ストーリーは箱のつながり。
ふーむ。
どっかのタイミングで、僕が書いたおはなしを元に「ここが悪い」「ここをこうしよう」みたいなことをやろうかなぁと計画中。
とは言っても、そういうデータが残っているものがどれくらいあるか…
ただ一つはっきりと言えることは、「初めは誰でもへたっちょ」だということ。
どんなプロの作家さんにも、「処女作」はあるんだということ。
書き続けていれば、絶対にうまくなるということ。
もちろん、うまくなりたいと思っていればだけれど。つーか、そんなの僕が言ってもリアリティない。
一番簡単に言えるけれど、一番難しいこと。「完成させる」ことに、ちょっとずつでも近づいて来ているかしら?
では今回はとうとうストーリーを作ろう!
1シーンを繋げていく
僕は、そういえば昔は漫画家になりたいと思っていたんでしたっけ?小学生くらいの頃は。
それがどこでどう道を踏み外したのか、今はこうして活字書きです。謎ですね。
まぁ、でも漫画の書き方も、応用すれば「おはなしのつくりかた」になるわけです。ここはひとつ、大きな視点で考えましょう。
マンガの基本は4コマと言われています。要するに、起承転結を最も端的に書き表したものって訳ですね。
この基本は、小説でも同じでしょう。
起承転結の4コママンガを繋げて、長編ストーリーマンガを作ることも出来ます。これと同じ考えで、小説だって書けちゃうはずなんですよ。
つまり、1シーンごとに起承転結を作っていって、それをあとで繋げる。
これが、ストーリーは箱のつながりと言うわけです。
分解しちゃえ。
『魍魎撲滅委員会』の中身
起:序章から、1のとこ。
I 事件発生。魍魎の登場。
II キャラクター紹介。いったん魍魎消滅。
承:2〜5のシャワーシーンが終わるまで。
I 魍魎撲滅委員会とはなにか。魍魎はどうやって退治するか。
II キャラクターを売ると共に、ストーリーの方向性の決定。魍魎、またまたいったん消滅。
III 転へのもりあげ。
転:6まで。
I 撃つ。ただ、撃つ。
結:6
I まとめ。
これから先、ストーリーを作るという話では、この『魍魎撲滅委員会』を度々例に挙げていきます。なぜかというと、これがいちばんまともな企画書が残っているもので…
ですから、読んだことがないという方は、「読み切り」の中に入っていますので、よろしかったらどうぞ。
CMはこれくらいにして、なぜ中身を分解したのかというと、ストーリーは箱のつながりという話をこれからするためなんですね。
先にも触れたように、ストーリーは小さな箱(たとえば、4コママンガ)のつながりなのです。
で、この魍魎撲滅委員会の中身ですが、これも、I、IIで表されているような、小さな箱の起承転結が繋がって出来ているのです。
で、その集まりが、起承転結で、2こ、3こ、1こ、1こ、と繋がって、1本のおはなしとして完成しているのです。
つまり、究極的にいって、この割合で箱を繋げていけば、1本完成。
ということなんですね。
箱の中身は何でしょう?
- 箱の名前。(ようするに、いつ、どこ)
- その場面での、登場人物。(だれ)
- 出来事。(なに)
これが箱の中身です。
1個ずつの箱の中に、これを詰め込んでいきます。
じゃ、詰め込むものを考えていきましょう。今回は、『魍魎撲滅委員会』を例にしているので、魍魎撲滅委員会から、主人公の「新庄 真琴」と、オペレーター「北浦 なつみ」、真琴の兄、「新庄 広樹」に登場してもらいましょう。
キャラクターを三人にしたのは、こうすると話が転がしやすいからです。特に初めて書くような場合は、3人という登場人物は非常に扱いやすいのでおすすめです。下の例を読み進めていけば、きっとわかるでしょうけれど。
で。箱の名前は「委員会室にて」。出来事は、「魍魎があらわれた!」ということにしてみましょう。
魍魎があらわれた!
午後の委員会室。うららかに差し込む陽射しの中で、真琴はぼうっと頬杖をついていた。
眼前では、なつみがモニターに向かってキーボードを叩いている。「何をしているんですか?」と聞いてはみたけれど、「いいこと」なんて、真琴は振り返りもされずに、返されてしまった。
午後の委員会室。うららかな陽射しが差し込んでいる。
真琴は「はぁ」とため息を吐き出した。
これでは事件が起こりません。だらだらとこの調子で続いていっても困ってしまいます。ドラマになりません。
では、事件を起こしてみましょう。魍魎が来た!
