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光がはじけた。
そして巻き起こった強烈な風に、往人は片目を伏せた。
光に包まれた空間が、風と共に流れていく。
風。
そして光。
慣れはじめて、往人は初めて気づいた。
空。光の向こうには、青い空が広がっていた。
風を切ってゆく。
幾層もの雲を抜けていく。
どこまでも、どこまでも高みへ…
「わたしたちはずっと、旅を続けてきたの。空にいる少女を探す旅。わたしのお母さんも、お母さんのお母さんも、ずっとそうしてきた。そしてみんな、その子に出会った。とても悲しい思いをした…」
静かに聞こえた声に往人は振り向く。
抜けるような夏空の下、ふたりの少女の姿があった。どこかで見たことのあるような、誰かの面影を残した、ふたりの少女。
ひとりの少女が、小さく呟く。「だいじょうぶ」そして、かすかに笑う。
「わたしは強い子だから、ひとりでも平気」
もうひとりの少女が何かを言おうとして口を動かす。けれど、そこから言葉は漏れて来なかった。だから、言葉をつぶやいた少女は優しく微笑みながら、言った。
「わたしから離れて」
短く。
青く、どこまでも続く夏空の下。言葉を受けた少女は、ただ何も言わずに静かにうつむく。言葉を探す。探して、そして──少女は彼女から離れた。
少女の手の中には、古ぼけた人形があった。
「わたしには、救えなかった」
再び聞こえた声に往人は別の方向へと視線を走らせる。
そこには、少女と青年の姿があった。
「…夏祭り」
少女が小さく呟く。「行きたいな…」青年は返す。深い悲しみをその瞳に宿したまま、その瞳の色とは逆の言葉を。
「いけるさ。俺が、必ず連れて行ってやるから…」
風が吹き抜けていく。
往人はあたりを見回した。同じ夏空の下、いくつもの風景が流れていく。少女と少女。少女と青年。繰り返す物語の中の風景が流れていく。「夢を見るの」「悲しい夢」「わたしたちに続く、夢」「迷惑かけたくないから──」
「私から離れて」
耳に届く言葉を振り払うように、往人は風の生まれる方向をまっすぐに見た。
静かに、声が聞こえてくる。
「この人形の中にはね。叶わなかった願いが籠められてるの」
「俺は──」
「往人」
その風の向こうからの声が、往人に尋ねた。
「あなたの願いは?」
「俺の願いは──」
俺のなすべきことは──俺の願いは──
風に流れていく景色。
その瞬間に近づくにつれ、胸の鼓動が速くなっていく。
吹き抜けていく風の中に、体はもう、崩れ落ちそうで──それでも全身の力を振り絞って──往人はその場所を目指していた。
「俺の願いは──!」
夏はどこまでも続いてゆく。
青く広がる空の下で。
彼女が待つ、その大気の下で。
そこで少女は、同じ夢を見続けている。
彼女はいつもひとりきりで…
大人になれずに消えていく。
そんな悲しい夢を、何度でも繰り返す…
「観鈴っ…!」
風に向かって叫んだその声に、繋がる記憶の始まりが見えた。
その場所に、少女はいた。