしょう?
 え?実際?

 実際には、んなこと、ねぇ。(笑)

ネタもと、そのに

 いろいろなところで書いていますが、僕は物書きをするとき、必ず音楽をかけて書いています。
 多いのは、やっぱりジャパニーズポップスですが、場合によっては、映画やドラマのサントラ、洋楽、ユーロビートなども、聞きます。

 音楽の与えるインスピレーションというのも、実は、ネタもとのひとつなんですよ。


 音楽を聴きながら書くというのは、人によっては不可能かも知れません。思わず聴音してしまったりするようなタイプの人だと、どうしても、それは雑音にしか聞こえなくなってしまうでしょう。

 けれど、テレビドラマや映画がそうであるように、音楽の与えるインスピレーションというのは、十分に大きな物だと思います。

 かといって、作品の終わりに「主題歌はなんとか」と書かれても、その曲知らない人はどうすんねん。と、なってしまうので、それが悪いというわけではないですが、やはりいまいちよろしくはない。
 ので、やはり音楽は、書く人自身のインスピレーションを高めるという意味で、使用したいところですね。

 そして、テーマとしている曲のタイトルが決まっていれば、自分のインスピレーションをより一層高めることができるでしょう。リズムから、それが歌物なら、その歌詞から。

 書いているときの、ノリ、という物も、聴いていた音楽から伝染することもあるかもしれません。
 ポップな曲を聴きながら書けば、文章もポップな物になるかも知れないし、ラヴソングを聴きながらラヴシーンを作れば、それはより深みを増すことになるかも知れない。

 1曲の歌から、1本のおはなしを作り出すことも可能でしょう。ネタもとと言うよりは、膨らませるために、となるかも知れませんが。

 そういえば、サントラに関しては次の『ネタもと、そのさん』で触れるような使い方もできますね。

ネタもと、そのさん

 身の回りには、「おはなし」が溢れています。

 けど、タイトルだけ知っていて、中身を知らないおはなしって、結構あるでしょう。
 電車の中吊りとかで、ちょっと目にした映画や小説のあおり文句。

 それ、実際に見てしまう前に、自分で「これはこんな話」とイメージで考えて、メモしちゃいましょう。


 メモした物と、実際の作品は、きっと違うはずです。
 じゃ、自分の書いた方は、自分で使用してしまいましょう。ええ、オリジナルですよ。それは。
 胸を張って言い切りましょう。

 あと、ゲームなんかもそうですね。

 友達の家に遊びに行って、見知らぬゲームがあったとする。「これ、どんなゲーム?」と聞くと、友達はそのゲームの内容をかいつまんで教えてくれるでしょう。

 で、
「やる?」
 と言われたら、
「ちょっとまって」
 と言って、友達から聞いた情報だけで、ゲームがどんな物かを想像してみる。

 大抵は、自分の想像した物とは、違うでしょう。
 たとえば、ファイナルファンタジー8。

 僕、全くこのゲーム知りません。僕が知っているのは、CMとデジキューブからの情報だけ。
 で、僕がFF8ってこんなゲームだろうと、想像する。

FF8・俺版

 主人公は、なんか命令に絶対服従なキャラらしい。
 最後のボスは魔女らしい。こいつが裏でなんぞ、国を操っていて、戦争を仕掛けてくるらしい。
 ヒロインはなんとかというレジスタンス勢力の偉い人らしい。
 よくわかんないけど、主人公より偉そうな人と、主人公が闘っている映像を見た。
 変な船、出てた。
 踊ってた。「おいおい、タイタニックか?」と感じた。

 これで、FF8を僕が想像すると…

 裏で魔女が操ってるって言うと、なんか、FF4を思い出すな…と、言うわけで、主人公は初めは、この魔女側と言うことになる。最終的には、反抗するのね。きっかけは、なんだろう?
 ヒロインが死んじゃうと言うのも手だが、それはちょっと狙いすぎな感があるので、それは止めよう。

 ヒロインは敵対するわけだから、主人公が命令には絶対服従と言うことで、やっぱり戦闘があるんだろうな。踊ってたのはどう解釈しよう?なんとなく「タイタニック」って感じだったので、ジャックとローズのような恋愛物を絡めよう。無論、船は沈没だ。(笑)

 沈没させるなら、そうだ。レジスタンス勢力のヒロインを殺すためと言うことにしよう。主人公がなんか自分より偉そうな人と闘っていたから、その人が沈没作戦の指揮を執ったと言うことにすれば、つじつまが合う。どうせだから、ヒロインも主人公を利用しようとしたとすれば、2重の騙し合いで、おもしろくなるかも。

 沈没の後に、主人公と偉そうな人の戦闘。で、ヒロインとの戦闘だな。
 ああっ。でも主人公が反旗を翻すきっかけがない!

 そーだ。
 主人公の所属していた部隊が全滅して、ヒロインの率いるレジスタンスも全滅となったら、どうなるかな?そうすれば、主人公が反旗を翻すことも…

 そういえば、なんかヒロインが叫んでるシーンのCMもあったな。彼女は捕まるのか。と、すると、全滅の後に、彼女は単身、魔女の暗殺に繰り出す…と。
 そして主人公は(変な)剣を手に、戦いの終わった戦場から消えていくリノアの背中を見送る…と。


 いかがな物でしょう?

 FF8をやった方なら判断可能でしょうが、これは、FF8ですか?
 それとも、僕のオリジナルですか?

 ネタ元なんて言うのは、案外と色々なところに転がっている物なんですよ。
 ただ、よく見えていないだけ。