そのうららかな午後のひとときをうち破るように、電子音がスピーカーからけたたましく鳴り響いた。
なつみの指がキーの上を滑る。
「魍魎発見!北棟2階、職員室前!魍魎撲滅委員会、出動っ!!」
なつみはそう言って勢いよく振り向いたけれど、
「私…ですか?」
真琴は目を丸くして自分を指さすだけ。
「他に誰がいるのーっ!!」
いい感じでドラマが進んできたのに、このままではせっかくついた火が消えてしまいます。
では、展開に広がりを持たせるため、新庄(兄)登場!
「オレに任せろ!」
と、委員会室のドアをがらららっと開けて姿を現したのは新庄。
「このオレにかかれば、魍魎の一匹や二匹、いや、二、三十匹!」
なつみに向かって新庄はびっと親指を立てて見せるけれど、
「頼むよ真琴ちゃん」
「はぁ…」
「オレの話を聞けーっ!!」
「あら、新庄くん」
「あら、じゃない!」
さて、この後新庄はどういう行動をとるでしょうか…彼の性格なら…
やはり、魍魎を撃つ!
「魍魎が現れたんだろう?任せな。オレが、速やかに、封印してきてやる」
軽く口許を弛ませて言い、新庄は委員会室の壁際に立つスチール棚の中から、銃を取りだした。
「行って来るぜ」
そして、微笑みを残したままで委員会室から出ていこうとする。その新庄に向かって、なつみは弱く声をかけた。
「…新庄くん」
なつみの声に立ち止まり、新庄は肩越しに振り返ってニヒルに笑ってみせた。
「心配するな、なつみ。オレがすぐに魍魎なんか片づけてきてやるぜ」
「…行かないで」
しかし、なつみはその背中に向かって、言った。はっきりと。
「行くなら行くで、せめて封印用トラップくらいは持っていって。マシンガンだけじゃなく」
「えー…」
新庄は不満そうに眉を寄せた。
このままだと真琴のいる意味がないので、真琴も巻き込みましょう。
「よしっ。じゃ、真琴!お兄ちゃんについてこい!!トラップ持って」
「…あくまで自分じゃトラップ持たないのね。新庄くんは」
「えっ…でも、こういうのはやっぱり委員長の指示を待った方が…」
「いーんだよ!要は封印しちゃえば!どうせ最終的には封印するんだから!」
「新庄くんは封印したいんじゃなくて、銃が撃ちたいだけでしょ?」
「…我が兄ながら」
「最終的には、封印する!」
「って。それまでの過程が問題なんだって…」
「えー、先月の新庄くんの使用した弾丸数は、6524発で、そのうち、回収された弾数は──」
「無論、んなものはすべて必要経費!」
「予算てもんがあんのよ!予算てモンが!」
ここで、この箱は大体終わりにしましょう。引き際が肝心です。
で、この後に次の箱に繋げます。
次の箱はどうしましょうか。新庄と真琴を魍魎のところへ行かせますか?それとも、ここに委員長を出したりしてみますか?
次の箱に繋げるための糊代を作って、箱を繋げていきます。
「迫る、未知なる敵を過小評価してはならない!持てる限りに力を使い、敵を討つ!そのためには多少の予算オーバーも…」
「多少?6524発が多少?」
「多少」
「真琴ちゃんなんて、先月56発しか撃ってないのに」
「じゃ、差し引き0じゃん」
「そうじゃないでしょ!」
「だがなつみ!こうしている間にも魍魎は生徒達に危害を加えているのかも知れないんだ!行くぞ!真琴、トラップ持って、お兄ちゃんについてこい!」
「え…えーっ!?」
結局新庄はマシンガンM60だけを手に、委員会室のドアをがららっと開けた。真琴は目を丸くして、とりあえず椅子からお尻を浮かせる。
けれど、
「計画変更」
新庄はそう言って、委員会室の中に戻ってきた。ほっとして真琴は椅子に座り直す。夏美も軽くため息。
「計画って?」
新庄がどいた先、委員会室のドアの前には腕組みをした委員長が立っていた。
「いえ…なんでも…」
そして、物語は続いていきます。次の箱へ。
このようにして、おはなしはできあがっていくのですね。
ストーリーは箱のつながり、と言うことで、今回は終わり。
しっかし、今回は長かったなぁ。