studio Odyssey



おはなしのつくりかた

 管理人、しゃちょ流のお話の作り方講座。

よし、その日記を書き直してみよう。

 さて、日記を書いてみたら、今度はそれをまとめ直てみましょう。
 文を作る──という作業は、実は書くときよりもこの時に行われるものではないかなぁと常日頃から思っているんですよ。いや、本当に。
 実際、とりあえず書き付けてしまえと書いた文章は、あとで見てみると、自分ですら見られないんですよね。自分が見られないもの、他人に見せるわけにはいかないでしょう。なら、人様に見せても恥ずかしくないものに書き直そう。うん。
 と、そんなわけで、今回はそんな話です。


文と戦う!

 戦うんですよ。文と。

 読みやすい文と、読みにくい文てあるでしょう。ぶっちゃけて言っちゃえば、「好きな小説家と嫌いな小説家」みたいな。
 「好きな小説家」っていうのは、つまり自分によって読みやすい文体って訳なんですよね。で、逆に「嫌いな小説家」っていうのは、自分にとって読みにくい文体と言うわけです。

 「小説の表現の仕方は、テーマやキャラクターによって変えるもの」なんて、大きな事を考えるのは止めましょう。1回目でも触れたように、大きな事考えちゃうと、つぶれちゃいますので。
 まずは、自分の書きやすい文体で書くのが一番です。

 好きな小説家って誰かいますか?いや、嫌いな小説家でもいいんですけど。
 好きな小説家がいる場合、その人の文体は結構簡単に真似出来るはずですよ。普段からに読み慣れているし、好きって事は、その文体が書きやすいって事ですし。
 僕の好きな小説家は、赤川次郎ですね。
 非常にわかりやすい文体、文学的表現とかも、多くない。でも面白くない訳じゃない、十分に面白い。この感覚が好きなんですね。

 逆に、嫌いな小説家は──そんなのいえない。でも、嫌いな小説家がいる場合、その人の書く文体でどこが嫌いなのかをちゃんとわかっていれば、それはプラスになるはずです。だって、それを書かなきゃいいんだもの。ね。

 さて、好きな小説家、嫌いな小説家が頭にぽっと浮かびましたか?

 そしたらまず、自分の書いた日記を書き直す前に、その人の書いた本を一冊読んでみましょう。自分の一番好きなヤツでいいですよ。さて、読み終わったら、日記の書き直しにトライです。

 自然と、どこを直すべきか見えてくるでしょう?

 僕は赤川次郎が好きなので、文体や改行の感覚、語尾感、句読点の打ち方とか、結構影響を受けているかも知れません。
 ので、僕の文体は好きくない人は、この先の例とか、あんまり参考にならないかも知れませんね。
 逆に僕の文体が好きな人は、この先にある例なんかは、すっごくプラスになっちゃうでしょう。3回目にして、初めて技術的なことに触れるかも?

 では、たとえばの日記を例に、改行や語尾感の修正を考えてみましょう。


たとえばの日記

 講義を聴くのに飽きた僕は、机に落書きを始めた。それは最近やっているゲームのキャラクターだった。
 可愛い女の子を描くのには少し自信があった。
 できあがったら、隣で暇そうにしている友達に見せてやるつもりだった。
 けれどそれができあがる前に、僕らの机の脇に先生が立った。


 上の日記は、適当にぱーっと書いてみたものです。1回目、2回目と続いている、一連の流れとでも思ってください。

 さて、この文、何となく読みにくいですね。
 この4行は状況をしっかりと書いてはいますけれど、なんとなく読みにくくて、主人公のイメージが掴みにくい。
 問題です。では、それは何故でしょう?

 答え。理由は、実はすべての文が「〜た。」で終わっているせいなんですね。ほんの些細なことなんですけど、これだけですごく読みづらくなってる。
 じゃ、何で読みづらくなってるか。

 答え。「〜た。」って、過去形なんですよ。つまり、どれも全部過去のことってイメージがついて回って、時間軸的に主人公がどう動いているのかがイメージしづらい──というわけ。

 文字の持つ情報量は、非常に小さいです。データ的な意味でも、人間の感覚的な部分でも。それこそ、絵に比べたらその情報量は1/3とかになってしまいます。

 じゃ、それだけの少ない情報量で絵に勝つにはどうするかっていうと、あとはもう読み手に想像させるしかないんですよ。

 火と同じです。

 読み手があるひとつのイメージを持つとしますね。たとえば、「主人公」。
 で、この「主人公」という小さな火、これをどんどん大きくしていこう。じゃ、大きくするにはどうしたらいいか。
 「薪をくべる」んですよ。
 薪をくべるには、初めっからぶっとい木なんて入れちゃいけません。まず、新聞紙とかで火を大きくしていってから、小枝をいれて──しかも、火を絶やさないためにも、手を止めちゃいけない。どんどんとくべ続けていく。

 イメージって、この火と一緒のようなものなんですよね。
 初めにぽっとついたイメージの火を絶やさないように、続く文はそれに対する薪。
 だから、文は途中で止めちゃいけない。先へ、先へと続いていく文を作らなきゃいけない──というわけ。
 だから、過去形の文はあんまり使わないようにしましょう。次の文へ惹きつけるため、結末を見せないためにもです。

 ではそんなとこに注意して、さっきの文を「〜た。」が続かないようにして書いてみましょうか。


たとえばの日記2

 講義を聴くのに飽きた僕は、机に落書きをし始めた。最近ハマってるゲームのキャラクターだ。
 自慢じゃないけど、カワイイ女の子を描くのにはちょっとばかり自信がある。なにしろ、描き慣れている。
 できあがったら、隣で暇そうにしている友達をつついて見せてやろう。
 そう思っていたのだけれど──気がつくと、僕らの机のとなりに先生が立っていた。


 こうして文体を変えることによって、主人公の性格の一端までもが表現できます。このようにしてキャラクターは惹き出されていくんですね。
 どちらも、同じ4行なんですけどね。

 自分が読んでつっかえてしまうような文は、誰が読んでもつっかえてしまうでしょう。日記の書き直し、気をつけるべき事は、「せっかくついたイメージの火を消さないように」
 これです。